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    pass➡️すっげえLOVE bomberの誕生日 ほとんどラギぶり

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    ラギぶりの第一話プロトタイプhttps://www.pixiv.net/artworks/98987706
    ⬆️大体これの内容

    絶対にラギ〜くんに抱かれたい 所謂、合コンというものに参加をするのはもうこれで何度目だろうか。年相応に回数だけはこなしてきたが、いつまでも慣れることのないその集まりは酒が入ることによって、もはや彼氏彼女を作るという目的を忘れた社会への愚痴大会と化している。やれ上司が、やれ新卒が、老後資金が親がと尽きることのない話題の変化についていけず、一歩引いたところでちびちびと梅酒を啜ってたまに頷いていると、これが何故か標的にされてしまうのが世の常なのだ。
    「全然飲んでなくない?イッキコールでもするぅ?」
    「勘弁してよお…」
    「これノルマねーっ」
     すっかり出来上がった専門時代の友人は、楽しそうに目の前にモスコミュールが置いた。苦手な炭酸にとけたウォッカはこの世で一番喉に優しくない液体だった。場にいる以上、雰囲気を壊すのは本意ではない。早めに飲みきるに限ると一気に煽ればオーディエンスは湧く。おっ景気いいじゃーん!と野次が飛び、手をつけないくせにオーダーされた緑茶ハイを手渡される。こうなりゃヤケだと、もう美味しいか美味しくないかなど考える間もなくアルコールを胃に掻っ込めば、当然、催す吐き気。なけなしのプライドがその場での体裁を取り繕うと、個室を出た瞬間に胃の内容物がせり上がる感覚を覚え、案内板を頼りにトイレへと急いだ。途中、壁にぶつかりながらもたどり着いた便器に鍵を閉める余裕もなく吐瀉物をぶちまけると、どっと疲労感が押し寄せてきた。だから嫌だったんだ。アルコールに強いわけじゃないし、人が多いのも得意じゃない。久しぶりに友人に会えるならと思った私が馬鹿だった。帰りたい。あの空間に、戻りたくない。
    居酒屋特有の狭い廊下の壁際にしゃがみ込み、こめかみを壁に押し付けると冷たさが冷静さを取り戻してくれた。それでもアルコールに侵された身体は言うことを聞いてはくれないので、立ち上がろうにも眩む視界が足腰を立たなくし、生まれたての小鹿のようにヘナヘナと床に逆戻りした時。目の前に黒いゴム靴が現れた。この居酒屋の店員だ。トイレ前の狭い廊下でしゃがみ込んでいれば、それも当然だろう。店員は「あのぉ〜」と切り出す。
    「お客さん、立てるッスか?まだ吐きそう?」
    声のトーンは遠慮のないものだが、かける言葉は存外優しく、こちらの意を伝えるには最適な存在だった。
    「きもちわるい、です。戻りたくない…。」
    そう告げたつもりだったが、自身の口から出た言葉は明らかに呂律が回っておらず、やたら"ら行"を含んだ物言いになってしまった。それでも店員は慣れているのか、「あー、無理やり呑まされたんッスねえ。お水飲んだ?」と背中をさすってくれる。水、そういえば飲んでないかも。意思を伝えるために首を振ると、回る視界に更に気持ち悪さを増す。
    「うーん、んん〜〜……じゃあちょっと来てくださいッス。今満席だからバックで少しお水飲も」
     そう言って私を立ち上がらせると、口を押さえていなかった方の左手を掴んで歩き出した。ふと、店員に自分にはない尻尾が生えていることに気づく。ズボンのお尻から覗く短い尻尾が揺れるたびにチャックに毛が挟まったら痛そうだな〜とか、触ったら気持ちいいのかな〜とか、どうでもいいことを考えた。顔は、まだ見ていない。


