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    あびじごく

    献上品と下書き用

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    あびじごく

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    第6回#勝手に鳴保ワンドロワンライより、【洗濯】をお借りしました。
    トータル50分くらいかと。

    だから、敵わない暖色のライトが照らす脱衣所兼洗濯室は、二坪はゆうにある広々とした造りだ。
    縦型の洗濯機と、その上にはガスの乾燥機。
    鳴海がこのマンションを買い、家電を一式揃えようとした際、買おうと思ったのはドラム式洗濯機だったが、同棲相手に即答で却下され、今に至る。
    鳴海は、ドラム式洗濯機に幸せの象徴を見ていた。
    故に、最初は猛反発した。
    けれど、こんな些細な事で喧嘩がしたいわけではなく、仕方なく、最新鋭で洗濯メニューがいくつもある縦型洗濯機を買うことで鳴海が折れたのであった。
    縦型の洗濯機は、昔いた施設の洗濯室を思い起こさせる。真っ白で、飾り気もハイテクさも感じないそれ。端の方は塗装が剥がれ、オレンジ色の錆が古臭さと共に金の無さを幼い鳴海に突きつけてくる。その惨めさは、言いようのない蔦で鳴海を絡めとるのが得意だった。
    深い洗濯槽に、今しがた出た洗濯物を入れる。電源を入れて通常洗濯のメニューを押せば必要な水量が点滅して、それに見合った分の洗剤と柔軟剤を投入する。蓋を閉めれば、あとはもう洗い終わりを待つのみだった。

    寝室に戻れば、家事に勤しむ鳴海を待つこともせずゴロリと横たわる同棲相手。文句の一つも出そうになるが、その明け透けな肢体が美しくて、鳴海は怒ることすら忘れてベッド下の引き出しに手をかけた。
    「ほら、シーツ敷き直すからどけろ」
    「鳴海さんて、そういうとこマメですよね」
    「ボクはいつでもマメですがァ? お前が頓着なさすぎなんだろうが」
    「ちゃいますよ」
    彼は、自由自在の眉で鳴海を笑った。手には部隊からの貸与端末。仕事の虫の鑑だった。
    「僕ねぇ、鳴海さんが汚れたシーツ片手にまとめて、この部屋出てく背中見るん、好きなんですよ」
    クフフ、と笑うその口の中。砂糖菓子とか、クッキーとか生クリームとか。そういう愛情が詰め込まれているような錯覚を鳴海は覚えた。子供の時分、いくらせがんだとて余程特別な日でないと出ては来なかった類のものだ。
    この口を割れば、欲しいものが、出てくる。幼い鳴海までもいとも簡単に癒していく彼は、ごろごろ転がりベッドの端に寄った。空いた片側に清潔なシーツを広げると、今度はこちらへごろごろ転がってくる。そうして逆側もシーツを被せて、一応寝る状態は確保できた。
    横に寝そべるも、しっかりとマットの下に挟み込んでいないシーツは、いとも容易く波を立たせる。
    仕事以外は本当にズボラな彼の世話を自分がしていると知ったら周りはなんと言うのだろうか。公にするような立場ではないので想像するだけ無駄なのだが、誰か一人にくらいは聞いてみたいものだ。
    そんな鳴海の心の裡を知ってか知らずか、彼は端末をヘッドレストの溝に立て掛けて距離を詰めてくる。
    「縦型の方が、なんや、汚れ落とす力強いらしいですよ」
    「へぇ」
    「あの洗濯機で正解やろ?」
    「うーん……乾燥機に移すのめんどいが? 結局洗濯機回して一時間くらいは待たないといけないしなあ」
    「そしたら……洗濯待ちの間に、ナニかしたらええんちゃいます?」
    ──ナニか。
    彼はそう口を割って、鳴海の後毛を人差し指の背で優しく撫でてはにっこりと笑った。だから敵わない。鳴海が折れるのは、予定調和の未来だった。
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    あびじごく

    DONEなつさんへ献上品。なつさんの「あにげん」の呟きを書かせて頂きました😭
    なつさん、ありがとうございました🙇

    ①9号討伐第一部隊会議の鳴海とキコル
    ②鳴海と母
    ③四ノ宮ヒカリの懐妊と緒方(ほんのり緒方→ヒカリ描写あり)
    オキシトシンⅠ 兄と妹

    怪獣討伐において、作戦会議などはあってないようなものである。
    そもそも、怪獣の出現自体が予測できないのだから、長時間のブリーフィングのしようがない。大体の討伐は、時間との勝負でもある。即断即決で隊長がその場その場で柔軟に対応して討伐を繰り返すのが、人間に出来得る最善策であった。
    特に、隊長自身が前線で活躍する第一部隊に於いては、隊長の現着の早さに重きを置くため、移動のヘリや軍用車内での簡易なブリーフィングが主で、わざわざ会議室で資料を見ながらの作戦会議などどの小隊長も未経験である。
    その日、作戦会議として部隊全員が集められた会議室は、ある種、異様な空気に包まれていた。
    それもそうだろう。9号討伐は、前部隊長を殉職させる程の脅威であり、第一部隊こそがその悔恨を晴らすのが当然だという機運があった。その旗印となる、最後の弟子と実子を抱えるのだから我々こそが……という雰囲気が、重々しく、そして強い幹を成すように凝然とそこにあった。
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