狂い咲く花は風を乱吹く5(…!アイツ、どこに行きやがった?)
ヴリコーダラはビーマの気配が消えた事に気がつくが、それよりも己の「花嫁」を優先し、集中を前方に戻した。
マスターを置き去りにするのはサーヴァントとしてはどうなんだという行為。しかし、自分は事前にもし花嫁を見つければそちらを優先すると警告はした。
「!!」
と、突然匂いの方向が変わり、ヴリコーダラはふむと考え込む。
これは、自分を誘ってる?
「ハハハ、なるほど、こいつは…」
待ち伏せか!
どうやら逃げるのを諦めたのかもしれない。
折角、愛しい花嫁が用意した機会だ。善き夫ならば、大人しくその「罠」にハマりに行かなければならない
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長くて薄い紫陽花色の髪が靡く。
血が繋がった身内だからか、ドゥリーヨダナの容姿と似ていた。
彼の母方の叔父は人好きそうな笑顔で藤丸とヨダナを見た。
「ああ、我が愛しの甥っ子よ。どれ、姉上と瓜二つのその顔を見せてくれ」
ドゥリーヨダナの叔父、シャクニは両手広げてヨダナを迎えようとした。
「……」
「…ヨダナ」
当のドゥリーヨダナは叔父の歓迎に応えなかった。しかし藤丸立香を庇うかのように自分の後ろに立たせた。
「はぁん〜?なるほどな。成程ぉ?」
一向に来ない甥っ子にシャクニは残念そうに溜息をついた。
「その子供がお前の「マスター」か…」
「え!?」
「……」
今度こそドゥリーヨダナは戦闘態勢に入った。
『敵性サーヴァント確認!!目の前にいる人物は人間じゃない!サーヴァントだよ気をつけて!!』
ダ・ヴィンチの声にシャクニは可笑しそうに、腹を抱えながら笑った。
「あーあ、どうしたんだ、スヨーダナ。あんなに強欲で自己中心で頑固だった
、大人しくそんな小娘の命令に従うとはな。…しかし、ああ、成程
確かに似てるな?その娘、お前の…」
ゴッ!!
シャクニの言葉を遮るかのようにドゥリーヨダナは棍棒を振るった。
「危ない危ない、おいコラ、大好きな伯父上になにしとるんだお前は。姉上に言いつけるぞぉ?」
口は笑っているが目は獲物を捉えるかのような鋭い視線。
まるで巨大な禿鷲が死骸を狙うかのような
「…ドゥリーヨダナ、賭けをしようじゃねぇか」
シャクニの大きな手には小さなサイコロ
ギザギザの形の悪い歯を見せて笑みを浮かべる
「偶数がでればお前のマスターを見逃そう、奇数がでれば『お前は俺と共に来てもらう』」
骰子が高く振られ、落ちたそれをシャクニが受けとめる。
そして手を開き、骰子が見せた数字は
「奇数、だな」