    「はい、これ飲んで。ダメッスよ〜ちゃんとお水とらないと」
     通されたバックルームはお世辞にも綺麗とは言えない。靴箱には、どう考えても多すぎるゴム靴たちがみっちりこれでもかと詰め込まれている。防犯なんて関係ないと言うように床にバッグが投げ捨てられ、その上には洋服が適当に畳まれてちょこんと乗っていた。部屋の端に置かれていた丸椅子を持ってきてくれたが、それに腕を枕にして乗せるという、本来の使い方とは異なる形で、楽な体勢をとる。
    「ありがとうございます…」
    そう言った"つもり"の礼に、店員は「いーえ」
    と軽く答えた。視線を上げる気にはなれず、手元ばかり見ていると、「部屋、覚えてます?オレが言って荷物持ってきましょうか?」と急に覗き込まれ、視界に入り込んだ彼の顔に吃驚して水が気管に入って咳き込む。また背中をさすってくれたがそれどころではない。むしろやめてほしい。何故なら、この店員の顔が、信じられないほどタイプだったからだ。
    ブルーグレーの大きな瞳はクリクリとしていて、口元には鋭い八重歯が覗き、赤々とした舌が収納されている。唇はツンととがっていて、見るものを惹きつけるのだろう。愛らしさと雄々しさが絶妙なバランスで小さな顔の上に乗っていて、人好きのする顔だ。先程お尻から尻尾が出ていたことを考えると、獣人属なのだろうか。頭に巻いたバンダナの下に隠れていると思われる耳が、苦しげにその存在を主張していた。

     一目惚れだった。
    「もしも〜し?オネーサン?」
     意識すると声もかわいい。オネーサン呼びにも、グッときた。震えそうになる声を何とか振り絞り「桔梗の間」とだけ答えると、彼は「リョーカイっス」と短く返事をして立ち上がった。
    かっこいい。かっこいい。だいてほしい。かわいい。すき。すき。すき。だいすき。抱いてほしい。もうそれだけが頭を占めて、他のことは何も考えられない。シンプルな答えを出した時点で、彼が戻ってきた時に行うことは既に決まっていた。連絡先を聞かなければ。だって私は、合コンにきていたのだから。



    「オネーサン?荷物と上着、これであってますか?お金は立て替えといてって言っといたから、もしかしたら後から請求されちゃうかもしんないッスけど」
     ドアノブを回して扉からひょっこりと顔を覗かせた彼は、私の荷物を見せるように持ち上げた。
    「あってます。ありがとう…」
    荷物を受け取ると店員は「いや〜オレもサボれてラッキーだったんで。シシッ」と悪戯っぽく笑う。笑い方かわいい。だいすき。抱いてほしい。
    「じゃ、今からタクシー呼ぶんでもう少し休んでてください。あ、荷物は盗んじゃダメッスよ〜」
    そう言ってスマホを取り出したので、焦って声がでる。「あの…」
    「ん?」
    「抱いて、ください」



     口走ってしまった台詞は居酒屋のバックルームの、薄黄ばんだ壁に吸い込まれていった。後悔しても時すでに遅く、目の前の彼はスマホを触る手を止めて私を凝視した。は、恥ずかしい。だって、こっちは嘔吐の後で、化粧も絶対崩れてる。少しでもマシに見えればと前髪を寄せてみたりして……向こうが何かを口にする前にそれを遮らなければいけない気になった。
    「あの!あの〜…えっと…」
    「………」
    「だから……その……」
    「…ああ!酔っぱらってるんッスもんねえ〜誰かと間違えちゃった?」
    「え?」
    「ダメっスよ〜オネーサン。男に急に抱いてほしいとか言っちゃあ…」
     間違えてない。間違えてなんかいないのに。抱いてほしいなんて、今まで考えたこともなかった。何か本能的に、彼のことを手放さないための手段として抱かれないといけない気になったのだ。と色々と言い訳をしながらも、結局はただ抱かれたいのが本音である。気まずくなった空気に、下を向いてしまいそうになっていると、急にドアが開いた。

    「ラギー!もう上がりの時間だろ。客一気に帰ったし上がっていーってよ」
    「マジっスか?まかないある?」
    「今日はどんぶり作ってたぞ」
    「へへっやり〜」

