愛の証明「もう許したってや。俺はお前の隣に並ぶだけの価値はないし、俺は……お前に愛されるほどの男でもない。お前が俺に何を見出してくれたんかそれは最後までよう分からんかったけど、まぁ、でも……うん、楽しかったなぁお前とおった六年間。……ええ思い出になった」
怒りで我を忘れそうになったのは、後にも先にもこの時だけだろう。飄々と別れを告げる最愛の頬を打てば、手のひらがじんと痺れて次第に熱を孕む。何も俺は手放しちゃいないのに、被害者のように振る舞うこいつがどうにも許せなかった。
綺麗なばかりのガラス玉を優しく愛でたい訳じゃねぇ。
整えられたものだけを囲いたい訳じゃねぇ。
泥臭く汗を交えぶつかり合い、メラメラと命を燃やし、互いを心に刻むことを愛と呼んできたはずだ、俺たちは。
彼の胸ぐらを掴み噛み付くようなキスをすれば鉄の味が口内を侵す。ダサい眼鏡の奥底で、忍足の瞳が驚きに見開かれた。
「……テメェはいちいち面倒くせぇんだよ」
赤く赤く煮えた瞳が徐々に青みを取り戻し、間抜けなあいつの表情がクリアに写る。
うるさい唇も、無駄な思考も、俺が根こそぎ奪ってやろう。怯えた瞳が潤むぐらいに、この愛で満たしてやろう。もう何も恐ろしくないと、この腕で抱いてやろう。