狂い咲く花は風を乱吹く 1「ドゥリーヨダナ!マスターとのパスが切れました!!」
「霊核破損94%、95、96…霊核崩壊確認!修復が間に合いませんッ!!」
「霊子データをバックアップしてッ!!早くッッ!!!」
「ま、間に合いませんっ!98、99…」
DATA LOST
無情の文字がモニターに大きく映された。
完成室は一気に静かになる。
「ドゥリーヨダナ、完全消滅…確認…しました」
その言葉はマスターである藤丸立花、そしてサーヴァント、ビーマの耳にも響いた。
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「今回の特異点は紀元前古代インド。適正サーヴァントは…」
「なんでビーマがおるんだッ!!!マスターーーー!!!」
クル族の百王子が長兄、ドゥリーヨダナは大声で怒鳴る。
「五月蝿ぇ、クソ王子」
「森ゴリラ…!!」
「二人とも!喧嘩しないで!」
マスター、藤丸立花はビーマとドゥリーヨダナを呼ぶ。
「……」
藤丸の後ろに静かにいたビーマオルタ、ヴリコーダラがのそっと前に出る。
「ふん、そうだな。ヴリコーダラ殿とわし様だけで特異点解決する。ビーマなどいらないぞマスター!」
「んだとテメェ…」
ぐっとビーマはヨダナの胸ぐらを掴む。宿敵に憎しみいっぱいの瞳に睨まれて、ドゥリーヨダナも負けじと睨み返す。
やっぱりコイツは……
ドゥリーヨダナはビーマの手を振り解く。
「…気に食わんが、仕方あるまい。マスターよ、さっさと解決して、帰るぞ」
「あ、うん」
藤丸はダヴィンチの方を見ると、天才見た目少女は各自レイシフトの準備にでた。
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適正サーヴァントはビーマ、ドゥリーヨダナ、そしてヴリコーダラの3基。
ビーマとドゥリーヨダナの宿敵関係は生前より続いており、一目あった途端に喧嘩に発展する。しかしビーマオルタのヴリコーダラは違った。ドゥリーヨダナもといカウラヴァとは良好関係であり、度々一緒に絡んでいる所を見かける。そして、更にこのビーマオルタに対してビーマもあまり良く思ってらしくなく、いつも憎しみの籠った目つきを己の新たな側面に向けていた。
そんなビーマオルタはもう一つの側面といえばいいのか、己の花嫁であるドゥリーヨダナを探しているらしいと、とても複雑な面子のサーヴァント達であった。
しかしそんなめんどくs…複雑さはあれど、今回のレイシフトはスムーズに進み、そして通信はまだ妨害されていない。
「みんないるね?とりあえず無事ついたよ、ダヴィンチちゃん!」
『こちらも異常は感知してないよ!今回はとてもスムーズなレイシフトだね…ただ
この時代に感知されるエーテル濃度が凡人類で観察されたそれよりも濃いね』
「それって…」
『神霊レベルの強力サーヴァントと遭遇するかもしれない、みんな気をつけて!』
「おぅ!マスター、俺から離れるんじゃねぇぞ!」
ビーマはマスターを庇うように辺りを観察する。するとヴリコーダラも辺りを見渡し、スンと鼻を鳴らすと、なにか顔を顰めた。
「…北西方向に大勢の人間、そして神性の臭いがする」
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その荒地には20-30人程の人間が集められていた。
何事かと藤丸と3基は瓦礫や植物の陰に隠れ、それを観察していた。
どの人々も不安そうな顔色で落ち着きがなかった。
これから何が起こるのか、四人は嫌な予感しか感じなかった。
【愛しい人間達よ】
突然、上から聞こえる機械で変えた声のようなものが響いた
「神様!」
「おおお我が神よ!お許しを!!」
人々は懇願するかのように大地に伏せた
【そなたらは罪を犯した】
【罪人は裁かれなければいけない】
【しかし貴様等に平等を…公平を与えん】
【罪を裁定する機会をやろう】
すると空から光が現れ、人々の前にゆっくりと降りて行った。
「なっ?!!!」
「!?」
「は…?」
「な」
絹のように美しい藤色の髪が靡いた。
少年と青年の間の、年齢は15、16位だろうか。
そんな彼はまっすぐな、宝石のように輝く茜色の瞳を見せた。
「我が名はスヨーダナ(公明な戦士)、汝らの罪を裁定しに見参した!」