最高火力のアイコトバ夜のエルティア海は漆黒の闇に包まれ、右も左も真っ黒に塗り潰された世界だった。
海上でエンジントラブルを起こした船は、最寄りの島に停泊する前に動力がストップしてしまった。
リクが機械室に籠ってエンジンの調子を見始めてから既に2時間ほどが経過している。
どうやら今夜はこの海上で一夜を過ごすことになるかもしれない。
狭い船内でずっと席に座っていることにいい加減飽きてきた僕は、気分転換のために甲板へ出ることにした。
室内から外に出ると、遮るものが何もないせいか風が強く吹いている。
扉を開けた瞬間突風が襲い掛かり、思わず顔を逸らす。
乱れた髪を整えながら眼鏡を押し上げると、甲板の端に先客の姿が見えた。
ユーニである。
真っ黒な夜の世界に真っ白な羽根は良く映える。
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