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    comeco

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    銃三が主。たまにさまさぶ、帝独、D4

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    いいじゅうさぶの日(2023.11.13)
    入間銃兎×山田三郎

    リリックに対して負の感情を抱く三郎と何も気づかないニブイ銃兎の話

    【銃三】本当にやきもちですか? 久しぶりに中王区主催の余興が開催される。このところ中王区の内部体制が危うくなったり、ディビジョンごとになんらかの問題を抱えていたりで決してスッキリしているわけではないのだが資金自体はそんな事はお構いなしに減っていくだろうし、ディビジョンバトルが滞っていていわゆる『推し』に飢え始めた国民の声がSNSに上がるようになっていた。芸能人でもない(一部そんな奴もいるが)各ディビジョンの代表チームを拝めない事の何が精神に関わるのか全く想像もつかないが日に日に大きくなる声を中王区が国民の声として吸い上げた形になった。そして開催が決まると中王区への女性の支持率が右肩上がりで回復したのだから驚きだ。
    「まあ、くだらないよね」
     久しぶりにうちに遊びにきて一緒にそんなニュースを見ていた中学生の恋人が言い放つ。
    「そうですね」
    「えーっと、今回のセトリなんだっけ」
     出演者の一人でもある恋人はテーブルの上に投げられていた中王区からの資料をバサバサと雑にめくっている。
    「今回曲数多いですよね」
    「そう?空き時間多いかな?合間でご飯食べれるかな」
     男ばかりの大所帯でのライブのため最近は必ずケータリングが用意されている。お目当てはそれらしい。
    「Busters Brosは大体最初ですもんね、出番が」
    「うん。ヨコハマは二番目じゃないの?」
    「うちは最近順不動ですよ」
    「ふーん。あ、こないだナゴヤ二番目だったね。いち兄が波羅夷と仲良いからいいんだけど!」
     Busters Brosの三男坊は長男と仲良しのナゴヤのリーダーが気に入らないらしく言葉の端々に不満が滲む。
    「お前も天国と仲良いだろ」
    「そう?」
     自覚はないらしいが以前泊まり合宿を一緒にした後から割と懐いていて心配だ。四十物とも以前一緒にコーラスしたからか仲良く見える。
    「ナゴヤは年が近いから一緒にいても楽なんだけどさ」
    「……そうか」
     年齢を引き合いに出されると強くは出られない。俺自身は歳の差を感じる事は少ないが、もしかしたら三郎の方は違うのかもしれないと思ってしまう。
    「……あ、ソロあるのか」
     セトリを見ながら三郎の顔が曇る。
    「お前大好きじゃないか、ソロ」
    「うん?まあ、自分のはね」
     言葉を濁してくる。いつも嬉々として歌っているのに何か不満があるのか。基本的に三郎は自分のパートが大好きだし、攻撃的なのもメロウなのも楽しそうに表現している。ソロになればさらに毎回新しい表現が追加されてくるから俺にとっては見応えがあり、脅威だ。
    「練習しないとなー」
     そう言いながら資料を閉じて「帰るね」と立ち上がる。普段ならもう少しゆっくりしている時間なのにと首を傾げていると
    「送ってよ」
     と座っていた俺の肩のあたりを珍しく摘んでクンクンと引っ張る。
    「あ、ああ」
     あまりの可愛い仕草に一瞬時が止まったが『早く帰りたい』と語るご機嫌ナナメな目の圧が強く、兄との約束でもあるのかと思い車のキーを持って立ち上がった。
     
