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    桃花🍑

    @tmg_momohana

    マホロアかあいいネ!!

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    桃花🍑

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    口移しはいつものこと。マホがめんどくさいクソデカ友情持ってるの公式よな?
    ということで友愛に近いマホカビ風味のホラー小説です。
    #晩夏_魔術師とあの子は

    面白そうな企画だな〜と軽いノリで書いて分岐しようとしたら片方オチが思い付かずもったいない精神でくっつけました。
    主催者さんの用意されたストーリー設定2を参考にしています。

    #マホカビ
    Magolor/Kirby

    比良坂の家(マホカビ)どこかの星へ旅に行こう。
    マホロアとカービィ、どちらが先に言ったのか今では定かではない。二人は周りに出かけてくると簡単に言って、ローアで旅に出た。
    ワープスターでは行ったことのない星をマホロアがローアを操縦して巡っていく。カービィは青く輝いた星を見つけてそこに行こうと提案する。マホロアはそこに着陸準備をして、グリーングリーンズのような草原に船体をつけた。優しい草の匂いとポップスターと同じ青い空は遠い異星に来ても変わらないんだなと、どこか安心する。
    きょろきょろと辺りを見渡したカービィは、楽しそうにどんぐりを拾ってその発生源であろう木々を指す。

    「ねぇウィスピーウッズのところみたいだよ!」
    「フーン、森ネェ」
    「いってみよ」

    木々の隙間を抜けた途端、マホロアは身体が静電気に触れたかのような違和感を覚える。だがほんの一瞬のことでその間にもカービィは奥へと走って行ってしまう。
    気のせいだと思い、慌てて後を追っていったのだった。
    現地の言葉で【立入禁止】と書かれた古ぼけた標識には二人とも気付くことはなかった。



    この木々はどこまで続いているのだろうか。カービィは果樹のなる木がないか探し走り回っている。マホロアは足の速いカービィを、ときにはマホロアストームを使って追いかけていく。デタラメに走るカービィを追ううちにどこから来たか分からず、気が付けば森の奥に迷い込んでしまった。ローアを呼ぼうにも、木々が邪魔で着陸できそうな場所がない。
    鬱蒼とした木々の合間から見る空は間もなく日が暮れようとしており、最後の光と言わんばかりにオレンジ色に染め上げている。数十分もしない内に、真っ暗になるだろう。
    どうしようと二人で進んでいるとカービィが声をあげた。

    「マホロア!なんかお家が見えるよ」
    「こんな奥にあるんダシ、もしかしたら家の住人ならこの森を抜ける道トカ知ってるかもしれないネ」
    「じゃあ行ってみよう!」

    カービィが見えたという家に歩いて近付いてみる。遠くからでは分からなかったが、少々古ぼけた外観の木で作られた──日本和風の屋敷のようだった。カービィはガラス戸を叩いてみる。しかし返事はない。
    とにかくあがってみようと、戸を手にしたが開かない。そういえば扉の割に同じようなものが二つ横に並んでいるのは何故だろうか。

    「カービィ、ホントに入るノ?」
    「家の人が道知ってるかもて言ってたのマホロアでしょ?」
    「ウ、マァ、そうなんだけどサ……」
    「あ、もしかして引くんじゃないのかな?あ、横に開けるんだったんだぁ」

    ドアノブがないからおかしいと思った、とカービィはカラカラと笑い家の中へと進んでいった。段差を飛び乗り、廊下を見る。どうやらカービィの家が何個も入りそうなほどの大きな家らしい。部屋がいくつか区切られているようで、紙でできた扉がいくつもある。
    振り返るとマホロアも家の中に入っており、いつの間に閉めたのかガラス戸はカービィが開ける前のように閉ざされていた。

    「よーし、探索しよう!」
    「ウ、ウン」

    手前の部屋から見ていこうと声をかける。金具でできた持ち手的に先程の玄関戸と同じだと学んだカービィは、慎重に横に押して開く。苦もなく新しい空間が広がり、丁寧に編み込まれたような藁の板がいくつも並んで一つの床になっている。他の部屋も同じように開けると、薄いマットレスは直に藁の板へ置かれており──畳の上に干したての敷布団と布団だろうか──ふかふかで柔らかそうだ。
    この上にダイブして眠ったらさぞかし気持ちいいのだろう。だがせめて何かしら食べ物を口に入れたいと考えて、マホロアに寝床を見つけたことを報告する。
    この部屋と案内したときのマホロアの表情は奇妙だった。目を丸く見開き息を飲んで、視線がすぐカービィへと向けられた。

