セラフィタとクッキーの話 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
セラフィタはカフェや酒場が好きだった。
旅先の郷土料理を楽しみ、甘いデザートを頬張って、手帳にレシピを記している。
料理そのものに興味があるというよりは、人が集まる空間の雰囲気に興味があるようだった。
ふさふさの長い兎耳で文字通り『聞き耳』を立て、カフェで色とりどりのスイーツを囲んで笑い合う少女たちの会話や、冒険者が集う酒場でジョッキを片手に語る酔いどれたちの自慢話を、飽くことなく聞いていた。
そんな彼が土地と家を購入して、せっせと家具を集め、なにやら店のような内装を作っている。
カウンターを置き、椅子を並べ、観葉植物や花で飾っていた。
試行錯誤しながら何度も失敗を繰り返し、クッキーを焼いている。
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