     余興前日、6ディビジョン18人が会場に集結。当然俺の恋人である山田三郎もいるが接点のない俺たちは挨拶程度しか交わさない。以前左馬刻と仲違いをしていたこともあり山田一郎がこちらに寄ってこないため三兄弟とはどうしても距離が遠い。
     同じく仲違いをしていたと言っていた波羅夷空却とは一郎の機嫌お構いなしに空却が毎回構っていくからか今となってはナゴヤとイケブクロの距離は近く和気藹々としている。ナゴヤは二人が十代だし、いつもは大人びている一郎も空却と一緒にいると子供っぽさも垣間見える。テンション的に山田の上二人とナゴヤの若者二人が盛り上がっていて、三郎と天国獄が一歩引いて二人でいるところをよく見かける。三郎も若者の中に入ってることもあるが、テンションについていけなくなると天国のそばにいるように見え、黒いものが腹の中に溜まってくる。
    (だから全ディビで集まるのは嫌なんだ)
     リハーサルは着々と進んでいく。こんなのは楽しむものでもなく淡々と言われた通り動けばいい。歌えば気分は自然に上がるが、動きの打ち合わせもあるからずっとそのテンションを保つこともできない。
     しかもうちのチームはそもそも人に指示されるのが大嫌いなヤツがリーダー様なので「んなこと何でもいいだろ」で大体一蹴され、その度に理鶯と二人で左馬刻に合わせて動くことになる。合わせて動く事には慣れているので別段不具合はないし、理鶯は協力的なので自分たちの出番だけなら何も問題はないが中王区の奴等は何故か他ディビと絡ませようとするからその時が厄介でリハではこの作業が面倒な事この上ない。本番は過ぎ去ればそれで済むがリハはそうもいかない。
     リーダーだけが呼ばれる時は白膠木と神宮寺が左馬刻の面倒をみてくれるから楽だが、それが終わった時の左馬刻の機嫌は大体最悪で気を揉むことばかりで左馬刻を怒鳴り、理鶯に左馬刻拘束をお願いしてばかりだ。
    「うさちゃんはご機嫌ナナメだなあ‼︎」
     リーダー様が俺に文句を言って来るが機嫌を損ねてくる理由の大半が御本人様からのクソみたいな態度からなのでどの口がと思うが確かに気分的にあまりよろしくもない。一緒の空間に恋人がいるから目だけは追ってしまい普通に話しているやつらにも黒い感情を少なからず持ってしまう。
    「そういやさ、あのクソチビお前のソロの時面白え顔してんのな」
    「はい?」
    「なんだよ見てねえのか。いつも目で追っかけ回してるから知ってんのかと思ってたぜ」
     自分のソロの時は周りなんか見ていなかったし、出演者は袖でそれぞれのことをやっているから気にもしていなかった。もちろん三郎が俺を見ている事など知らなかった。
    「どういう事だ」
    「なんだろうな?なあ、理鶯」
     理鶯?理鶯も見ていたのか?
    「そうだな、睨んでいたな」
    「睨んで?」
    「ヒョー!の時はわりと熱烈に見てんだけどな二曲目になるとふっくざつそうな顔になるんだよな、いつも飄々としてんのにな」
    「そうか。小官には泣きそうに見えたぞ」
    「はい⁈」
    「どんどん表情が曇っていくからな。面白えぞ」
     どういう事なのかさっぱりわからない。俺の恋人だと知っているとはいえ二人が三郎の事を気にかけているのにも驚いた。
    (そういえばソロがどうとかこの間も言ってたな……)
     
     本番前の通しは本番同様の仕様で行われる。自分の出番以外はステージ下か楽屋待機となっていた。どちらにもモニターがあり舞台上の様子は常に把握して自分たちの出番を待つ。
    (今日も元気に葬ってんな)
     モニターには三郎が映っている。特攻隊長はいつもと変わらずBusters Brosの三兄弟。今回ヨコハマはディビジョンでいえば出るのは五番目でゆっくりだ。最後オオサカで盛り上げて全員曲に持っていくらしい。TDD以前にチームを組んでいたリーダーたちの絡みをファンは知っているらしく、そのマイクリレーが前回想像以上に受けた。今回はさらにそいつらを絡ませ観客を楽しませるのが目玉企画らしく左馬刻も白膠木に交代時にハイタッチしろという命が来ている。左馬刻が本当にやるかはわからない(前日リハでは無視していた)が。
     チーム曲もソロ曲も元気いっぱいにパフォーマンスしているモニターの中の三兄弟。三郎も兄達とパフォーマンスしている時は最高の笑顔だ。こんなに楽しそうにしているのに俺のソロでは曇った顔をしているらしい。単純に下手だからとかなら絶対に嬉々として言ってくるはずだ。
    (ソロのリリックになにか気になるところでもあるのか?)
     俺の信念、と言っても三郎には仕事の歌にでも聞こえるのだろうか。麻薬に関してのこともあまりプライベートで話したことはないが少しは理解していると思うのだが。
    「おーおークソガキどもは悩みもなさそうに歌ってやがるな」
     俺の隣にコーヒーをドンと置きながら左馬刻が座る。
    「元気があっていいだろ」
    「まあガキだから元気くらいあんだろ。で、うさちゃんは俺様の言ったことでお悩み中なんだろ」
    「……別に悩んでなんかいませんよ」
    「チビにはお前のリリックがどう聞こえんだろうな」
    「リリック?」
     やはりそこなのかと思いつつも特に変なとこはないと思うのだがと心当たりもないのでなにが問題なのだろうかと思い返す。顎に指を当て思案していたら「銃兎よお、お前ちゃんと恋愛したことあんのか?」と失礼極まりない言葉を左馬刻が投げてくる。
    「何を急に。そんなのお前だってないだろ」
    「まあ、俺様は他人の心の機微が痛いほどわかる繊細な心の持ち主様だからな」
    「何を言ってるんだか」
    「少年は故人に嫉妬しているのだろう」
    「は?え?」
     理鶯に言われてもピンとこない。
     故人、とは?嫉妬?
    「理鶯なーんで言っちまうんだよ」
    「銃兎はこの手のことには疎そうだからな。それに当人には気づかない事もある」
    「嫉妬、ですか?三郎が?」
    「あの感じじゃチビも正体不明の感情かもな」
    「うむ。百面相していたしな」
     嫉妬……そんなこと有り得るのか。
    「忘れられない人がいるってのは重いんじゃねえか」
    「そうだな。ましてや少年の知らない頃の事になれば聞くのも躊躇うやもしれん」
    「そうですかね……」
    「あのクソガキにはうさちゃんが未練タラタラに見えんじゃねえのか」
    「未練?」
    「銃兎のは未練ではなく復讐だろう」
    「そりゃ俺らはわかってっけど未来しか見えないお子ちゃまにはそんな過去のしがらみなんざわかんねえだろ」
     考えたこともなかった。そもそも三郎がそういう感情を持つことすら。自分の醜い嫉妬はどんどん湧くが三郎がこちらにそんな事を思うとは考えが及ばなかったし、そんな素振りも見せてきたことはないような気がする。しかもそれを知ったところでそれを指摘して『は?自意識過剰じゃない』と一蹴されたらそれこそ大ダメージだ。
    「ま、パフォーマンスには影響なさそうだけどな」
     画面の向こうの三兄弟はリハだというのに全力で飛び跳ねている。一郎、二郎と一緒なら何より楽しい時間だ。当たり前のように最上の笑顔で歌っている。
     
