記憶喪失☕。成人済み設定。とある事故により過去の記憶が一切なくなってしまい、知識や生活習慣、ピアノやバイオリンのことなどは覚えているのに、その他に自分のやってきたことや人間関係などの記憶が全く無い☕。
事故後、無事に怪我も治り退院した☕は、どうやら引っ越し準備の最中だったらしく、荷物が綺麗にまとめられていた。
中途半端に失った記憶に縛られ、苛まれるくらいならと、全く新しい人生を送ることを決意し、新天地へ引っ越した☕。
覚えている人物は一切いなかったが、両親の知り合いが経営しているバーでバイトをしながら生計を立てることとした。
それから数年経ったある日の休日、偶然立ち寄ったライブハウスで運命的な出会いをする。色々な人が参加するライブで、一際目を惹く人物がいた。
髪は、目が覚めるようなオレンジに黄色のメッシュ。それに加えて、まるで燃えているかのような、熱い歌声。
ステージに立ったその人は1人だったが、まるで2人で歌っていると錯覚するような歌い方だった。
確かに2人なら、こういう歌割りをして歌うだろう。不思議と違和感もないし、とても耳馴染みのいい声だった。
帰路に着く頃、なんだか歌いたい気分になって、先程聞いたばかりの曲を口ずさむ。1度聴いただけで、こんなに歌えるものかと驚くが、なぜかするすると歌詞が出てくる。
「さっきの曲、歌ってくれてるんだ。」
不意に後ろから声をかけられ、驚いて振り向く。すると、先程その歌を歌っていた、鮮やかなオレンジ髪の男性が立っていた。
「あなたは…さっきの…!」
「やっぱり、見ててくれたんだね。その曲は、オレの大事なヤツが作ってくれた曲でさ。それを口ずさんでくれてたのが嬉しくて、声かけさせてもらった。驚かせてごめんね。」
きっと、気を遣って話してくれているのだろう。初めて会ったはずなのに、なぜかそれが分かる気がした。
「気を遣わなくても、普通に話してくれ。たぶん、同い年くらいだろう?」
そういうと、オレンジの彼は少し驚いてはいたものの、すぐに破顔して先程よりも砕けた雰囲気で話し始めた。
「…そうだな。オレは東雲彰人。彰人って呼んでくれ。お前は?」
「青柳冬弥だ。冬弥、と呼んでくれ。」
なんだか、初めて会ったような気がしない。昔、どこかで…。
「……うっ…!」
「なっ、どうした!?頭、いてぇのか?」
「はぁっ…はぁっ……。」
頭が痛い。何か、何か思い出せそうな気がする。でも…意識が…保てない…。
彰人の声だけが、頭の中で反響している。しかし、頭痛の苦しみに抗うことが出来ないまま、冬弥は意識を手放した。
それ以来、昔の記憶が再びフラッシュバックすることは無かった。
一方🥞は、記憶を無くして失踪した☕を探して転々としていた。
元々、☕と一緒に住むことになり引っ越し準備は済ませていた🥞。☕が失踪してしまい、それは叶わなくなってしまったが、ライブハウスで歌っていればいつか会えるのではないかと、淡い期待を込めて住まいを転々としながら単身活動し続けた。
そんな中、とあるライブハウスで、偶然にも☕との再会を果たした。
目の前でいきなり倒れたのを見たときはひどく動揺したが、倒れた後の呼吸は落ち着いていたので、そのまま自宅へつれて行き、介抱した。
目が覚めた☕は、よそよそしくお礼を告げ、出て行ってしまった。それに、ひどい寂しさを覚えたのだった。
☕の記憶は戻らないものの、その一件がきっかけとなり、二人の距離は一気に縮まることとなった。
そして、何度か会っている内に☕は🥞が好きになって、なんやかんやでお付き合いすることになる。
🥞としては願ってもないことだが、あの頃の記憶はない☕とお付き合いすることに、少し複雑な気持ちを抱えた。
ある日☕は、🥞のお部屋で、🥞が音楽作成ソフトをいじっているところをみて、自分が作曲していたときの事を思い出し始める。
それと同時に、頭がかき混ぜられているかのようなひどい目眩を覚え、床に倒れこんでしまう。
朦朧とする意識の中、自分を心配する🥞のあたたかい手の感触を感じながら、何かを思い出せそうな気がしたまま意識を失う。
気がつくと、そこは病院だった。
頭部に違和感を感じて触れてみると、ガーゼが当てられ、包帯が巻かれていた。倒れた際に、どこかに頭を打ったらしい。
心配そうにこちらをのぞき込見ながら名前を呼ぶ🥞の顔を見て、あの頃と変わらないなと呟く☕。頭に衝撃を受けたせいか、昔🥞と付き合っていたことや、一緒に夢に向かって歌っていた事を全て思い出していた。
その一言に驚きを隠せない🥞。驚きの後、☕の記憶が全て戻っている事に気がつき、思わず抱きしめる。
またやり直そうと約束し、二人が住む予定だった場所へ再び向かう…。
という、記憶喪失になって全部忘れているのに🥞に再び恋をして、お付き合いしているうちに全て思い出してまたやり直すというお話がみたいです。