     何事もなかったかの様に続く会話に、涙が滲んできた。確かに突拍子もなかったけど………。もうすっかりうな垂れてしまい、この後は何と喋ればいいのかと思案するが、いい考えは浮かばない。こっそりついてく?それじゃストーカーだ。通報されるに決まっている。もう、完全に詰んだ。なんであんなこと言っちゃったんだろう。連絡先教えてくださいとか言えばよかったのに。じわじわと堪えきれなくなってきた涙がパイプ椅子のウレタンに弾かれた時、後から来た店員が「お姉さん、どうしたの!?」と私の様子に気付いだところで、何故だかわからないが更に涙が溢れる。

    「抱いてほしいの…」
    「…え!?俺ェ!?」
    「いや、ちょっ……」
    「そこの男の子に!抱いてほしいんだってばぁ〜…!」
    「ちょっ…まって!!オネーサン!そーゆうこと言うのまずいってば!」
    「こいつ!?ラギーに!?え、マジで!?」

     一度口に出したら、堰を切る様に止まらなくなってしまった。私は魔法士じゃないから、時間を戻すことなんてできない。記憶を消してやり直すことだって、できない。それならば、せめて、記憶に無理やりにでも残ってやりたい。泣きながら抱いてくださいって縋ってきた女がいたって。

    「何でもするからぁ〜…っ」
    「ぎゃははは!ふひ、くくっ…!いや、もう抱いてあげればいーじゃん!別にお前が損することなんもないんだからさァ!」
    「そういう問題じゃなくて…!………っ〜〜〜〜もう!!とりあえずウチ来ていいッスから!一回黙ってもらえます?!お前もいつまでも笑ってんじゃねえよ!」
    「ぎゃははははは!!」

     後から来た店員の頭をペチッとはたいた彼は、「ちょっとまかない貰ってくるからここいてくださいッス…」と疲れたように部屋から出ていくと、残った男は「お姉さん良かったね!」と私の肩を叩いてまた笑うと、着替えを持って奥のカーテンを閉めた。え、マジでオッケーもらった?抱いてもらえる?ラギーくん(と呼ばせて頂く)が戻ってくるまで、「よくこういう事すんの!?」「ラギーはめちゃくちゃケチ!でもめっちゃいい学校行ってんだよね〜」「つーかあいつ彼女いないくせに硬派ぶりすぎじゃね!?」と延々話しかけてくれたが嬉しさと恥ずかしさで苦しみ悶え、相槌を打つだけになってしまったのだった。


     十分程経った頃だろうか。白いスチロール容器の入ったビニールを二つ持ったラギーくんがバックルームに戻ってきた。もう一人の店員は彼女と待ち合わせをしている、と着替えが終わってすぐに飛び出していった。嵐のようだ。彼には感謝してもしきれない。二人きりになると妙に緊張してしまい言葉が出てこなかったが、向こうから切り出してくれる。

    「……とりあえず、ウチ行きましょっか。言っとくけどマジで何もないッスからね」
    「え!?家入れてくれる…んです、か?」
    「あーあー敬語もいいッスから……。その代わり!ホテル代としてちょーっとサイフ、出してもらうッスからね?」
    「全然出す!いくら!?」
    「現金でもイイけどォ…まあ、とりあえず買い物したいッス」
    「あ、うん。コンビニでいいの?」
    「コンビニィ!?業務スーパーに決まってるっしょ!!…あ、この時間じゃ開いてねーか。他のスーパーも……チッコンビニでいいッス」

