破廉恥な格好をした君を見て…(アーサーの場合) ある日、アーサーはカルデア内を歩いていた時だった。
「あっ、アーサーさん!!」
「こんにちわ、マシュ。何か用かな?」
「実は…先輩からアーサーさんに伝言を預かりまして…」
「…立香から?」
偶然マシュとすれ違い、マシュから立香からの伝言を聞かされた。
「…ということです」
「分かったよ、立香の部屋に行ってみるね」
「はい、よろしくお願いします」
アーサーはマシュに軽く手を振り、そのまま立香野部屋へ向かって行った。
「…ごめんなさい、アーサーさん」
マシュがアーサーに対して謝罪の言葉を述べたことも知らずに…。
*****
(大事な話があるから部屋に来てほしい…か。いつもなら事前に話を振ってくるのに、マシュを経由してくるなんて…)
アーサーは先程のマシュとのやり取りに違和感を覚えていた。普段なら大事な話がある時は、事前に立香本人からアーサーに直接話をしてくるのだ。それをよりによってマシュを経由してきたことが、ずっと疑問に思っていたのだ。
「それは本当なのか、ブラダマンテ」
「確かにマスターの部屋にダ・ヴィンチちゃんが入って行くの見ましたし…何より騒がしかったので」
「…それが本当だと、アーサー王に知られたら大事になるぞ」
(あれは、シャルルマーニュとブラダマンテ)
その道中にシャルルマーニュとブラダマンテが何かを話していた。ダ・ヴィンチや立香のことが話に出てきたので余計に気になってしまった。
「シャルルマーニュ…」
「うげっ、アーサー王!?」
「こ、こここここんにちわ、騎士王様!!」
「いきなり声を掛けてすまない…2人がいささか気になる話をしてたから…」
「「「………」」」
シャルルははぁっとため息を付きながら「実は…」と先程まで話していたことをアーサーに話したのだ。
「…ていう訳だ。俺はその場にはいなかったんだが、ブラダマンテが慌てて俺のとこに来て…」
「その事を話していた、ということか。これなら…立香がマシュを経由して僕を呼び出す理由が説明できるな」
「ダ・ヴィンチちゃんが絡んでるんだ。まーた変なことになってるだろうな…」
「…多分」
シャルルとアーサーはげんなりとしながら頭を抱えた。大抵ダ・ヴィンチが絡むとろくな事が起きないことはアーサーが一番良くわかっているからだ。
「とりあえず、アンタはそのまま立香の元へ向かってくれ。俺とブラダマンテで管制室に行ってみる」
「ああ…」
こうしてアーサーは立香の部屋、シャルルとブラダマンテは管制室に向かって行った。
アーサーは少しソワソワとした気持ちをなんとか押し殺しながら、立香の部屋の前までやってきた。
「立香、いるかな?」
「っ、えっ…アーサー…!?」
(…なんだか、様子が変だ)
アーサーは部屋から聞こえた立香の声を聞いて、明らかに様子が変なことに気がつく。やはり、ダ・ヴィンチが良からぬことをしたのだと理解した。
「…立香、ごめんね…部屋に入るよ」
「やっ…待って!!」
アーサーは立香の言葉を無視して部屋に入った。そこで目にしたのは…
「っ!?」
「ひゃあああ!!みっ、見ないで〜!!」
髪型はいつぞやの女装で使用したウィッグ…までは良い。問題は顔から下で、カッターシャツ1枚しか着ておらず、下は…恐らく下着以外は何も着てないのだ。
立香は恥ずかしさのあまりに、下を隠しながらそのまましゃがみ込んでしまった。アーサーは足早に部屋の中に入り、誰も入って来れぬよう鍵をかけた。こんな破廉恥な姿を誰にも見せたくないからだ。
「っ…りっ、立香…なんで、そんなっ…っ…破廉恥な格好を…?」
アーサーは顔を赤くし、目のやり場に困りながら立香に聞いてみた。立香は目に涙を浮かべながら、上目遣いでアーサーを見た。
「っ…ダ・ヴィンチちゃんだよぉ…マンネリ化防止にっ、ちょっとした刺激がないとって…」
(やはり絡んでたか…)
「っ…着替えたくてもっ…着替えっ…全部、持っていかれて…」
「〜〜〜〜〜〜〜っ」
アーサーはダ・ヴィンチの策略に頭が痛くなった。彼女は何かとこの2人に余計な茶々を入れてくる。それはアーサーの悩みの種となっていた。
「…まったく、彼女には黙って見守るということができないのかな?ここまでくると…マーリン並みのたちの悪さだ」
「…穴があるなら、入りたい」
アーサーは落ち込む立香を見る、顔を隠すために体操座りに体勢を変えていたようだ。そして…明らかに男性物ではない下着がチラッと見えてしまったためアーサーは更に顔が赤くなった。
「あのっ…立香…」
「なにぃ…?」
「大変…言いにくいんだが…その…見えてるよ、下着」
「えっ…っ、エッチ!!」
「破廉恥な格好している君に言われたくない!!」
下を履いていないのだから、見えても仕方ない話だ。アーサーは外套を取り、立香の下半身を隠すように掛けた。
「まったく…“レディ”がそのような格好してはいけないよ?」
「うっ…俺はっ…男、だし…」
「本当なら今すぐにちょっとお仕置きしてやりたいところだけど…」
「うわっ!?」
アーサーは立香をひょいっと抱きかかえ、そのままベッド向かい立香をベッドに下ろす。そして、誰にも見られないようにシーツを掛けた。
「ちょっとやるべきことがあるから…僕が戻るまで大人しく待ってるんだよ?」
「アーサー…?」
「…夜、覚悟してね?」
「んむっ!」
アーサーは立香に意味深な発言をし、そのまま口づけをする。突然のキスに顔を真っ赤にした立香を部屋に残し、部屋を後にした。
(覚悟してって…何、する気なんだよ…)
◇
所変わって、管制室では…
「な〜んで、アンタらはいっつも余計なことをするのかなぁ〜?」
「いやぁ~、アーサー王と藤丸くんはラブラブなのは知ってるよ?けどマンネリ化なんてしたら…後々面倒だろ〜」
「そっ、そうですよ、そうなればカルデアを巻き込む大騒動に…」
「立香のそんな破廉恥な写真に釣られて策略に乗ったなんて知ったらそれこそ面倒事になるだろうが!!」
「…騎士王様の黒い笑顔が…脳裏に…」
当事者であるダ・ヴィンチと、立香のあの格好した画像が欲しくて釣られてしまった哀れな後輩をシャルルがガチ説教していた。ブラダマンテは、アーサーの黒い笑みが思い浮かびガタガタと震えていた。
「…余計なことをしないでもらいたいな」
「「あっ…」」
「…俺は知らんぞ、地雷踏んだアンタらが悪い!!」
「へっ…陛下ぁ」
「とりあえず…立香の着替え、返してくれないかな?」
「…そこまで、やってたのかー!!」
その後、夜まで管制室には王様2人による地獄の大説教会が続いたのでした。