お部屋探しは計画的に。「あんのクソ親父!!」
ミオリネ・レンブランは、グラスレー不動産の来客用ソファの上でふんぞり返った。傍には、膨らんだ旅行鞄。今月3回目の家出である。
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ベネリット駅前商店街にあるグラスレー不動産は、この街で地道に営業してきた店だ。お手頃価格の賃貸物件の取り扱いも豊富で「進学でひとり暮らしをするなら、まずはグラスレー不動産を訪ねろ」と学生の間で引き継がれているくらい。
「また会長と喧嘩したのかい?」
美しい目にじろりと睨まれて、シャディク・ゼネリが肩をすくめた。土曜日の午後は学校も休みで、店主のサリウスも物件案内で外出している。小さな店には、シャディクとミオリネしかいない。腐れ縁で幼馴染のご近所さんは、父親と喧嘩する度に八百屋レンブランから数十メートル先の不動産屋へ『家出』してくるのだ。お泊まりセットを抱えて。
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