     業務スーパーって一般人でも入れるんだ、などと考えながら一番近くのコンビニに入ると、商品棚を眺めながら「くそっ卵高えし……これなら明日一緒に買い物行ったほうが…いや、やっぱ現金で…」とぶつぶつ呟きながら歩くラギーくんの後頭部に視線を向けた。人間にはない毛の生えた丸っこい耳がぴこぴこと動いている。かわいい。つむじが後ろの方にあるんだなあとか、髪の付け根は色濃いんだなあとか、ちょっと猫背気味なんだなあとか、発見の一つ一つが愛おしい。何も知らないから、何かを知れることが嬉しくてたまらない。久しくこんな感情を抱くことはなかったのに、中学生みたいに新鮮な恋心を出会ったばかりの彼に向けている。頭が沸騰し続けていて正常な判断ができない。もう、何も考えられないようにして欲しかった。煩悩を掻き消そうとしてラギーくんの側を離れるが、その隙にちゃっかり剃刀とコンドームを手に取ったので、どうやら私は煩悩とは切っても切れない関係らしい。
     結局、コンビニでは紙パックの飲料を3本と惣菜パンを買うだけで「本当にこれだけでいいの!?」と聞き返してしまったが、どうやら彼はコンビニでお金を使いたくないらしい。なるほど、ケチだ。かわいい。自分用に購入したホットのほうじ茶が喉を通るたびに酔いが覚めていき、代わりに肌寒さを思い出す。十一月だというのにパーカー1枚で歩く彼もどうやら寒さは同じ様で、短い尻尾はお尻に巻きついて離れない。獣人用のパンツは穴が開いているというが……と、臀部を凝視してしまったところで「オネーサン」と声をかけられて劣情を抱いていたのがバレたのかと焦り、返事が裏返る。

    「へぇっ!?」
    「シシシッなんスかァ、その声!ほら、ウチ着きましたよ。上がってくんでしょ?」
    「え、あ、ほんとにいいの……?」
    「しゃーないっしょ。こんな時間に酔っ払いの女性1人放り出すわけにもいかないッスからねえ。貢物も頂いちゃってますし……ほら早く!」

     自分がお願いした事なのに、押しに弱いんじゃないかと心配になった。しゃーないからって、こんな……こんな、見知らぬ女を入れて大丈夫なのだろうか。本当に、私の言えた義理ではないのだが。
     三階建てアパートの階段を先に登り始めた彼の背を、小走りで追いかける。二階の左奥がラギーくんのお城らしい。(学生なのに普通のアパートに住んでることに疑問を感じたが、その疑問は後に最悪の形で解消されることになる。)ラギーくんはポケットから鍵を取り出すと、ガチャリと扉を開けて「ただいまァ〜」と暗闇に間延びした声をかけた。私もそれに倣い、お邪魔します、と小さく呟くと「はい、いらっしゃい」なんて笑ってるから、私はまた彼に恋をする。
     部屋の中は想像よりも片付いていた。物がないということもあるが、なんなら私の部屋よりよっぽど綺麗だ。ベッドと棚とテーブルがあるくらい。棚の上には写真立てと豚の貯金箱が置かれていた。そして、部屋に入った瞬間から、何かよくわからないが"匂い"が気になる。臭いとかではないのだが、とにかく、こう、ドキドキするのだ。本当に私はどうしてしまったのだろうか。手のひらは湿り、喉は乾き、お腹の奥底が疼く。こんな感覚は、初めてのことだった。
    「ソファとかないんで、ベッドにどーぞ」
    「この状態でベッドに!?」
    「何言ってんッスか?」
    彼はベッドの下に置かれたテーブルに腰掛け、私と同じ目線で話し始める。


    「…さぁて。……オレ、彼女とかいたことないし、初対面の人に抱いて!なんて言われたのも初めてなんで、どうしようかな〜と思ったんスけど……」
    「え、はい」
    「う〜〜〜ん、部屋まで入れといてなんだけど、オレ、あんたとセックスはできないッス」

    うん。うん?…………え!?ここにきて!?
    私がよほど面食らった顔をしたからだろうか。「なんスかあ、その顔!シシッ…オネーサンっておもしれ〜」と、少女漫画みたいなことを言いながら、ラギーくんはポツポツと話し始めた。



