7月の観覧車 雨が降っていた。7月なのにサァサァと降る雨は冷たくて、顔にあたる雨粒が大きくて。睫毛に跳ねた雫が頬を伝って流れて落ちる。冷たい。冷たくて冷たくて、ぶるりと背筋が冷える。
なんでこんなに冷たいんだ。なんでこんな雨の中で、オレは、
「すまねぇ、遅くなった…!」
聞き覚えのある声に万次郎は振り返る。そこにいたのは雨に濡れた黒いツナギ姿の堅だった。
「…ケンチン…?」
「なんだよ、オマエ、傘くらい差せよ」
言って堅は立ち尽くす万次郎の隣に駆け寄って、ホラ、と万次郎に向けて傘を広げてみせる。堅の手には傘は1本。その傘は万次郎のためのもので自分は雨に濡れていた。そのくせ大事そうに万次郎の頭の上に傘を差す。そんな男だった。
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