    「どうしたの?」
    「……イヤ、ベツ二」

    珍しく歯切れの悪いマホロアの言葉にカービィは、ただ傾げる。次の部屋は数時間前までは人がいたんだろうと感じさせる普通の空間だった。これだけの大きさの家ならば、誰かしらいるはずだ。しかし住んでいた痕跡はあれど、人影すら見当たらない。それどころか人の気配すらない。
    次に開けたのは風呂場として機能しているだろう場所だ。木でできた浴槽はカービィとマホロアが二人で入っても余裕そうで広々としていた。オマケに湯気がたっていて風呂の準備は万端のようである。

    「お家の人どこいっちゃったんだろ?」
    「ヒトなんていなくて当然ジャナイ?」
    「そうかな?だってお風呂の準備されてて人いないのって変じゃない?」

    小さくマホロアが驚いている様子である。その意味が分からず、むしろいなくて当然という言葉すら真意が不明だ。最近のマホロアのウソは顔が笑っていることが多いから、恐らくウソついているわけではないとカービィは考えている。
    そのことがどのように、先ほどの言動と繋がるかはカービィには分からないけれど。

    「ネェ、カービィから見てコノ家はどう思ウ?」
    「ちょっと古いけど、埃っぽい感じもないし、暖炉とかあるのかな?暖かくて明るみのあるお家だと思うよ。人がいないのは変だけど」
    「ソウ……」

    変な質問だなと思いつつ答えると、それっきりマホロアは口を閉ざした。いつもの冗談やウソの類いではないことは分かる。しかしなにかを考えているのか、カービィとはぐれないよう手を繋いで、黙って後ろをついてきているだけだった。
    部屋を開けると足の短いテーブルには美味しそうな夕食が並んでいた。つやつやの白米に、こんがりいい焼き色の付いた魚、大皿に盛られた味のよく染みてそうな肉じゃが、きつね色に輝く丸いコロッケ、みずみずしく新鮮なレタスと細長く切られた人参と大根のサラダ、豆腐とわかめがたっぷりの味噌汁と、テーブルいっぱいに二人分の食事が用意されていたのだった。

    「すっごい!あ、みてみて!お茶菓子もある!」
    「ダメ!食べないデ!」

    聞いたことないほどの大きな声で、カービィが食べようとするのを阻止する。必死な様子すら感じるマホロアにカービィは目を点にして驚き、動きすら止めてしまった。

    「なんで?だってすっごい美味しそうだよ」
    「アッ、エット、他所サマのお家のモノ勝手に食べたらマズいと思うヨ」
    「そっかぁ。ちゃんと許可もらわないとだね。じゃあ森を抜ける道のついでに、ここのお菓子とか食べていいか聞こう!」

    それから俄然と探索に力が入ったのか、カービィは他の部屋へと歩を進める。しかし控えめに空腹を訴える音が聞こえてきた。カービィだ。マホロアは信じられないような目付きで見てくる。食いしん坊のカービィだから、と納得したのかローブを探って一本の携帯固形食を取り出した。
    「ハイ。これでも食ベテ」
    「マホロアの携帯食って美味しくないから、ギリギリまでいらないかな」
    「そんなにお腹ナラシテよくいうヨ」

    マホロアは携帯固形食をしまいこんで、再びカービィの手を繋ぐと、探索を再開することにした。



    マホロアは心の中で安堵する。吸い込みをされたら止められなかっただろう。

    『あっぶナ……』

    もしかしたら大丈夫かもしれない。あのウィスピーウッズをゲージごと吸い込んだこともある。カービィの腹は異次元と繋がっているという噂だ。だが聞いたことある話では【黄泉食いしたならば二度と現し世へ戻れぬ】というものがある。死者の国である黄泉で作られた何かを食べると、生者の自分たちの世界へ帰れなくなるという話だ。
    マホロアの専門は魔法科学である。全ての現象は魔術式と科学で証明できる。死んだらそれまでだし、生きているものに手出しはできない。だから今日までは幽霊だとか信じてもいなかったのだが、今はそうも言っていられない。

