顔その顔を見るのが、怖かった。
言葉を交わすのが怖かった、自分の本心を晒すのが怖かった。あんなに無邪気に笑い合っていた頃を恋しく思うのが怖かった、ささくれだった日々と比べるのが怖かった。出会わなければよかったと考える日が来るのが怖かった。彼の心が遠のいていくのが怖かった。
「俺とおらん方が幸せやったんちゃうか?いや、絶対そうやんなぁ。お前と俺じゃ釣り合わへんし…時間、もったいなかったやろ。大事な大事な数年間をお前から奪ってもうて堪忍なぁ…せやけどもう少しで終わりやから、まぁ、許したって。お前は俺がいなくても幸せになれるやろ」
丁寧に傷をつける。お前がお前の意思で俺から離れる前に理由を作る。目の前に腰を降ろす最愛へ最悪の言葉を投げつける俺は、一体どんな顔をしているのだろう。
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