尻ポケットの中で端末が震えた。
画面を見ずとも通知の内容に想像がつき、重いため息を吐く。
街灯の下で立ち止まり、ポケットからスマホを取り出し画面をつける。薄い板を取り出す腕の動きさえ億劫で、肩の角度をやや後ろに曲げたことで、皮膚の下から凝り固まった音が聞こえた。
表示に出てきたポップアップはやはり上司からのもので、明日朝イチの会議で使うデータはどこにあるのかという内容だった。
これ以上ため息を吐くまいと下唇を内側に丸め、そう言うと思ったのであなたのデスクトップにわざわざ・分かりやすいように・見つけやすいように保存させていただきましたと丁重に伝える。
元々この上司の案件だったはずだ。だというのに、いつの間にやらホルスが資料もなにもかもを作成している。こんなことは今に始まったことではないが、この仕事状況にはいい加減見切りをつけたい気持ちになっていた。
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