    『ボクとカービィの見ている景色がチガウ』

    カービィはここが立派な屋敷だと思っているようだ。しかしマホロアの目には荒れ果てた廃墟にしか見えない。
    最初におかしいと思ったのは、カービィが丁寧に戸をノックしていたが、ガラス戸は割れていたこと。次に明らかに穴が空いている箇所もカービィは平気でその上を歩く。マホロアは浮いているため支障はないが、そっと手を付いてみれば自分が見た通りの空虚があっただけだ。他にも風呂場は薄汚れてカビだらけであり、湯気どころか苔が生えてるレベルである。
    カービィが美味しそうと言っていた茶菓子だって、まるでヘドロ状の泥団子のようで、とてもじゃないが口に入れる気になれない。
    ところが、夕食だけは綺麗な見た目であった。カービィとしては至れり尽くせりもてなされていると感じただろうが、マホロアからすれば怪しさ満点の役満で食べるべきではないと判断したのだ。
    不審な点はもう一つあり、こんな廃墟ならいるであろう蜘蛛が見当たらないことだ。虫だとかはいない方がありがたいが、人の気配がない家屋に生物の一匹すらいないのは不自然である。

    『とりあえずカービィにボクの見えている景色のコト伝えたいケド。信じてもらえなかったらドウシヨウ』

    元々の出会いからウソで固めてしまった。今でもイタズラでウソをつくこともしている。虚言の魔術師と言われた自分の言うことを全て信じてくれるだろうか。

    『マァ、現状伝えてもどうにかスル手段がナイんだけどネ』

    魔力を集中してこの家屋に何かしらの痕跡がないか確かめた。しかし何も分からない。ただマホロアが寒気を感じて、カービィはむしろ暖かく人がいないだけの普通の家だという。
    何故二人の見ているものが違うのだろうか。

    『マサカ、カービィを狙ってイル?』

    赦さない。
    マホロアにとってカービィは、唯一無二の大切なトモダチだ。本来のトモダチという枠組みからは外れているかもしれないが、カービィだけは守りたいのだ。
    ここにある食べ物を食べてはダメと言ってからは、住人を見つけようと躍起になっている。手がかりがあるかもしれないし、部屋を見て回るのはいいがもう少しゆっくり見たいのが本音だ。
    半ば引きずられるようにして、全ての部屋を隅々まで見て回ったが、どうやら無人のようである。カービィはガッカリしていたがマホロアは分かりきっていたことだ。どう見たって人が住んでいるようには見えない。外観から分かっていたことだった。

    「マホロアどうする?」
    「イッタン、玄関に戻ロウ」

    マホロアが家の中に踏み入れた途端、静かに閉まったのだが、念のため戻って確認するのもいいだろう。幻を見ているカービィを逃がすはずがないから、無駄足になるだろうが。マホロアが玄関戸に手をかけるが、ビクリともしない。外れてほしかった予想が的中したのである。

    「開かナイカ」
    「えぇ?家の人が閉め忘れたことに気が付いて鍵かけちゃったのかな」
    「ソレなら内側にいるボクたちは鍵を解除すればいいだけダヨ。ケド鍵もナニもないヨ」

    もちろんマホロアは扉を横に押している。最初のカービィのように間違えているわけではない。出られなくなったということは、家に閉じ込めたい意思があるということだ。
    寝床まであったが、赤茶色い液体が飛び散っている寝具に、誰が好き好んで休みたいと思うだろうか。明らかにカービィのように普通の屋敷に見えていた生き物を食らってきた現場である。長居するのは危険だとマホロアの勘が告げていた。
    ならば多少強引でもここを出る必要がある。手段はいくつかあるが、最も確実な方法。マホロアはギュッと両手を握りしめてゆっくり開くと、カービィに向き直った。

    「カービィ、ボクのこと信じてくれル?」
    「きみがそういう顔しているなら、信じるよ」
    「アリガトウ」

    魔力を手のひらに込めて火を出す。それを目の前にかざすと小さな火の玉となり、カービィに投げた。

    「カービィ!この屋敷を燃やシテ!」
    「えぇ?!」

    驚いた声をあげたが、カービィは迷うことなくマホロアの火球を吸い込む。頭には炎を携えたファイアーカービィだ。

    「火ふきこうげき」

    勢いよく吹いた息は火をまとい、辺りを燃やしていく。マホロアも黙って見ているだけではなく、マホロアストームの風で炎を起こす。元々が木造だっただけに火の回りは早い。何かが焦げ付く嫌な臭いがしたが、気にしないようにして、屋敷を燃やしていく。
    しかしこのマホロアたちの攻撃を、黙って受けるほど、温和ではないらしい。つやつやの白米が茶碗ごとカービィの口へ飛んできた。

