we used to be 6「その部屋」
別に、どうしても出かけたかったわけじゃない。
ただ、この家に来てからというもの、ほとんど家の外に出ていないから、少しばかりの窮屈さを感じてしまっただけだ。
運動がしたければ庭に出ればいいし、本が読みたければいくらでもある。
でも今日はそのどっちの気分でもなかった。
メイドも庭師もおじさんも、誰もいない家の中をあてもなく歩き回る。
さて、何をしようか。
いくらこの屋敷が広いと言っても、部屋の数は無限ではない。
すべての部屋は探検済みだ。
(…いや)
一部屋だけ、入ったことのない部屋があった。
おじさんは物置だというあの部屋。
入ろうとしたところで、いつも鍵がかかっていて入ることはできない、あの部屋。
この間、誰かの姿が見えた気がした、あの部屋。
1807