ヴクブさんルート※ヴクブさん、割と面倒見いいと思う。私観です。
※人称や口調等怪しい
※書きながら聴いていたのは 6600万年の夢
チチェン・イツァーまでふっ飛ばされたコウモリ。
隠れる場所を探すうち、ヴクブさんと鉢合わせる。
「! コイツは……死神のところのコウモリではないか!! 何故ここに…!?」
闘士ディノスを呼ぼうとして、はたと考え込む。脳内シミュレーション。
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闘士を呼ぶ→外に叩き出させる
→でも途中で潰すかもしれない(アイツら割とガサツだからな)
→死神に街ごと報復される→私死亡(逃げ切れるはずないだろうあんな怪物から)
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何回か考えても同じ結果。コウモリは動くに動けず固まっている。少しして深々とため息を吐くヴクブさん。
「……仕方ない。これは街のため、引いては私のためだ。すぐに叩き出してやるから勘違いするなよ、勝手に動き回らず黙っていろ、いいな!」
そう言って返事も待たずにコウモリを掴み、服の中に入れる。
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さっさと外に放り出そうと街の入り口へ向かっていたら、街中が騒がしい。サッカのある日とタイミングが重なった。
ミクトランの終わりが近いこともあり、それとはあまり関係なく単にはしゃいでいることもあり、各地から訪れたディノスたちでいつもよりだいぶ賑わうチチェン・イツァー。大通りの露店も繁盛している。貨幣ないけど。
コウモリを外に出す間もなく、ディノスたちの整理、サッカの準備、オセロトルの動向共有、ククルカンが起こした突風の後片付けなど、色々と雑事に追われるヴクブさん。
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そうこうしていると懐から聴こえるか細い鳴き声。
こっそり物陰に行って覗き込むと、コウモリがお腹を空かせている模様。ちいさい身体で長い距離を吹っ飛ばされてきたので疲れてしまった。
「えぇい、手のかかる! 飢えさせたなどと言いがかりをつけられるのは御免だからな! まさか血以外飲めないとは言うなよ!」
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舌打ちをした後、露店の果物を渡す。コウモリを気にかけつつ仕事再開。周りを頼るのが苦手なもんだから実質一人でやっている。
「あぁもう! 何故こうも面倒なことは重なるのだ!!」
コウモリのことは周りにバレてないつもりでカリカリしている。
恐竜王は笑って眺めてる、うっすらバレてます。ディノスたちはヴクブさんがカリカリしているから近寄り難くて気付いていない。
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ククルんの風に巻き込まれて吹っ飛ばされてきたと察した後は態度が少し丸くなる。多分ヴクブさんも巻き込まれたことがある。
「……ふん、もう少し落ち難い場所にいろ。落ちてはぐれて踏み潰されたら私が困るのだ」
ポケット(あるのか?)に入れてもらい果物を食べるコウモリ。だいぶ寛ぎ始めた。図太い。
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なんのかんので面倒を見つつ、気付けば夕方になっていた。
サッカの試合は終わり街を去っていくディノスもいるが、闘技場や街中を使って練習するディノスが目立つ。その様子を祭壇の頂上からひとり見下ろして、これは明日まで馬鹿騒ぎだなまた片付けることが増える、とため息をつくヴクブさん。
そこに背後からかけられる聴き慣れない声。
「おい」
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おいとはなんだ、おいとは。私は神官ヴクブだぞ馬鹿にするな、とイラつきながら振り返ると、そこには痺れを切らして迎えにきたソッソ。鎌も杖も携えていない。
「オレのものを返してもらおうか」
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コウモリの位置は把握できていたけど、勢い任せに突っ込んだら普段より多いディノスたちが逃げ回る際に潰されるかもしれないため、安全優先で様子を見ていた。
ヴクブさんだけになったので気配遮断をしてきた。
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叫び声を上げかけるヴクブさん、ソッソが眼前に突き出してきた爪の鋭さと気迫に息を呑んで声が出ない。
「叫びたくば叫ぶがいい。この爪がオマエの喉を裂くより速ければ、末期の悲鳴程度は叶おう。
その手で差し出させるも死体から探し出すも、オレには大差の無いことだ。カマソッソは無駄を嫌う、悩む時間は大して無いものと知れ」
引きつった顔と小声で慌てて返事をするヴクブさん。
「か、かかかか、返す、返す返す返す! む、むしろ私はガサツなデカブツ連中から保護してやっていたのだが!? ヒィッ! に、睨むな返すから!」
震える手で傷つけないようにだけ注意しつつ、コウモリを返す。
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渡されたコウモリの身体を検めるソッソ。怪我も何もなく、なんだか楽しそう。もらった果物は美味しかった模様。
その様子に少し呆れつつ雰囲気が和らぐソッソ。しかめっ面は保ったまま、ヴクブさんへ話しかける。
「保護していたという弁は苦し紛れの虚言ではないようだな。ならば、世話になった分程度の礼はせねばなるまい。何を望む、ディノスの神官よ」
