貴方好みの紫煙　珍しくjackだけが家にいる時だけ、バチキンがやって来る。時計を見てそろそろだろうと立ち上がったjackはとあるセットを用意し、テーブルへ並べた。丁度チャイムが鳴り、ドアを開ければ嬉しそうなバチキンが居た。

「来たバチよ！！」

「おー、上がってけ〜。」

お邪魔するバチー！！と元気よく中へ入る。目当ての物がテーブルに置いてあるのを見るや否や、持っていた袋を放り投げてはしゃぎ出す。慌ててjackが袋をキャッチし、事なきを得る。

「わー！！早くやりたいバチね！！」

「分かったから落ち着くんだじぇー。これの中身、持ってきたんか？」

「もっちろん！私だって出来ないわけじゃないバチよ？」

「まぁ、そうね。早速作るかー。」

　頭に手を組んでどかりと長ソファーに座る。対面に座ったバチキンは袋から棒状のものや巻紙を取り出した。それから、細かく分けられた包みを数個。jackは小さく頷くと用意していたセットをテーブルに拡げた。

「おー、また増えたバチ？」

「まぁな。バチキンも増やした？」

「私はこだわりあんまりないから増えないバチねぇ。」

「試しに上げるけど。いる？」

「え、くれるの！？太っ腹〜！！バチ！！」

新作のアロマを数本渡して2沼は作業に入った。拡げられた棒や巻紙は葉巻を作るための材料だ。まず、葉巻には中心となるフィラー、フィラーを束ね整えるバインダー、外側に使用して見た目を美しくするラッパーの3層構造になっている。フィラーは主に葉巻に味わいとアロマを持たせる核となる役割だ。これにも大きく3種類に分かれる。

　フィラーは3種類のタバコ葉をブレンドし、味わいやアロマを調節する。その際に基本となる調節の仕方は葉肉に厚みがあり、強い味わいを持つリヘロ、中間的な味わいのセコ、燃焼を促進するライトな味わいを持つボラードがある。

バチキンは銃火器を扱うからか燃焼を促進させるボラードが主だ。対してjackは厚みがある方が吸っている感じがあるしパンチが効く味を好むため、リヘロが主となる。今日は新作も兼ねて作るので多めに葉巻が出来上がっていく。

さて、味やアロマを決めたなら次はバインダーだ。バインダーには燃焼速度を調節し、フィラーの形を整える役割がある。バチキンは火を使う事が主なため、なるべく早く燃え尽きるよう調節している。jackは歯応えを感じたい為に長く燃えるよう調節を施していた。

最後にラッパーだが、綺麗に巻くと言うのは難しい。何度も破ったり切れたりとして漸く巻くコツを掴めてきたところだ。バチキンは眉を寄せて慎重に巻いている。jackは余裕ありげに羊皮紙を巻くようにスムーズに仕上げていった。斜め巻きにされたラッパーの出来を見て一本咥えて見る。口の形にフィットする手製の葉巻の出来栄えに満足気に目を細めた。バチキンは漸く巻き上げた葉巻を咥えて中身が出ないか感触を確かめている。丈夫に出来たと確信したバチキンもまた、満足感たっぷりに笑った。

　さぁそろそろ帰って来る頃だろう。テーブルに拡げた葉巻の材料を片付けて葉巻を咥える。互いにライターを出して点け合えば一つ吸って鼻から出していく。ガチャリとドアが開く音がした。2沼は立ち上がり出迎える。そして葉巻を吸った煙を吹きかけてこう言うのだ。

「「お前好みになっただろ/バチ？」」