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    _248861

    @_248861

    りりぴの自由帳
    SSはまほかく軸のスネ夢メイン
    悲恋ばっかり
    閲覧は自己責任で...( . .)"

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    りりぴが7年生になったら...の妄想
    まほかく設定準拠なので原作設定と相違アリ

    卒業私の「新・魔法史」魔法史の教科書に載っているセブルス・スネイプは、いつでも正岡子規よろしく、プイとそっぽを向いている。その顔はねっとりした髪で隠れ、表情がよく見えない。
    買ってもらって直ぐ、彼の周りを小さなハートマークで囲った時に、「オェー」という顔をして以降、機嫌を損ねてしまったのだろう。撫でてもつついても眉を顰めるばかりで、結局7年間、正面を向いて貰えなかった。

    卒業式を来週に控えた今日、手持ち無沙汰な私はスリザリン寮の端っこで、この「新・魔法史」を眺めていた。
    大して成績も良くないくせに、この教科書だけボロボロになっている。魔法薬学も好きだったけど、彼が使っていた教科書とは違うと知って、あまり読む気になれなかった。

    バサバサと大きな音がしたのでふと顔を上げると、部屋の反対側で、監督生のカサンドラが積み上がった教科書を点検している。
    そういえば、予備用として、教科書を寄付するなんて前に言ってたっけ。すっかり忘れていた。この教科書を見られたらすごくまずい。
    こっそり退散しようとした時、気づかれて呼び止められてしまった。

    「あら、随分汚い教科書ね。わたくしなら絶対使いたくないけど、一応頂いておくわ。」

    パチンと彼女の指が鳴り、あっという間に掠め取られた教科書のページが、パラパラと捲れていく。

    「それは!自分で持っておきたくて!返してっ」

    彼女の、端正な眉がつり上がった。

    「なんであなた、セブルス・スネイプの周りをハートマークなんかで囲ってるの?」

    彼女の取り巻きがクスクス笑った。
    見られた。知られてしまった。しかもこんな大勢に。

    「・・・肖像画相手に、殊勝なこと。スリザリンも落ちぶれたものね。」

    ずっと、隠してきたのに。誰にも知られないようにしてたのに...!
    みんなに見られている。笑われている。誰も助けてくれない...!
    足元が崩れ、心がバラバラになる音がした。
    私は教科書を取り返すことも忘れ、寮を飛び出した。

    夜、ひっそりベッドに戻ると、「お返しするわ。」とご丁寧なメモ付きの教科書が置いてあった。
    こんな時でも綺麗な彼女の字に苛立って、メモをくしゃくしゃに丸めて、インセンディオで燃やしてしまった。

    元々寮に馴染めていなかったうえに、この「事件」以降、ますます内弁慶になった私は、透明薬を飲んで城中をほっつき回るのがお決まりになった。


    卒業式の1日前。スラグ・クラブの「卒業おめでとうパーティー」に呼ばれた友人を見送り、また透明薬を飲んだ。城は粗方探検し終わっていたので、適当にぶらついていると、ガーゴイル像が見えた。
    私はいつの間にか、校長室の前にたどり着いていた。

    そこに彼がいた。と、風の噂で聞いた事があった。たしか首席のグリフィンドール生が見たらしい。
    O.W.L.ふくろう試験で変身術を落とし、マクゴナガルから認識されているのかも怪しい私では、そこに入るきっかけは掴めぬままだった。

    さっき大広間で、マクゴナガル校長が寮生に、「わっしょいこらしょいどっこらしょい」をせがまれ、やんやの喝采を受けていたのをちらと見た。部屋の主はいない。透明薬を飲んだ今なら、入れるかもしれない。
    辺りに誰もいないことを確認して、扉のノブに手をかける。



    果たして、扉は開いた。心臓の音がやけにうるさく、彼が近くにいることを知らせた。

    正面の壁に、ずらりと歴代校長の肖像画が並ぶ。

    一瞬で、見つけた。

    壁の上の方。木製の、丸い額縁の中に彼はいた。

    しかも、こちらを、見ている。

    侵入者を感知したのだろうか。透明マントの気配にも気づいちゃう人だしなあ。と、他人事のように感心する。
    久々に見た彼の正面の顔は、なんとなく凛々しく見えた。ひどく気恥しくなり、目を逸らしてしまう。

    もうすぐ、薬を飲んでから30分がたつ。他の額縁の主は、居眠りをしている。今が、彼と話す、最初で最後のチャンスかもしれない。

    「その時」タイムリミットが来たことは、彼が発した声でわかった。

    「ほう...随分とお粗末な出来の透明薬ですな。」

    初めて聞く彼の声は想像よりも低く甘く、私の耳に響いた。

    「スネイプ教授。」

    薬切れの副作用か。体の芯がやけにしっかりして、自分が、自分でない感じがした。
    好きなところは沢山あるのに、もし話す機会があったとしたら...なんて妄想して、どんな話をしようか、何回も考えたことがあるのに。本人を目の前にすると、何も言葉が出てこない。

    「好き、です。」

    やっと出てきたのは、何の変哲もないこの4文字だった。

    第二次魔法戦争あれ以来、こんな生徒ばかりだ。嘆かわしい。」

    フンと鼻を鳴らし、またそっぽを向かれてしまう。見慣れたその姿に安心する。それでも。

    「・・・最後に、こっち、見てくれませんか。」

    その顔を、瞳を、この目に焼き付けたかったのに、これで最後と思うと込み上げる涙で霞んで、ぼやけて見えなかった。
    大好きな彼にだけは、涙で汚れた私の顔なんて見せたくない。絶対見せるもんか。
    一礼して、校長室を去る。もう彼に会うことは無い。閉まりゆく扉の向こうから、静かなバリトンが聞こえた。

    「さっさと卒業してしまえ」




    夕食が終わり、寮や寝室に帰ろうとする生徒たちの波を遠目に、ふと考えた。
    きっと私は、まだ知らぬ誰かに恋をして、結婚して、老いて、この世を去るのだろう。彼を心の片隅において。
    彼もこの先ずっと、たくさんの、私のような「嘆かわしい」生徒の相手をしなければならない。
    「影の主人公」と持ち上げられ、その胸に秘めていた想いを全世界に公開され、知らない女に恋い焦がれられ、幾人もの想いを受けとらねばならない。彼の生前の性格を考えると、耐え難いことだろうと思う。
    それでも彼は、私の気持ちを馬鹿にしなかった。
    きっと彼も、同じだったから。

    「優しい人...。」

    溢れ出た呟きは、初夏の薄ら寒い夕闇に消えた。


    私はまだ、この気持ちから、卒業出来そうにない。




    「卒業」 end



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