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    sunlight_yuki

    @sunlight_yuki

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    sunlight_yuki

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    ひずこ様のサイトよりお題をお借りしました。Dom/Subユニバースです。燐音がナチュラルに独り暮らししてたり。本体君が運命と家出したりしています。
    特殊設定ですのでご了承ください。

    小指の糸は赤く、首の紐は黒く「なんだこれ」
     そんなの答えてもらわなくてもわかってる、これは
    「人だ」
     飲み屋の帰りに、寂しい路地裏でつまずいた物体、それが汚れた身なりの人間だと認識するのに、少し時間がかかった。
    「大丈夫か、生きてるかー」
     ゴソゴソと身を捩るそいつの襟元からは細いcollar が見えて、パートナーがいるsubであることを物語る。
     あたりを見回しても他に人の姿はなく、何かトラブルに巻き込まれたのかもしれない。見捨てるわけにもいかず、水色の髪をなでる、少しべたついているがよく手入れされていて、さらさらしていることがわかる。
    「大切にされてるんだな」
    「んっ」
    「わかるか、なにかあったのか」
    「ここは、どこですか」
     弱々しく震える身体は、Domを求めて手を伸ばす。
    「ここはな、ES近くの繁華街のそば、見ろ、ゴミ箱とかいっぱいあるだろ」
    「ゴミ箱、、、俺は捨てられた、の」
    「いや、違っ、てかよくわからないけど」
     両手を顔に当ててさめざめと泣かれてしまうと、もう見捨てることはできなかった。
    「来いよ」
    肩にパーカーをかけてやり、おんぶして、
    「軽いなー」
     ファーストコンタクトはそれだった。
     