     ……それでも気になる事があるとしたら100%出せなくて悔しがるかもしれない

     イケブクロはこの出番が終われば時間ができる。
    「すまない。少し席を外す」
     ガタッと立ち上がる俺に左馬刻はひらひらと手のひらを揺らし、理鶯は頷く。
     
    「にいちゃん、どうだった?」
    「お前ら煽りまで上手くなってないか?」
    「ほんとですか!」
     笑顔で三人がステージから楽屋に続く廊下へ入ってくる。廊下で待ち伏せは我ながらないなと思いながらも他の出演者と居合わせる可能性が一番少なくなるのは今しかない。
    「お、彼氏のお出迎え」
     二郎が俺を見るなり三郎を小突く。
    「お疲れ様です、入間さん」
     一郎が会釈をする。「お疲れ様です、素晴らしいパフォーマンスでしたね。本番も頑張って下さい」と返す。三郎はずっと俺を睨みつけている。大方何しに来たんだとでも思っているのだろう。
    「出番までに戻れよ、三郎」
     俺がわざわざここに来ている事で何かを察した一郎が三郎へ促す。三郎は「え?行きませんよ」と言うが「用がなきゃここには来ねえだろ」と諭してくれる。渋々俺の方へ足を踏み出すと一郎は軽く会釈をしてから二郎と二人で話しながら楽屋の方へ向かって歩いていく。
    「なんだよ」
     兄達を目で追いながら一歩こちらに近づく。
    「あの、ソロ曲のことなんだが」
    「は?」
    「俺の両親は事故で亡くなったという話はしましたよね」
    「え?うん……」
    「その車を運転していたのが薬物中毒者だったんだ」
    「へ?」
    「それがきっかけで警察官になった」
    「う、うん」
    「それと警官になってから良くしてくれていた先輩が薬物によって亡くなった」
    「……へえ」
    「両親の死も先輩の死も乗り越えて過去の事だと整理がついた。だからリリックにして歌えるようになった」
    「うん」
    「自分の中で消化できている出来事の一つとして、決意として戒めとして今後も表現する」
     三郎は困ったような顔をしながら俺の話をずっと聞いている。やはりチームメイトに担がれたのだろうか。それでも知っていて欲しい事でもあるから話した事自体は良かったと思う。ただこのタイミングでなくても良かったのだが。
    「随分淡々と話すんだね」
    「はい?」
    「もっとギュッとなるくらい辛い話で踏み込んじゃダメなのかと思ってた」
    「そう、なんですか?」
    「歌にのせるほど忘れられないくらいの人のことだから」
    「まあ、忘れはしないですが今は前しか見えないので仲間やあなたを過去のようになくすことがないように強くありたいですね」
    「……あっそ。で、なんで今?リハ中なのに」
    「うちのチームメイトからのタレコミで私のソロの時あなたの表情がコロコロ変わって面白いと」
    「はあ⁉︎」
    「心配するな。お前が一番だ」
    「なんだそれ」
     視線を逸らし口を尖らせているのに頬が赤らんでくる。
    「困りましたね」
    「なに?」
    「キスしたくなりました」
    「…………むりですけど」
     耳まで真っ赤にして俯いている。その可愛らしい姿を目に焼き付けながらこの瞬間ときが無限に続けばと思いつつも時間は無情に過ぎるので現実に意識を引き戻す。
    「さて、うちのリハが始まりますね。本番楽しみにしていますよ。本番もBusters Brosは楽屋のモニターで拝見してますから」
    「わかった。じゃ」
     三郎は楽屋、俺はステージに続く方へ。
     俺はいつも通りダルいリハーサルへ向かう。
     
     
     本番の三郎のソロはカメラに対する圧が凄かった。
    「チビ助のソロ、迫力すごくねえか」
    「さあ。葬りたい相手がいるんじゃないですか」
    「うむ。いい軍人になれるな」
      
     目が本気で殺る目なんだよな
     
     左馬刻と理鶯の予想が的中していたと確信に変わった。
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