    ———オレ、スラム生まれなんッスよねぇ。育ちもずーっとスラムで、あ、今は魔法士養成学校の4年でインターンでこっち住んでんスけど。だからコイビトとかそーゆーの、あんま余裕なかったっつーか……ガキ共食わせてやったりすんので精一杯だったっつーか…。そんで、今はいいとこ就職してばーちゃんたちにたらふく飯食わせてやりたいんッスよね。っていうのが一つと……えーと…んんん〜〜……っいいや、もー全部言っちゃうッスわ。オレ、母親が出産で死んでんスよ。ハイエナの獣人って、結構多いんス。種族柄ってやつッスね。そーゆーことで、所詮子作りなわけだし、あんまいいイメージないんスよ。だからオネーサンとはセックスできないんッス。



     私が呆けている間、私を抱かない理由を、重たくならないように笑いながら話した。同情されるのが嫌なのだろう。スラムなんて、薔薇の王国から出たことのない私にはあまりにも遠い話でフィクションかとすら思った。が、当のラギーくんの瞳は真っ直ぐ私を見ていて、まるで私の心中を探っているかのようだった。私が次の言葉を紡ぐ前に「まっ今日は普通に泊まってっていいッスよ〜宿代ももらってるしね!」と立ち上がった彼は、すっかり放置されて袋ごと汗をかいたジュースとお茶を冷蔵庫に仕舞う。その背中と揺れる尻尾を眺めながら私は思ったのだ。

    「真摯でかっこいい。だいすき」と。

     見ず知らずの酔っ払いの戯言だと無視する権利が、彼にはあったのだ。勢いに任せてセックスするにしたって、合法だったのだ。でもラギーくんはしなかった。理由を述べて、断ってくれた。そんな男が存在するなんて、思ったこともなかった。顔がかわいくて、声もかわいくて、なのにこんなにかっこよくて、もうどうにかなりそうだ。いや、もうどうにかなってる。すき。すき。だいすき。絶対に、抱かれたい。



    「話してくれてありがとう。今日は諦めるね」
    「今日はぁ〜…?うん、まあわかってくれたんならよかったッス」

     平静を装いながら礼を言うと、つーかオネーサンも簡単に抱いてとか言うの、マジでダメだって!と嗜められる。

    「…私だって誰にでもやるわけじゃないもん」
    「ふう〜ん……?ほんとッスかあ〜?オネーサンふつーにかわいいし、誰にでもやってるっしょ!」
    「かわいい!?今かわいいって言った!?」
    「こわいこわいこわい。食い気味すぎぃ…」


    ずるい。ずるすぎる。そう言うこと言っちゃうんだ。へー…。

    「まっ、そーゆーわけだから!今日は何もないんで、とっとと風呂入って寝るッスよ!」と、ラギーくんは手を叩いて私を風呂に促す。スラム育ちだから〜なんて話を聞いた後でなんだか気が引けたが、気になるならマドルちょーだい!とイタズラっぽく笑われてふつうに財布を出してしまった。5000マドル握らせたところで「え、ええ〜…いや、もらえるなら…」と困惑していたが、寝巻きにラギーくんの服を貸してくれるらしいし、全然等価交換として成り立っている。


    〜よくない表現があったためカット〜


     部屋に戻ると、ベッドに腰掛けたラギーくんが「いやあ〜〜、すんませんっ!まさかトイレ行きたかったなんて思わなかったもんッスから…」と、ぺショッと下がった耳で謝ってきたので全てを許してしまう。「じゃあ抱いてよ〜…」などと冗談っぽく欲を溢すが、それとこれとは別ッス!とキッパリ断られた。頑なすぎる。

    「もーいいでしょ!今日は寝ますよ〜。……あ、お化けが出るかもしんないんでベッド、隣どおぞォ。シシシッ!」
    「…ありがとうございますぅ」
    「いーえー。おやすみなさぁい」