    「どうすっかなぁ」
     連れて帰っては来たものの、扱いに困っていた。
    「ねえ、かえりたい、ここはどこ」
     完全に俺っちは眼中にねぇ。まず、きれいにしてやらないと。
    「なぁ、フロ、入ろうか」
     懐かない野良猫を拾うとこんな感じなんだろうなぁなんて考えながら、イヤイヤするのを宥めて洗ってやった。
     肌もきれいに手入れされていて傷もなくって、、、いやあるか。
    「これ、どうしても外しちゃダメか、痛いだろ」
     collar がすれて少しだが血が出ている。手当てしてやりたいがどうしても触らせてくれないから困ったもんだ。
    「わかった、んじゃ自分できれーにしな、大事なご主人様からもらったんだろ」
    「わかった」
     時々顔をしかめながら、ボディーソープの泡で首元を洗う。そんなやーらかい表情もできんだな。
     少し大きめの私服、かなり不安げだけど元から着てたやつは洗濯機だからしょうがない。
     俺っちもいちおーDom だから、気を許したスキを見て、試しにglare を当ててみるけど、当然ながらおびえられてしまった。
    「ごめんな、もうしない」
     潤んだ瞳がかわいいなー。
    「メシ食うか、何がいい」
    「チーズケーキ」
     ん、いや、なぜ。と言っても今のうちには、カップラーメンとかレトルトしかねーんだけとな。
     そんなこんなで面倒を見始めてからはや一週間、未だに例の首輪を外す気配はない。
    「天城、何か手伝うことはありますか」
    「んじゃそこの洗濯物たたんでー」
    「わかりました」
    10分後。
     ん、何してんだあいつ。
     ぐちゃぐちゃとタオルを丸めて並べている、そして次はシャツを。
    「もしかして、たたんでるつもりか」
    「ちがうのですか」
    「あのなぁ」
     ひとつひとつ教えてやると、興味深げにじっと見ているのが、なんというか、かわいいなぁ。
    「HiMERU は今まで、こんなことをしたことも見たこともなかったので」
    「そりゃまたいい暮らしをしてたんだな」
    「まあ、こんなに狭くはなかったですね」
    「ひどっ」
     元気を取り戻すのに比例して、生意気な口をきくようになった。
    「よし、出かけるぜ」
    「どこへ行くのですか」
    「お前のご主人様を探しにだよ」
     そして、拾った場所に行き、近くの店に聞き取りをして回り。
    「手がかりなしかぁ」
    「もう、いいのです」
    「どして」
    「捨てられたことは分かっていたのですから」
     あれだけ頑なに守ろうとしたた首輪を躊躇なく外し、出会った場所に置いた。
    「いいのか、本当に」
     コクリ、と頷きHiMERU と名乗る青年は、もう振り返ることはしなかった。
    「なぁ、これまでのことを話してもらえるか、Speak(話して)」
     これは試しだ、ここで受け入れられればこいつは俺のモノになるんじゃないかと、そう思ったから。
    「んっ」
     無理かぁ。口をつぐんだ姿は言外に拒否を伝えているようで、
    「また体調を崩すといけねぇからいいぜもう」
     そう言って、その場を離れようとした矢先。シャツの裾をつかまれた。
    「俺は、替え玉だったから。ホントの名前は要。HiMERUは本体の名前」
     聞けば、ご主人様の寵愛を受けていた『HiMERU』が失踪し、付き人であった要が替え玉になった。しかし、長くは続かず相性の面から結局。
    「んで、本体君はどうしちゃったんだ」
    「わかりません、しかし、忘れられない人のところに行くと言い残していたので、そちらに保護されていると、そう思うのです」
    「そうか」
    「Collarをつけ続けていれば、ご主人様とつながり続けていればいつか帰ってくると思っていましたが、推理は外れていたようです」
     何もなくなった首元を心もないのかさすり続けているのがいたましい。
    「なにか、あったのか」
    「ええ、会いました。あなたが留守にしているときに、あれにはGPSが入っているので追ってきたそうです」
    「んで」
    「運命を見つけたから、戻らないと、俺に自由にしていいと言い残して消えました」
    「そうか」
     沈黙が重い、
     こんこん、こんこん
    「はーい、どちらさまっと」
    「探したよHiMERU、Back(帰ろう)」
     やばい、これはDomの俺っちでさえ圧倒されるGlareだな、あいつ無事か。
     そんなわけはなかった、振り替えると、廊下にうずくまって冷や汗を落としている。
    「帰りたいのか」
    「いいえ、あそこはもう俺たちの居場所はない、だからっ、戻りません」
     キッツい目つきで睨んでいるけど、気を抜くとDropを起こすのは明白だろ。
    「というわけでお引き取り願えませんか、元、ご主人様っ」
     俺っちもこういう力技には自信がありましてねぇ、圧には圧で押し返して追っ払ってやった。
    「あまぎっ、、、」
     悲鳴が響いて我に返ると、HiMERUは廊下でうつぶせになっている、胸が上下していないのは、まさか。
    「おい、メルメル、しっかりしろっ
     とっさに口づけて息を送り込んでいた、図書館の本で見た方法でしばらく胸を押したりしていると。
    「戻ってきた、な」
     キスは結婚してからなんて、そんな故郷の教えはぶっとんでたし、これは人工呼吸だからノーカウントだ。
    「HiMERU、わかるか。お前の元ご主人様はいなくなったぞ、もう来ないと言い残していった。んでな、今弱ってるみてぇだからケアをさせてもらう。俺っちの事、信用できるか」
     沈黙の後、うっすらと目を開いてうなずくのを同意ととることにした。
    「まずはセーフワードな」
    「りんねがいい」
    「わかった、きつくなったり嫌な思いをしそうになったらちゃんと言うんだぞ」
    「うん」
    「んじゃまずは、come(おいで)、そしてkneel(おすわり)」
     力が入らないのか、四つん這いで近づいてきて、俺っちの前にお座りをする。冷や汗が頬を伝うのもかまわずその瞳をずっとこちらに向けていた。
    「よくできたな、つらかっただろ、きっとお前はあのご主人様の事ももう一人のお前の事も大好きだった」
     でも、分かれなければならなかった、そしてここにいる。それを選んだ。膝の上に頭をのせてやり、よしよしとなでると気持ちよさそうに目を細めている。
    「お前は偉いよ、すごく、そして優しい」
     お前の小指に結ばれた赤い糸は、俺の小指につながっているとそう、信じている。だからここにいてもいい。
    「今日はもう寝ちまいな、ずっとこうしていてやるからさ」
     網戸から入る夜更けの風は、ひんやりとしてほてった身体に気持ちよかった。

    「天城、いつまで寝てるんですか、遅刻しますよ」
    「えーもうちょっと寝てたいんだけど」
    「ほら、寝ぐせだらけはHiMERUが許しませんよ」
    「メルメル厳しー」
     何の因果かふたりで仕事をするようになった。正確には4人でアイドルユニットを組み、俺とHiMERUでダブルセンターというわけだ。もともと完璧主義の彼は俺っちの生活も徹底的に管理してくれる。割といい加減になりがちな俺っちは大助かり。
     でも、ケアをするときは別、甘くて従順な俺のSub、初めて家族(弟)以外で大切にしたいと思える存在。
     カチャリ
    「あーこれ外してやらないとな」
     HiMERUのCollarにつながっている黒い革のベルトは、プレイの時だけつけられるもので普段はシンプルなチョーカーになっている。これは絶対に自分でとろうとしないのだ。
    「よっと、これでよし」
    「急ぎましょう」
     少し赤くなった頬を隠すように背を向けて、洗面へ向かう背中を、見送りひとつ、のびをした。






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