今日の花を摘め、明日結ぶ実を喰らえ 小学二年生の時、学校で理科の教育の一環として飼育されていたメダカが増え過ぎたということで、クラスの全員に数匹づつが譲渡された。
淡水魚の生態、メダカの飼い方、アクリウム初心者教本、などという書籍を図書室で借りて読み、水槽やエアポンプ、餌や薬を小遣いで買いそろえて万全に住処の支度を整え、四年の間健やかに生きたメダカは、何の病気の兆候もなくある日突然に一匹が水面へと浮かんで息絶えており、二匹目もほどなくしてその後を追った。
涙は零れなかった。本に書いてある年月よりも存外に長く生きた魚の亡骸を庭に埋めた後で、綺麗に洗い終えた小さな硝子の箱に新たに何かを住まわせる気にはならず、空っぽになった水槽は、家族で水族館に行った際に兄が弟とお揃いでこれが欲しいとねだって買って貰ったカクレクマノミのキーホルダーを付けた家の鍵を置く定位置となった。
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