薄暗い廊下を歩きながら、王子はながながため息をついた。二組の長靴が、石の床に硬い音を立てている。日頃慣れた廊下であるくせに、王子の足取りには、わずかばかり元気がなかった。こっそり窺った顔のなかでは、薄い唇がわずかに尖っている。もう子どもでもないのだからおやめなさいと男はときおり言い、実際に他者のまえでは王子のその癖はなりを潜めていたのだが、男と二人きりになると、どうも気が抜けるのだろう。だからかすかに盛り上がった唇に、男は少し苦笑した。
先だって父王の暗殺騒ぎがあったので、王子の単独行動はきつく戒められていた。だから何をするにも連れが要り、その必要性については王子も重々承知しているのではあるが、しかし何事も程度というものがある。だから、
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