冬の日 うー寒い。ヨコハマって寒くない?絶対イケブクロの方が気温高いと思う。
「お前はなんでいつもそんなに薄着なんだ」
イケブクロにいさ時は寒くなかったし、車で移動だから何も気にしないで来ちゃったんだよね。
「寒くなかった」
まだ日が陰ってくるような時間でもないのに浜風が身に染みる。肩をすくめて腕を組んでいる僕に呆れながら自分の首にかけていたマフラーを取って僕に巻く。自分だってそんなあったかいカッコしてないじゃん。
「ねえ銃兎、寒くないの?」
「まあ、いつもこんな格好だしな。モコモコしてたら仕事にならないしな」
「ふーん」
たしかにモコモコした銃兎は想像つかないけど。…てことはマフラーも普段はしてないってことだよな。わざわざ持ってきたのかよ。
三郎のために銃兎はいろいろと気をまわす。それは三郎が意識をしていない事ばかりで後から気づく事が多いし、気付かない事もある。銃兎は気遣いなんていうのはスマートにやってこそだと思っているので相手の反応なんかはどうでもいいのだが、三郎がそこに気づいた時にする「そんな事しなくてもいいのに」とムスッとしたり、「うわ、こんなの気づくのかよ」と小さく驚いたり、「へへ、嬉しい」と無意識に微笑んだりする小さくて素直な表情の変化に可愛さを覚える。周りにはそんなタイプの人間はいないので新鮮でもある。
ちょっとムッとした顔をしながらマフラーをぐるぐるに巻いている三郎が「あったか」と呟く。悔しそうな顔をしているのがなぜなのかはよくわからない。
「銃兎さあ!ニヤニヤすんのやめてくんない!」
突然キレる恋人に銃兎は面を喰らう。
「何言ってんだ」
「なんか思うツボな感じ?優しくしてやったら落ちんだろみたいなさあ!」
被害妄想か?まあ、落ちてくれるならそれに越した事はないがこの生意気坊主はなかなか攻略が難しい。