Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    はるしか

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 56

    はるしか

    ☆quiet follow

    ウツロマユパロディ、逃避行での中の手記。

    中禅寺秋彦の手記(二)学舎を離れてから、
    関口の変容が早まった。

    まず背が異様に伸びた。
    いや、四肢が伸びているのだ。
    胴に比べて手足が長くなっている。
    指などは顕著で、短く丸っこかった
    彼の指は私の倍近くの長さになった。

    左目の様子もおかしい。
    まるで見えていないことに気づいてから
    数日で、目の周りの肉が膨れ始めた。
    膿でも溜まっているのだろうか。

    声をかけても反応がすこぶる悪い。
    虫がうるさいとよく書き記している。
    学舎にいた頃は、筆談のやりとりが
    それなりにできていたのに、
    今はすぐにペンを置いてしまう。

    おそらく、文字を思い出すのも
    難しくなっているのだろう。
    学舎を出てからひと月も経っていないのに。


    本当は、理解っている。

    学舎を離れたからではなく
    榎木津と離れたからだ。

    以前、関口は榎木津と一緒のときは
    虫が静かだと、筆談の中で語っていた。

    関口は、榎木津の希求に
    無意識に応えていたのだ。
    人であり続けて欲しいという、願いに。

    榎木津は、関口の人としての脆さも
    愚かさも、優しさも、純粋に愛していた。
    だからこそ恐れていたのだ。

    私はそれを態と関口の前で暴き、
    追えぬ榎木津を此岸に置き去りにした。


    あの男は強い男だ。
    たとえ恐れで惑ったとしても
    それに己で気づき、己で答えを出し
    立ち上がり、進むことができる男だ。

    関口を「戻す」ことを成し得る人間は
    屹度、彼奴だけだろう。
    私では、無い。

    人に戻る、僅かな希望を
    私は関口から奪い去ったのだ。


    だとしても、

    選んだ道は引き返せない。
    打ち捨ててきたものは、戻ってこない。

    戻すことは叶わなくとも、
    一緒に何処まででも堕ちていける。

    どんな姿になったとしても、
    僕の記憶すら掻き消えたとしても、
    君に喰われ、君の血肉となるその日まで


    ずっと、一緒だよ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭😭😭😭😭🙏🙏🙏🙏🙏🙏🙏🙏🙏🙏🙏😭
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works