    「んぐぅ!」
    「カービィ?!」

    カービィの口に茶碗が放り込まれる。食べ物だから反射的に飲み込んだのだろう。
    カービィの身体が透けるようにして消えそうだ。やはりあの夕食は罠だった。彼岸で炊かれた食物は死者のための食事となり、このままではカービィが生きたまま死者の世界へと渡ることになってしまう。
    マホロアはローブから携帯食を掴み、口に放り込むとそのままカービィに口移しした。一か八か自分が作った此岸のものを食べさせることで、繋ぎ止めようとしたのだ。噛み砕いた味は無機質だ。マホロアは大して気にしていなかったが、カービィが嫌がった理由が分かり、もっと改良しようと心に決める。
    口の中のものがなくなった頃、ようやく離れるとカービィの身体は元に戻っていた。咄嗟の思い付きだったが、口移しでカービィの実体は安定しているようだ。

    「やっぱり、マホロアの携帯食は美味しくないね」
    「文句言うナラ、食べ物吐き出すクライしてヨネ」

    一度口に入れた食べ物をカービィが出すわけないと知りながらも、マホロアは静かに息を吐く。しっかりとした実体を持っていることを確かめるように、小さな桃色の手をマホロアは握りしめる。

    『コノ子を失わないで、ヨカッタ……』

    カービィの生存を噛みしめていたが、あれから攻撃はない。どうやら家に直接危害を加えなければ、大人しくしてくれる存在のようだ。夕食は飛んでこない。
    しかし自分たちが生き物である以上、食は切り離せない。つまりこのままでは、餓死するか家に喰われるかの二択になる。
    ならばいっそ、完膚なきまでに一瞬で破壊してしまおう。自分たちをターゲットにしたのが運のツキというやつだ。
    マホロアは再び魔力を込める。エネミーコーリングで究極兵器となるボンバーを呼び込むしかない。

    「カービィ!これでこの屋敷を遠慮なく破壊し尽くしてヨ!」
    「え、でもマホロアは」
    「リフバリア展開させるカラ!」

    呼び出したボンバーは戸惑っている。あれ単体の火力では足りない。カービィがコピーしてこの一帯を全て焼き尽くしてしまえば、恐らく出られるはずだ。
    ボンバーを吸い込んでカービィはクラッシュカービィになる。マホロアも合わせて魔力を込めて、リフバリアを展開させた。マホロア本来の力では一発通常攻撃を食らえば、一枚消費してしまう。耐えきれるか分からないが、ないよりかはマシだ。
    本来なら異空間バニッシュの方がいいのだろうが、この屋敷──森ごと異空間なのかもしれない──そんな場所で無闇に別異空間を展開させるのは危険と判断し、屈むようにして衝撃に備えた。
    力を溜めているのか、チカチカと鉄の王冠が光っている。そしてカービィの身体が浮きあがり、一気に放出された。

    「じごくのごうか!」

    遠慮なくカービィはクラッシュの強化版を放ってくれたようだ。マホロアは淡い星を象ったバリア越しにカービィの背中を見る。やけに大きく見えて頼もしいが、自分と同じ背丈しかない。
    それなのにあのとき、クラウンの力で巨大化したマホロアが宇宙の支配者となるのを止めるべく立ちはだかった。圧倒的な力の差があったとしても、諦めず助けようとさえしたのだ。

    『キミはいつもそうやってポップスターを、ひいては宇宙を守ってきたんだネ』

    リフバリアの一枚が割れた音がする。やけに静かに響いた後、全てがまっさらになっていた。

    「アー。ヤッパリカァ……」

    屋敷を焼き払うと周辺の森も消えていた。木々が残っている様子から、元はそう広くない林だったのだろう。辺りは暗いが、少し先にはローアの船体が見える。これならもう迷うことはない。
    焼き尽くしたとはいえ、この場に留まりたくないと思ったマホロアはカービィを急かして、少し早足で空色の船へと目指していく。

    「マホロア!どういうこと?!」
    「恐らくだけど、あの家は死者の家デ、ソノ住人にされかけたんダヨ」

    それからマホロアは自分が見ていた景色を話し始めた。話を聞いていく内にカービィの顔は青ざめていく。

    「マァ、カービィは単じ……純粋だからネ。素直に引っかかったのカモ」
    「じゃあぼくが家にあったご飯やお菓子食べようとしたの止めたのって」
    「旅したトコであぁいうトコロのゴハンは食べない方がイイと聞いたからダヨ。下手すると帰れなくなるかもしれないシ」

    カービィにも分かりやすく端折って説明してやれば、カービィが短い手を重ねて考え込んでいた。本人からすれば腕を組んでいるつもりなのだろう。

    「でもお茶菓子美味しそうだったんだよ。マホロアの手くらいあるカステラで生地が黄色くてふわふわだったんだ」
    「ヘドロ状の泥団子が?」
    「……さすがのぼくも泥団子は勘弁したいかもしれない」
    「デショ?ダケド夕食はボクから見ても本物だったし、何が起こるか分からナカッタ。だから踏みとどまってクレテ助かったヨ」