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何を望むって今すぐここからいなくなってほしい以外にあるか?とは思いつつ、そんなこと口に出せないヴクブさん。
すぐに片付きそうで後々面倒にならなさそうな加減のものはないかとぐるぐる考え込んでいると、ふと視線がソッソとコウモリの翼で止まる。
幼い頃から怯え恐れてきた、死の翼。少し沈黙したのち、ぽつりと口を開く。
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「オマエのように飛ぶにはどうしたらいい」
少し怪訝そうに目を細めながらも黙って先を促すソッソ。
「私は翼竜だ。ディノスの中ではお世辞にも数が多いとは言えない。両親以外に飛ぶものなどわずかしか見ていない、それはいい。
しかしその誰もが随分のんびりと滑空するばかり。時には寝ぼけたまま木々に突っ込むことすらあった。精彩に欠けるとは思わんか」
「……疑問を呈そう、ディノスの神官よ。鈍間であろうと居眠りをしようと、それで障りが出るようなオマエたちではあるまい。
鋭さも速さもオマエたちには無用のもの。何が不満だ」
「あぁ、私とて困っているわけではない。不満というほどでもない。ただ……その………」
言い淀むヴクブさんに、少し怖い顔をして爪をちらつかせて凄むソッソ。
「歯切れが悪いな。カマソッソははっきりとした物言いを好む。オマエから始めた話だ、続きを語りたくさせてやってもいいのだぞ」
少し興味が出てきたみたいです。
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「ひぃぃっ! い、今は私が礼をもらう流れだったではないか!? 何故凄まれなくてはならんのだ!?
………えぇい!! 鋭く速く飛ぶ憧れくらい、私にだってある!! こんなにも大きな翼があるのだぞ!? 一度くらい稲妻のように飛んでみたいと思って何が悪い!!
そ、そうだ! オマエより勇ましく精悍に飛べたならば、誰もが私を一番に優秀なディノスと認めるだろう! そのためだ!! そのためだからな!!」
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きょとんとしてから小さく吹き出し、声を抑えて笑い出すソッソ。コウモリも楽しそう。その様子に早口でまくし立てるヴクブさん。
「わ、笑ったな!? これだからできる奴は嫌なんだ!! 最初からできて当たり前のように小馬鹿にした態度ばかり、できない奴の苦労は知りもしない!! 誰もがオマエのように優秀だと思うなよ!! いつもスカした顔ばかりで挙句の果ては勝手に立ち去る!! なんなんだ!!」
混乱や羞恥で何を言ってるか解らなくなるヴクブさん。多分それを言いたかった相手はテペウさんだと思う。
街のディノスたちは相変わらずサッカの練習や試合の感想で、祭壇には目もくれず気付いていない。闘技場で練習試合が始まった模様、盛り上がる声が聴こえる。
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肩を震わせて笑っていたソッソ、少し落ち着いてヴクブさんに向き直る。だいぶ雰囲気が柔らかくなっているが、ヴクブさんは気付いていない。
笑い混じりの声で話し始める。
「いや。いやいや違う、否定しよう。これは嘲笑ではないぞ、ディノスの神官よ」
ひとつ訊くが、途中からオレの話ではなくなっていないか? そう言いながら、嘲笑でないなら何なのかは答えないまま続けるソッソ。
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「愉快、予想しえなかった愉快。蔑むでなくオマエたちに笑わせられる日が来ようとは。
しかし生憎だな。オレとオマエでは翼どころか身体の目的(つくり)が違う。オレの飛び方は参考になるまいよ」
「……………ならばいい……元をただせば太陽の教え(ククルカン)がかけた迷惑だ。礼も何も無い。早く帰ってくれ……」
滅茶苦茶しょんぼりしているヴクブさん。混乱や口走った内容や、やっちまった自分に落ち込んでいる。まだ笑んだままで続けるソッソ。
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「そうさせてもらおう。だが、このまま何も無しとあっては王の沽券に関わる。この都でそのような不調法、些かならずバツが悪い。
故にそうさな、愚神風に言うならばサービスの一つくらいはしてもよい。何を学ぶかはオマエ次第だ。凡百のディノスのように、背を見せてくれるなよ」
「??」
いきなり何を言い出したのかと怪訝そうなヴクブさんに、ニィィと歯を見せて笑みを深めるソッソ。いたずら小僧のような笑み。
「同じ空をゆく者への礼代わりだ。しかとその目に焼き付けよ、翼持つ変わり者よ」
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言うが早いか気配遮断をやめ、コウモリを連れて目の前で勢いよく真上へ飛び立つソッソ。風圧で頂上付近に飾られた幕がバタバタと音を立てて一斉にはためき、祭壇近くの露店と草木も風で揺れるが、羽音自体はほとんどしない。しかしさすがに何かがおかしいと祭壇に目を向け始めるディノスたち。
一気にチチェン・イツァーを一望できる高さまで上昇し悠然と街を見渡し、気付き出したディノスたちを睥睨してから、フフンと笑うソッソ。
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「は、はは、ははははははは!!!! 愚鈍、相も変わらず愚鈍!! 今になって気付くとは!! 強さが故の間抜け面、一時の遊興とするにも些か食傷!!