     完全に面白がっているが、据え膳を口まで運んでくれるなら遠慮なく口を開けるのがこの私だ。ありがたく隣に身体を収めさせて頂く。(あと普通に、お化けが怖かった。)壁側に寝たラギーくんは私に背を向けているので、私は彼の背中を眺め放題であった。先程抱きついたときも思ったが、小柄かと思いきや意外にもしっかりとした筋肉がついている。スポーツでもやっていたのだろうか。浮き上がる肩甲骨に、ムラムラする。っていうか、さっきの話だと童貞ってことだよね?絶対欲しい、ラギーくんの童貞…。いや、パンツ履いてないのに煩悩まみれはよくない。ズボンを汚したらまずいので他のことを考えないと…。
    そういえばさっき、魔法士養成学校と言っていた。そして、バイト仲間曰く名門校とも。RSAとか?いや、白い制服が似合わない。NRCだな。勝手に決めつけながらも明日聞いたらいいやと、山ほど浮かんでくる""ラギーくんに聞きたい100の質問""を更新していく。好きな人のことを考えるのって、こんなに最高なんだ。後ろ姿だけなのに大好き。こっち向いてほしい。すき。すき。すき————…。




    「……ねえ、オネーサン」
    「………」
    「……寝てる?…………オレみたいなハイエナに媚びても、いいことねえッスよ〜…馬鹿なんスか?」
    「…………」
    「…シシシッ、マヌケ面しちゃってまあ…」



     ごめん、起きてる。咄嗟に寝たフリしてしまった。そんなさあ……そんなこと言われたらさあ〜……。





     眠りから覚めると、まず最初に見知らぬ天井が目に入る。窓が開いているのか、たまに小鳥のさえずりが聞こえる、憎々しいほど清々しい朝だった。意識が鮮明になってきて、気づく。隣で寝ていたラギーくんがいない。勢いよく起き上がり机を見ると、ノートの切れ端と鍵が置いてあった。


    『昨晩はどーも。インターン行ってくるッス。鍵はポストに入れといて下さい。お元気で〜』

     なんと彼は、ここで私との関係を終わらせるつもりでいるのだ。昨日の夜中のことを考えると不思議ではない。初対面の私にあれだけフランクに話しかけてきて、その癖いくつもの予防線を張って自分の内側に入らせないようにしている。同情されたくなくて、反応を確かめる。無意識に卑屈なんだ。なんだかもう、たまらない気持ちになった。愛おしい。昨日の今日で芽生える感情の重さじゃない。ラギーくんのパーソナルスペースに、入りたい。彼が、だいすきだ。
    ここで終わりだなんて、そうは問屋がおろさない。生憎、今日は仕事も公休日である。化粧もそこそこに乾き切ってないパンツを履き、昨日と同じ服に着替え、鍵を引っ掴んだ私は家を出た。用事を、済ませるために。



    --------


    PM 18:20

    「………アンタ、何してるんッスか。」
    「ラギーくんのこと待ってたの。ちょっとお願いしたいことがあって。」

     部屋の前で待ってるのはキモいかと思ったので、アパートの前でおよそ1時間半ほど待った。(十分キモい。)完全に不審に思われているが、こっちは後に引けないのだから。ラギーくんの側まで歩み寄ると、私は鍵を"2つ"差し出して、頭を下げた。

    「一緒に住んでください!!!」
    「……ハアアアア!?」

    今日、私が何をしていたのかというと、そう。合鍵を作りに行っていたのだ。キモすぎる。でも、どうしてもラギーくんを諦めきれなかった。諦めたくなかった。抱いてもらえなくてもいいから、側に居させてほしい。(できれば抱いてほしい、あわよくば付き合いたい)我ながらやばい自覚はある。抑えなきゃいけないタガを外してこの行動をしているんだから。でも、勝算はあったのだ。だって………。


    「………ダメに決まってるでしょ。何考えてんッスか。」
    「ラギーくんのこと、好きになっちゃった。どうしても一緒にいたいから……だめ?」
    「ウチ事故物件だし、あんた昨日ビビりまくってたじゃん!」か
    「我慢するからーーっ!」
    「つーか…っ」
    「生活費出すよ。」
    「………………………………………………………………………………え。」
    「家賃も出す!!どう!?」
    「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………しゃ、しゃーねえから……………………………………………いいッスよ…?」






    ラギーくんは、ケチで、押しに弱いから!
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