菜の花を食べる話 素足で踏む濡れ縁はまだ氷のように冷たい。庭の片隅へと寄せた雪は温度のある朝日の中で少しずつその険しい稜線を緩やかにしている。鯉登は一度グーンと伸びをして、寝巻きの袂に手を突っ込んだまま庭へと降りた。
昨春にこの家で暮らし始め、夏には草が伸びるのを見て、秋には芋を掘り、冬は雪が覆うのを見た。ようやっと、もしくはあっという間に季節は一巡した。全くの平穏無事とは言えないにしろ、なんとか迎えた春だった。 金塊争奪戦後、何はなくとも、とりあえず身を置くために家を借りた。元は長く空き家になっていた借家だったが、月島が忙しい間を縫うようにして細々と手を入れたおかげで、住まうには申し分のない様子となった。だというのに、当の本人である月島はさっさと別の場所へと間借りを決めてきたという。
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