だかしかし今は許そう、蜥蜴ども!! カマソッソの機嫌を変えた者へ感謝するがいい!! さぁ恐れ怯えよ!! 恐怖の刻だ!!」
咆哮し、チチェン・イツァーへ急降下。
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当然ながら大パニックになるディノスたちの叫びをBGMに、接近と離脱を繰り返す曲芸飛行で夕暮れの街をぐるりと二周、ビクトリーロール(エルロンロール)のような回転も挟んでいく。首元に収まったコウモリは楽しそうにしている。
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サッカ練習を観に来ていた恐竜王、闘技場の玉座から楽しそうに見上げている。周りのディノスが物陰に隠れるよう言うのも聴かず、ボサボサになる髪もそのままに、ソッソを見て口笛を吹く。
実はククルんも離れた場所から見ているけど、害意は感じられないため無干渉。随分騒がしくしているけどこれも「楽しい」の一種でしょうか、と首を傾げていた頃。
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ほとんどのディノスが逃げ惑うなか、自由自在に飛ぶ姿から目を逸らせないヴクブさん。口を半開きにして頂上の端まで駆け寄り、結晶が邪魔にならない場所から見つめている。
ソッソ、勢いを落とさないまま最後にヴクブさんの目の前まで接近。すれ違う間際、得意げな顔でチラッと見てから去っていく。コウモリは挨拶するように手を振っていた。
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火の消えた燭台や飾り幕が転がって吹っ飛んで、片付けることがまた増えた祭壇の頂上。
死の翼に恐れながら目を輝かせていた子どもの頃と、同じ顔をしているヴクブさん。
そんな一日の話。
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つまりヴクブさん、ソッソからファンサをもらった。いいなぁ!!いいなぁ!!私も欲しい!!
実際本編を見ているとポジティブな交流は期待薄だと思うけど、まぁ二次なので許してほしい。見たいんじゃよ変わり者同士のこういう交流。
イスタウキの巨大ゴースト(汎人類史の悪神カマソッツ?)はアサシンだし、ソッソもワクチャンの後ろをついてきたし、気配遮断適性持ち、ということでいく。
鎌と杖を置いてきた(具現化させてなかった?どんな仕組みだ)のは大き過ぎて潜入に不向きという判断だと思うけど、ソッソ自身が大きいんだよな。
ヴクブさんが脳内でペラペラ喋り出すからびっくりした。動かし易い、さては茨木と似たタイプだな?
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最後におまけ↓
最後の一日。
ORTとの戦支度を進める最後のディノスたち。銃器の改造、動きや意思疎通のやり方など、なんだかサッカの試合の日のように賑わう、荒れ果てたチチェン・イツァー。
その様子に目を細めながら、ヴクブさんへ声をかける恐竜王。
「そういやヴクブ、お前あのときのアイツみたいに飛べるようになったか?」
「ふん、最後まで発破をかける。大きいばかりの翼でもこっそり練習していたんです。……憧れには届かずとも、意地くらいは見せてやりますよ」
「ふーん、そうか」
言いながら、慣れたようにヴクブさんの背に乗る恐竜王。
「なんですか、ニヤニヤと笑って気持ちが悪いな」
「いいや、今更なことを思っただけだ」
無機質に近づいてくるORTの円盤。
大平原へ駆け出すディノスたち。
滅びはもう目の前。
何も変わらない、明日に続くことはない。だから好きに走り出せる、最後の一日。
「やっぱ俺、おまえたちの王でよかったわ、ってさ」
そんな会話もあったかもしれない。