今日も彼女に会いに浅羽悠真は上機嫌にルミナススクエアの映画館へと軽やかに足を運ばせていた。
今日も無事仕事をさb…早退し、先ほど会う約束をした、彼の唯一無二の相棒に会えるのだから。
その相棒は凄腕のプロキシで、彼女のお陰で数々の高難易度任務が難なく片づけられ、対ホロウ6課の評価が更に上がった。…先日、長年抱えていた「師匠の事」も、彼女のお陰でやっと真実を知れたし、数々の命が救われた。
そして自分も、彼女に救われた一人であった。
着くはずの駅から一駅前に降りると、悠真は裏道に入る。ルミナススクエアには人が多く、6課の「熱烈」なファンがよくいるので、遭遇を避ける為に気配を消し、人混みに紛れ込もうとする。
(せっかくの彼女とのデートなのだから、第三者には邪魔はされたくないからね)
(…まぁ当人はこれをデートとは思っていないのだけどね)
その事実に悠真は思わず溜息が溢れた。
そうだ、我、浅羽悠真はリンに恋している。
気がついていたらもう彼女に夢中だったんだ。
もしかすると初めて会った時からかもしれないし。
師匠の事で一緒に探索してくれた時からかもしれないし。
あーもーいつからでもいいだろう!
しかし彼女は自分の事を「仲の良い友人達の一人」として見てくれていないのは知っている。
そう、魅力的な彼女には沢山の交流があり、明らかに自分と同じく恋人の座を狙っている者達がいるのだ。
しかもどの候補者も、美麗端正、実力もあり、(某熱血脳筋治安官以外(またしても何も知らないセス君:はっくし!!!))頭脳明晰、等々
吐いた溜息がより重くなる気がした。しかし、それを全て霧散しようと頭を振る。このままだともっとネガティブな事を考えそうで、そんな所、彼女には見せたくないし、これから楽しい思い出を作るんだからポジティブに考えないとね!(必死)
様々な感情の葛藤をしている内に、いつの間にか映画館前に着く。そしてそこで佇んでいた少女はこちらに気がつくと眩しい笑顔で手を振ってくれた。ああ…天使はここにいた。
幸せメーターがリミッターを超えた悠真は必死にその高振る感情を隠しながら、クールに笑って手を振り返した。
(ああ…仕事サボって良かった(涙))✴︎良いこは真似しないでね
この後、報告書やら副課長に大目玉喰らうと思うけど、全然ノープロブレムだ!
今回は彼女の大好きなホラー映画を鑑賞するらしく、嬉々とポップコーンを買って、平日だから完全に貸切状態のその映画館で特等席に座った。
本来ならホラーは得意な彼女であるのだが、今回の映画は結構グロテスクでホラー要素も強めだった。普段はいつも余裕そうな少女の顔色が青白く、恐怖で震えて(すっごく可愛いX1000)、小さな悲鳴をあげて、僕の腕に必死にしがみついてくる。
(僕も悲鳴をあげそうなんだけど歓喜!!!(混乱))
彼女の甘くて良い匂いが鼻を掠って頭が真っ白になる。柔らかくて温かい彼女のむ…体が僕の硬い腕を包んでどうかなりそうだよ本当にさぁッ(必死)…あ、待ってリンちゃん、そんなに抱きしめたら…柔r
…と、
何も考えず、気にせずに幸せな時間にうつつを抜かしたいのは、山々なんだけどね
浅羽悠真の鋭い視線が彼の背後に行った。
四人…五人か
初めは自分の熱烈のファンかと思い、地下鉄を巧みに乗り換えして裏道を通ったのだが、自分をここまで追い詰めるとは、動きが素人ではなかった。
対ホロウ6課に仇なす輩か
全く、自分が心底恋焦がれてる彼女との貴重なデートを邪魔されて不快だ
背後にあるただならぬ気配に警戒しながら、リンをそれらから守るように腕を予想外でホラー映画で怯えて震える肩に回す。それから二時間、映画が終わるまでその気配はこちらに手は出さなかった。
目的が分からない以上、今は善良な一般市民である彼女を安全な場所に移動させて、合間えるか
悠真は貼り付けた笑みでリンに別れを告げると、彼女は何かを察したように後で連絡を入れるように強いた。頼れる相棒の察してくれた事に嬉しくて思わず笑みを浮かべてしまう。
悠真はそのままリンから離れると、人気のない裏道へと向かおうとするが、違和感に気づく。気配自分を追わずに微動だにしてないのだ。
(…?)
どういう事だ?