    カービィの腹なら毒程度なら支障はきたさないだろう。しかし万が一その話が本当なら、あのままカービィは屋敷の異空間に閉じ込められてしまっていたかもしれない。
    食べ物を前にしたカービィを止めることは不可能に近い。それこそカービィの目の前で、ポップスター侵略活動すると宣言するようなものだ。行動を起こす前にボコボコにされるだろう。

    「うーん、ぼくもなんとなく食べちゃダメと感じてたのかも。食べ物の匂いがしなかったし……」
    「いつも危機感あるならいいんダケド……」

    結局食べちゃったけど、とカービィは乾いた笑いを見せる。反撃されたからとはいえ、本当にカービィの身体が透けたときは焦った。手の届かないところにいかれては、きっと自分は平静ではいられない。
    ふとマホロアは、人の家を燃やそうとした自分になにも聞かず、驚きつつもすぐ行動してくれたカービィを不思議に思った。他の誰かだったら、絶対に理由を聞かれていただろう。

    「どうしてスグ信じてクレタノ?」
    「ぼく、マホロアがホントのコト言うときの顔知っているから」
    「さっきもイッテいたネ。ボクどんな顔してるノ?」
    「ないしょ!」

    花が綻ぶような笑顔を向けながら、カービィはペタリとその場に座り込む。

    「ねぇマホロア、ぼくお腹空いて動けないからおんぶして?」
    「しょうがないナァ」

    カービィの前でしゃがむようにして体勢を低くすると寄りかかるようにして、マホロアにおぶさってくる。いつかの旅とは違い、両手をカービィが落ちないように支えてやる。
    ゆっくりとローアへ向かいながら、カービィはふと浮かんだ疑問を口にする。それはマホロア自身も分からない質問だった。

    「どうしてマホロアには最初からお家の本当の姿が見えていたんだろ?」
    「ボクが魔法科学主義だったからカ、あるいは一度死にかけた身だからカ……ドッチだろうネ」

    カービィが息を飲む気配がする。クラウンマホロアを倒した後、クラウンによって吸い上げられたマホロアの魂の姿は巨悪なものに変貌した。マスタークラウンを巡る歴史の中で、クラウンが溜め込んでしまった負の感情と一体化し、もはや生還することすら諦めた。
    このまま意識を手放してしまおうと思ったとき、強烈な痛みがマホロアとクラウンを、再び別の存在とさせたのだ。

    「別二、キミに一度殺されかけたコトは気にしてないヨ。こうして生きているワケダシ」

    むしろ助けてくれた。マホロアはポツリと呟く。
    そうだ。カービィは出会ってから今まで、マホロアをトモダチであることを疑っていない。ホントのことを言うときの顔を知っているかららしいが、マホロアを信じて危機を脱した。もう真実を伝えられないと、怯える必要がないということだ。

    「ほーんと、キミってばオヒトヨシ」
    「それ、今と関係あるの?」

    後ろからムッとしたような声が聞こえてくる。見なくても騙されたと知ったときの、眉をしかめたような顔をしていることだろう。マホロアはカービィがしているであろう表情を想像して、目を細めて楽しそうに笑った。
    近くまで来ると、マホロアたちの帰還を待っていたようにローアの扉が開く。明るい船内にホッとする。そのままカービィを背負ったまま、食料のある部屋へと向かった。
    カービィの腹は合唱を始めそうだ。調理なんてしていられない。すぐ食べられるものをカービィへ次々に渡して手っ取り早く黙らせる。
    どこかの星でこういうのがあったなぁとマホロアは遠い目をして、次第に投げていた。

    「おいしかった〜!」
    「よかったネ」

    ローアに積んでいた食料の1/3を食べ終えたところで、カービィは満足したらしい。マホロアだけなら10日分はあった量が一瞬で消えた。

    「ねぇマホロア。また二人で旅しようね」
    「今度はメンドウごとないとイイナ」

    マホロアはカービィに似た色の果実の皮を剥き食べつつ答える。熟されて芳醇になった甘みが、口の中に広がり溶けていく。もう一つ口に放ってカービィへと口移しをした。不思議とさらに甘みが強くなったように感じられる。

    「なんで?ぼく元気になったよ?」
    「桃は魔除け効果アルらしいヨ」

    ベタベタになった手を洗い、マホロアは操縦室へと向かう。目的地をポップスターへと指定すればローアはゆっくりと空へと浮上し、一気に大気圏へと加速していったのだった。


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