いつかの未来、ふたりの巣のなかで(サンプル)ラプソディレーベルに所属して数年が経って、俺たち兄弟は実家を出て二人で住むようになっていた。
父さんと母さんは寂しがっていたけれど、俺たちの音楽活動の為に快く送り出してくれた。
といっても、実家も都内だから電車で数十分の距離だし、定期的に帰ってはいるけれど。
♢
今度のライブで共演する相手との飲み会を終えて帰宅すると、時刻は既に0時を回っていた。
「ただいま〜」
銀路からの返事は無い。既に寝ているか、それとも部屋に篭ってるのだろうか。
静かな家の中を進んで、銀路の部屋のドアノブに手をかける。
そのままドアを開けると、案の定、銀路は作業机に突っ伏して頭を抱えていた。ヘッドホンは着けていないが、寝ているわけでは無さそうだ。
「ぎーんじ!」
「うわっ!」
俺が声を掛けると、銀路は飛び上がって驚いた。
「新曲、上手くいってないのか?」
「……」
よほど作曲に行き詰まっているんだろう。銀路の表情はかなり苛ついているように見える。
「銀路……大丈夫か?」
銀路はぼうっとした表情で俺を見上げる。
随分と疲れているのか、ユニットを結成した高校生のときよりも伸びた髪はボサボサに乱れていた。
「無理しちゃだめだぞ〜。ほら、もう夜遅いし寝よう、な?」
銀路の頭を軽く撫でてから、手を引いて椅子から立たせる。
俺はそのまま銀路をベッドに連れて行こうとした、けれど。
……