傀儡エルフィンド君の話思考に靄がかかる、僕はなにをしてたんだっけ。
何か、しなきゃいけないことがあった気が…
『償う時ですよ、エルフィンドさん』
頭の中に響く、きれいでおそろしい声
そうだ、償わないと。
僕には罪がたくさん残っているから。
メルレイン「っ…!あーもう!さっさと正気に戻れっ!やりづらくてしょうがない…!」
ライラ「先輩も一旦落ち着きましょう?……歌がトリガーなのは分かりましたけど…」
メルレイン「丁度解けそうなタイミングで妨害してくるからな…これだからオーケストラは嫌いなんだ、あれはいつも厄介事を引っさげてくる…」
ライラ「…ダカーポの弱点は青。なら、僕の失楽園でタイミングよく歌を妨害できたりしませんかね…」
メルレイン「…試しにやってみるか。ライラ、頼むぞ。」
ライラ「えぇ。任せてください。」
メルレイン「まさか上手く行くとは…」
ライラ「先輩!また歌を歌われる前に早く!」
メルレイン「…そうだな。…エルフィンド、とりあえずあそこの白髪三つ編みのやつに攻撃しろ」
エルフィンド「え?でもあれ他支部の…」
メルレイン「説明してる暇がないから今は何も聞かずにやってくれ!」
エルフィンド「……はいはい分かりました、やればいいんですねっ!」
数分前まで何をやっていたか、何も思い出せないし、何故かあの人を見ていると手が震えてくる。
……でも、あんなに焦っているメルレインさんも見たことが無い…
切りかかれば、きっと何かが変わる気がする。そんな漠然な気持ちを抱えつつ、向かおうとした時。
ライラ「……!先輩!離れて!妨害ミスりました…!」
メルレイン「あーもう…!また最初からか…!」
二人の声が遠くなる。
『貴方には罪がある。貴方には罪が残っている。』
エルフィンド「あ…あぁ………」
こわいこわいこわいこわい…
そんな気持ちで頭がいっぱいになる、うごけなくなる。
『例え目を逸らしても、偽りの自分で隠しても、それは償いを求めるでしょう。』
メルレイン「ライラ!中断は出来ないのか!」
ライラ「駄目です…!歌が流れ出した途端、あの人の口が動いていない時も歌詞が紡がれて…!」
メルレイン「…っち、つくづく厄介な」
背中があつくなっていく、目の前に靄がかかって、次第に何をしようとしていたか思い出せなくなる
『積もりに積もったそれは一生貴方を追いかける。』
自分の意思に反して、体が独りでに動く。
エルフィンド「………そうだ…」
『ほら、今から償いましょうか。』
僕は、僕の罪を償わなければいけない。
エルフィンド「償いを……」
『その為に、お仲間との決別をするのです』
エルフィンド「…仲間との、決別を……」
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あの人の元に来てから、どのくらい時間が経ったのだろうか。
あの日、いつものように恐ろしいほどにこやかな顔できて。頭の中が恐怖で埋め尽くされたと思ったら、あの冷たい部屋から出してもらえた時から。
今日は、普段よりも調子がいいので、与えられた部屋から出て、周りを少し歩いていた。
廊下の途中に置かれた鏡をふと見ると、
聖歌隊風の衣装に身を包まれた、僕が映る。
不意に、鏡の中の僕が、動いたような気がした。
エルフィンド「……え」
償いはどうした?
まだ残っているのに
やめることなど許されない
怨嗟の声が、響く。
エルフィンド「…あ、あぁ…ごめんなさい…ごめんなさい…やるから、ちゃんと償うから…」
目の前が真っ白になった瞬間、ふわっと体が浮くような感覚がした。
シズ「おやおや、勝手に外に出てきてしまうとは悪い子ですね?罪を増やしてもよろしいのですか?」
目線が高い、顔が近い。
多分、お姫様抱っことやらをされてるのだろう。
エルフィンド「…あ……えっと…今日は調子が良かったので…すみません…」
シズ「今度からは外に出るときはちゃんと相談してくださいね?…さて。」
シズ「"調子がいい"のでしたら、今日はエルフィンドさんに付き合ってもらいましょうか…♪」
この後シズさんの気が済むまでひたすらにメンタルボロボロにされた。