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    せしる

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    せしる

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    祝・邂逅記念日!そしてギブトリ2の開催っ!!
    このめでたき日にUPしようと目論んでおりました(*^^*)

    日付が4月1日に変わって30分ほど。
    快斗は杯戸シティホテルの屋上でもう何年も想い続けている人を待っている。
    昨年やっと自分の戦いにピリオドを打ち、ずっと心に住んでいる違う戦いに立ち向かっていた彼も
    その戦いに終止符を打ち自身の姿を取り戻したところまでは調べ上げた。
    けれど……宝石も霞むほどの綺麗な瞳を持った彼の足取りはその後まったくつかめなくなった。
    怪盗キッドとして警察を翻弄するほどのIQを持った黒羽快斗でさえも。
    意図的にその存在を隠そうとしているとしか思えない、日本警察の救世主とまで言われた工藤新一を
    まだ白い衣装を着ていた時から4月1日にココでなら逢えるのではないか?と快斗は待っているのだ。

    「ったく……いい加減こんなことやめなきゃな」
    キッドとコナンとして出逢ったこの時、この場所でぽつりとつぶやいた快斗の声は強い風にあおられ闇に溶けていく。
    もちろん約束があるわけではない。きっと自分だけがこの日を『特別』だと感じているのだということもわかっているのだが
    もしかしたらあの名探偵も心のどこかではきっと……などと考えてしまっている。
    でも毎年『今年こそ』とココに立ち続けて何年が過ぎただろう。でもその淡い希望は毎年叶うことがない。
    「もう、吹っ切らなきゃいけないか……」
    口ではそう言いながらも決して吹っ切れないであろうことはわかっている。
    けれどどこかで踏ん切りを付けなくてはいけない時が来る。
    その時を想像してため息を落としたその瞬間、背中で屋上に続くドアが開く音がして……
    「よぅ、久しぶりだな。コソ泥」
    耳が愛しく懐かしいその声を拾う。
    「コソ泥、じゃなくて怪盗だって何回言ったらわかるの?」
    そう言って振り向いた快斗の瞳には逢いたくてたまらなかった工藤新一の姿が映った。けれど……
    「おまえ……」
    その姿に次の言葉が繋げなくなる。
    「オメーとやり合うにはちょっとハンデが大きくなっちまった」
    肩を竦めてそんな風に言う新一に快斗は詰め寄る。
    「……どうしたんだよ、ソレ」
    「ちょっとばかりヘマして、な」
    「何でそんなもんに頼って立ってんだよ」
    「命があっただけでもマシだったんだ」
    「一体なんなんだよっ!」
    快斗の瞳に映った新一は自立できないのかドアに手をかけさらには杖をつきその場に立っていたのだ。
    「なんなんだ、って言われてもこれが現実だからな。ただ、もうオメーを追う必要はなくなった。
    だからもしかしたら今夜ココでなら逢えるかと思ってきてみたら……ビンゴ、だったな」
    緩く微笑みながらそう言う新一との距離をあっという間に詰めて快斗は真正面から新一を見つめる。
    「なんだよ」
    じっと見つめられるその視線に居心地の悪さを感じているらしい新一が視線を逸らそうとしていたけれど快斗はそれを許さない。
    「はじめまして、だぜ」
    そう言って口角をあげニヤリと微笑んだ快斗。
    確かに『黒羽快斗』と『工藤新一』として出逢うのは初めてだ。
    「気障ったらしいコソ泥だろうが世界に出て行こうとしているマジシャンだろうがオメーはオメーだろうよ、黒羽快斗」
    「おっ!さすが名探偵!俺のことちゃっかり調べ上げてんのな」
    「お?ケンカ売ってんのか?」
    「まさか!やっと出逢えた運命の人にケンカを売るなんて滅相もない」
    「オメーにとって俺は運命の人なのか?もっとも出会いたくない恋人なのかと思ってたぜ」
    「懐かしいな。そんなこと言った過去もあったっけ」
    「ったく、ホントにオメーとはそんなんばっかりだ」
    ふいっと顔を背けた新一だったけれどそれは拗ねているようなそれに見える。そんな新一に
    「ね。ここは寒くて足にもよくないと思うから……場所、変えない?」
    快斗はそんな提案をする。この時期この時間はまだ冷える。杖まで使って立っている新一の足にこの寒さが響かないわけはないから。
    「変わらずハートフルだな。だったらココの部屋取ってあるけど、どうだ?」
    新一はポケットの中から取り出したキーを手に快斗に微笑む。
    「え?」
    「積もる話もあるだろ?」
    「工藤……」
    新一からの突然の申し出に快斗は目を丸くしてから破顔し、新一からキーを奪い取ると身体を横抱きに抱き上げる。
    「うわっ!お、降ろしやがれっ!」
    腕の中でジタバタと動く新一の抵抗を
    「こっちの方が早く移動できるだろ?大人しく運ばれとけって」
    と抑え込みあっという間に屋上から離れるべく歩き出し、
    新一が取っていた部屋へとその身を滑り込ませると新一の身体をベッドの上にそっとおろして押し倒した。

