だから、敵わない暖色のライトが照らす脱衣所兼洗濯室は、二坪はゆうにある広々とした造りだ。
縦型の洗濯機と、その上にはガスの乾燥機。
鳴海がこのマンションを買い、家電を一式揃えようとした際、買おうと思ったのはドラム式洗濯機だったが、同棲相手に即答で却下され、今に至る。
鳴海は、ドラム式洗濯機に幸せの象徴を見ていた。
故に、最初は猛反発した。
けれど、こんな些細な事で喧嘩がしたいわけではなく、仕方なく、最新鋭で洗濯メニューがいくつもある縦型洗濯機を買うことで鳴海が折れたのであった。
縦型の洗濯機は、昔いた施設の洗濯室を思い起こさせる。真っ白で、飾り気もハイテクさも感じないそれ。端の方は塗装が剥がれ、オレンジ色の錆が古臭さと共に金の無さを幼い鳴海に突きつけてくる。その惨めさは、言いようのない蔦で鳴海を絡めとるのが得意だった。
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