今、此処には自分と映画館スタッフ、そして
「…し…しまった…ッ」
彼女しかいない。
すると悠真の顔色がどんどん悪くなっていく。
慌てて全速力で彼女と別れた場所へと向かった。
普段、対ホロウ6課は敵が多い。だからまた自分が狙われたのではないかと思っていた。
しかし
「パエトーン」にも敵は多いのだ。
奴等の目的は自分ではない。
悠真の目の前で黒い車が猛スピードで走って行った。窓は黒く塗りつぶされていたが、一瞬だが、リンの姿を中に確認した。その瞬間、悠真の視界が真っ赤になった。
>>>>>>
「は、離 し て ーー!!」
「おいこのガキ!大人しくしろッ!!」
男達はリンを大人しくしようと押さえつける。その最中に彼女の服が敗れてしまい、彼女は小さく悲鳴を上た。
「あー…悪い、大人しくしてりゃ、なにもしねぇ…おい!早く星見家に連絡しろ!!」
「解ってる解ってるって!」
サングラスの男がスマホを取り出そうとした、その瞬間に
突如大きな衝撃が車のフロントガラスを突き破った。
「!!!」
運転手は慌てて急ブレーキをすると、顔面に靴底がクリーンヒットする。
「ひぃ?!!」
助手席に座っていたもう一人の男は悲鳴をあげると、慌てて武器に手を出そうとするが、ものすごい勢いで拳がその男の顔面にぶちのめされる。
仲間を二人瞬殺したその獣のような「なにか」に後ろに居た仲間達は慌てる。
「おい、こ、こいつ…こいつと一緒にいた…」
「チッ、おい!こここのガキがどうなっても…」
男はリンの首に腕を回す。その行為に少し冷静を取り戻した悠真はリンの方を見る。
彼女が着ているTシャツが思いっきり破られており、下に身につけているパステルピンクのブラジャーが丸見えだ。しかもポンプ柄…かわ…
「ぶっ⚪︎す」
ドスの効いた低い怒声と共に雷が男達を襲った。
>>>>
「あ!悠真!!良かった、起きたんだねッ!」
いつの間にか意識を失っていた自分は好きな子の膝を枕に寝ていた。様々の感情の昂りに思わず血を吐きそうになったけど、そこはぐっと我慢した。
「む、無事か」
「浅羽隊員、お疲れ様です。」
「あーハルマサ起きたんだねー」
見慣れた6課の仲間が自分の目覚めに安堵している。そしてよくよく見ると彼等だけではなく、プロキシに交流を持った陣営も居た。
リンを攫った男達をギタギタにぶっ倒した後、体に過度な負担をかけてしまった自分は情けなくもその後気絶してしまったらしい。
(まぁ、必死に爆走する車を追いかけてたもんね…(…え?By某治安官後輩))
「悠真が倒れた時、ものすごくびっくりしたんだからね!その後に6課と治安局のみんなが来て、お兄ちゃんとニコ達や…まさか郊外からかリュドーンの子達まで来て」
「ああ、実は…事前にお兄さんに連絡したんだよねぇ」
パエトーンを狙っている組織、つまりまさかのパエトーンの正体を知っている。
ならばリンの兄であるアキラも危険な目にあう可能性があったので6課とアキラに事前に連絡を入れたのだった。どうやらそこからニコに連絡が行き、膨れ上がったらしい。
「……リンを襲ったのは、てめぇらか」
地の底から震え上がるような怒気がかリュドーンの子のチャンピオン、ライトの口から溢れた。いつでも拘束された男達を殴りかかる体勢だった。
「あの!犯人にこれ以上の危害は加えないでください!…彼等はきちんと法の下で裁かれますので」
若き治安官のセスはライトを落ち着かせようとする。
「あらぁ、淑女を攫い、遅い、辱めたその大罪。そちらの生ぬるい裁きに…ワタクシ達は納得いくと思って?」
「お、落ち着いて!!」
困ってる後輩を目に、心底応援していると、自分はご褒美の膝枕を堪能しながら目を閉じた。
後日、犯人達が自白した。
彼等は星見家のライバル政治家に雇われ、星見家の「養女」を攫い、力を削ごうとしていたらしい。彼等の言葉に首を傾げた治安官達に対して、ごごごごごごと地響きするような怒りを待とう対ホロウ6課の課長、星見雅。
どうやら雅の父が政治家達が集まる宴会の席で娘自慢と未来の娘と息子自慢をしてしまったたらしい。
その時に溢した、そのか弱い「養女」なら手を出せるだろうと狙った。
「…つまり、お前達は私の「妹」に手を出そうとしたのだな」
と意味のわからない事を言うと、副課長の柳と友人の朱鳶は瞬時に妖刀に触る雅の手を止めた。
大騒ぎになったその場から手慣れたようにこっそりと抜け出す悠真。
上機嫌でスキップするような軽やかな足取り、彼が向かうはもちろん六分街のレンタルビデオ屋であった。
そして、