    「……オイ。何するつもりだ」
    「何って……言わなくてもわかるデショ?」
    そう言った快斗の身体を腕で突っ張って距離を取る新一。
    「オメー、このままオメーがしようとしているナニをしたら……強姦罪で訴えてやるからな」
    鋭い視線を向けられた快斗はきょとんとした表情で新一をただただ見つめる。
    確かに積もる話があるのは本当だろう、けれど部屋を取っていてくれたということは新一自身も同じ気持ちなんじゃないのだろうか?
    と考えていた快斗の思考が読めたのか
    「考えてることはわからなくもねぇ。だけどオメーはまだ『はじめまして』しか俺に伝えてねぇだろ。
    そーいうことしたいならまずはじめに伝えるべき言葉があるんじゃねぇのか?」
    まっすぐに自分を見つめ返しそう言ってきた新一に快斗は顔をボッと紅くした。
    「わっ、悪いっ!俺っ!!いや、ホント……バカだよね。気持ちだけ先走って突っ走っちゃって……」
    急にワタワタと弁解を始めた快斗の胸ぐらをつかみグイッと自分の方に引き寄せた新一は
    「それに俺の気持ちまでオメーと一緒みたいなカオしてんじゃねぇよ」
    挑発するようにそう言葉を投げつけた。
    「え……?」
    不安げに瞳を揺らしながら快斗は新一を見つめる。
    「あのなぁ、だいたい押し倒すんなら女だろうが。なんで俺のこと押し倒してんだよ」
    「だって俺……」
    「だからオメーのその気持ちをちゃんと伝えろって言ってんだ」
    胸ぐらをつかんでいた手を離しそのまま快斗の胸を押し返して自分の上体を起こした新一は快斗から視線を外すことはない。
    そんな新一の視線に縫い止められたままの快斗も視線を逸らせずにいたわけだけれど
    一度だけぎゅっと瞳を閉じてから再度新一と視線を合わせる。
    その瞳にはすでに不安や迷いの色は見えずその力強さが新一を射抜く。そして
    「おまえのことが好きだ。俺はもう何年も工藤新一をずっとずっと想い続けてる」
    簡潔に、でも想いはこれ以上ないほどに詰め込んで言葉にして新一へと届けた。
    黒羽快斗の本音を至近距離から身体全体で受け止めた新一はそれが自分の心に身体にじわじわと広がり沁み渡っていくのを感じて
    自然と笑みが浮かびそのままパタリとベッドに倒れ込んだ。
    「く、工藤っ!?」
    慌てた様子の快斗ににっこりと微笑みかけた新一は
    「俺もだ、黒羽。ずっとオメーのことが忘れられなかった。逢いたいと思ってたけど足こんなになっちまったしオメーを追いかけられない俺じゃ
    オメーの前に姿を現しちゃいけない気がしてた。だから今日は賭けだったんだ。オメーがいなかったらきっぱり諦めようって思ってたんだ」
    と、自身もまた本音をぶつけた。するとすぐそばにいた快斗が纏う温度がすっと下がったのを感じた。
    「……ふざけたこと言ってんじゃねぇよ」
    「黒羽?」
    「いったい何年待ったと思ってんだ。勝手に諦められたら困るんだよ」
    射抜くように見つめられた新一はそれを受け止めふわりと微笑み視線を包み込んでから
    「おまえのこと、ずっとずっと気になってた。でもそれが恋愛感情かまでは確信が持てなかった。
    だけどさっき押し倒されても嫌悪感がなかったどころか嬉しくてにやけそうだったくらいだからおまえと同じ感覚だって確信できた。
    黒羽、オメーが欲しいって言うなら全部くれてやる。ただし受け取ったら返品はぜってー認めねぇからその覚悟で盗んでいけ」
    思いの丈を言葉にして包み隠さずすべて快斗にぶつけベッドに倒れ込み両手を広げて快斗を待った。すると
    「元怪盗相手に『盗め』って何言っちゃってんの?それに返品なんて絶対するかよ。
    言っとくけど俺の愛は重いぜ?耐えられるかな?名探偵に」
    快斗はそう言って新一の身体をぎゅっと抱きしめた。
    「そんなの覚悟の上だっつーの」
    快斗の身体をしっかりと抱きしめ返しながら微笑む新一。
    息がかかるくらいの距離で見つめ合った2人の視線が柔らかく絡み合いどちらからともなく瞳を閉じて唇に想いを届け合う。そして
    「もう止められないからね」
    「オメーの方こそ萎えてやめんなよ?」
    そんな軽口を叩きあいながら離れていた時を埋めるかのように身体を繋げ深く互いに入りこみ隙間を埋めるかの如く時を重ねていった。
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