窓辺の蝶窓辺に一羽の黒い蝶々が止まる。
ぼんやりとした視界にそれを収めていれば羽をひらりと瞬かせた。
午前から午後に移り変わる瞬間の穏やかな日光が蝶を照らし、その輪郭を羽の内の模様と共に透かしていく
柔らかい光に透かされた羽の内は黄、緑、青、赤の色が浮き上がり燐光していた。
窓辺の蝶に金色の誰かの影が重なる、指先を近付ければ存外それは逃げる事は無く爪先に触れそうな距離まで
「騎士様?」
不意に呼ばれた愛称は慣れ親しんだものだ
声の方に目を向ければ白い衣服に目を隠す黒い布に一瞬だけ網膜が焼かれる
目を細めたのを気付かれていないと良いのだが
「日向ぼっこですか?」
「ああ、そんな所や」
蝶はこちらに近付くと俺の指先に気付いたのだろう覗き込むように体を屈め「まあ」と微笑んだ
686