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    sweet10tngsten

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    第一回スタウィンワンドロライお題「TREAT」
    ハッピーハロウィン!のアフター
    食べ物ネタな笹唯です。

    treat食堂の隅にあるバスケットを開けると、中身は空だった。
    「お菓子ならもうないですよ」
    背後から朝日奈の声がした。
    「見たからわかる」
    数時間前まで、このバスケットにはお菓子がいっぱいに詰め込まれていた。
    市民ホールのハロウィンコンサートで演奏したあと、こどもたちに配るためのものだった。
    少しくらい余っていたらと淡い期待をしていたが、大勢の聴衆が居たし、お菓子の配布にも行列ができてとても好評だったし、すべて配りきったのだろうか?
    「ちょっとくらい、残ってたはずだけど」
    「笹塚さん、部屋に直行しちゃったじゃないですか。みんなの分はなかったから、ジャンケンして分けました」
    すぐに取り掛かりたい作業があったのだ。自ら勝負を放棄したことが悔やまれるが仕方がない。
    腹が鳴った。
    「お菓子じゃないんですけど、笹塚さんに食べてほしいものがあるんです」
    天の助け。
    座って待っていると、出てきたのは魚だった。
    「ニシンの塩漬けです」
    なんとなく意外だったが、食にこだわりはない。まずはひとくちかぶりつく。
    「……!」
    しょっぱい。
    ものすごく。
    他のことが何も考えられなくなるくらい、塩辛い。
    吐き出すわけにもいかず、なんとか飲み込む。
    「しょっぱすぎる」
    「これは笹塚さんのなので、最後まで食べてください。あとふた口で」
    謎の圧をかけられ、とにかく何か腹に入れたかったのでそのまま食べた。塩の塊みたいで口内がつらい。
    「浸透圧が上がる。体に悪い」
    出された水を一気飲みした。なんだか焼け石に水だ。またすぐ喉が渇くだろう。
    「今日はもう寝てください」
    朝日奈が言う。時計を見ると深夜だった。こんな時間だっただろうか?

    ……顔を上げると、自室の机に伏していた。
    夢か。
    けれどもやたら喉が渇く。どこからが夢だったのだろう。塩漬けニシンを食った時点で夢だった気もする。とにかく水が飲みたい。だが、それ以上に眠気が強い。
    笹塚は椅子から立ち上がるとベッドに横たわり、そのまま静かに眠りについた。

    「笹塚さん。水ですよ」
    いつか録音のために訪れた渓流のそばに座っている。
    ここの水は、そのまま飲めると聞いたことがある。
    朝日奈がなぜかコンサート衣装のようなドレスを着ていて、水瓶を差し出してきた。それを浴びるように飲み干し、まだ足りないと器を差し出せば、何度でも汲み手渡してくれる。

    ……うん。これはさすがに夢だな。笹塚はそれを自覚すると同時にベッドから起き上がった。
    食堂に行き、水を飲む。
    朝日奈がきたので、
    塩漬けニシンを俺に食わせたかどうかを尋ねてみた。
    「なんのことですか?」
    やはりそこから夢だったか。
    「夢にあんたが出てきて塩漬けニシンを食わされて、水をくれた。足りなくて、たくさん飲む羽目になった」
    「なんですかそれ」
    「知らん。酷い目にあった、口直しに何か作って」
    「えー?」

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    塩漬けニシンを三口で食べ静かに床につくと、将来の伴侶が夢に出てきて喉を潤すための水を渡してくれる
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    ハロウィン事典と称した動画でそんな豆知識が流れていたことを、二人とも知ることはなかった。










    (参考資料:図説 ハロウィーン百科事典 リサ・モートン)
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