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    1YU77

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    1YU77

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    学生やぎしず
    しじゅ高1 しょぞ高3 の唐突に出会い書きたいとこだけのらくがきクソ短SS
    しょぞがずるいたらしくさい。

    紫煙と廃部屋 志津摩は息を潜め、足を止めた。慌てて引き返そうとしたのに、目が離せなくなっていた。
     散らかり放題、もはや廃墟と化した狭い部室は夕陽が差し込みやわらかな蜜柑色に染まっている。窓際に、差し込む夕光を幾つか遮る人が立っていた。
     ぼんやりと外を眺め、煙草を燻らせている。
     ほとんど呼吸を止めてロッカーの影からその人を見る。
     校章を盗み見る。三年生だ。学年のバッジはつけていない。ネームプレートもない。
     煙草。廃部して長年使われていない実は鍵が壊れている部室で隠れて煙草を吸っている。
     すべて統合するに。『ふりょうだ!』至ると志津摩はますます息を殺す。早々に退散しようと思ったのに。志津摩はその人の横顔を見てハッと瞠目した。
     ぱた。
    「あっ!」
     目が合う。窓際の先輩がこっちを見ている。夕陽の色が差し込む瞳が透き通っていて薄く、吸い込まれるように綺麗だった。しかし見目形は鋭く眦も切れ上がったように跳ねあがりその目つきから不撓の威圧を感じる。『ふりょう』だと一瞬で断じたはずがその強い眼差しは妙に儚い。
     あれ? 物理的にまじに目を擦る。もう一度、その人を見る。やっぱりこちらをじっと見ている。その気鋭さを孕んだ強い目つきで。
    「おい」
    「ひゃ! すみませんッ!!」
     低い声が響いて肩が跳ね上がる。蛇に睨まれた蛙となり動けなくなってしまった。
     かつかつとこちらへ歩み寄ってくる。
     でっか!!!近づいてくる毎にますます圧を感じるその人のでかさに震えあがる。
     見上げる傍までくるとその人が屈む。
    「ハッ、おまえ。悪いんだ」
     鼻で笑われると志津摩は落とした煙草の箱をその人に渡された。
    「ひ、ぃッ、いや、あのこれはその、おれの、じゃなくて……、う、」
     じいっと無感情に見られると嘘を重ねられなくなる。
     もじもじするとその人はふと煙草を咥えた唇を綻ばせた。
    「いい、いい、嘘つかんでもいい。これで共犯だ」
     煙草の箱を慌ててポケットにしまい込む。志津摩は口を尖らせうずうずとした。
     実は、この廃部室は志津摩の隠れ家だった。こっそり抜け出してまさにこの人が吸っていたあの窓の下で志津摩もこっそり煙草を吸って授業をサボっていた。この長い間つかわれていない部室の鍵が壊れていることに気付いたのは志津摩だけだと思っていたのに。
    「こっち来いよ」
     また新しい煙草に火を点け窓の下に座り込んだその人に隣をトントンされて呼ばれる。
    「え、ぁ、え……?」
    「なに、お前も吸いに来たんじゃねえの?」
    「あ、い……まぁ、はい、」
    「ほら、こい。こっち、早くしねえと暗くなるぞ」
     トントンと呼ばれてのろのろと歩み寄り従った。となりにすとんと腰かける。
     志津摩はポケットにしまい込んだ煙草を出して箱から一本だす。
    「あ、一緒だ。いい趣味してんな」
     横でじろじろと覗かれて緊張する。隣で同じ銘柄の箱を見せられ何故かどぎまぎした。
     膝を抱えてこっちを覗き込んでくるその人は三年生のはずがもっとずっと大人に見える。なのにどことなくもっと年若い少年のような目もしている。不思議な雰囲気の人だった。
    「あっ! ちょっと、ん!」
     その人は志津摩の指から煙草を取るとさっさと唇に挟み咥えさせた。はんむ、とやわく挟むと、ぎょっとする。肩に腕を回された。
    「まあまあ」
     慌てていると宥められて。
     その人が咥えた煙草と志津摩の咥えた煙草の先と先をくっつけた。
     顔が近い。煙草の小さな灯が移る。火のせいじゃない熱を顔に感じた。
    じわりと燃えて紫煙が立つ。馴染んだ味が咥内に立ち込める。
    離れるとその人は煙草を口から離して立て肘でこちらを見ている。
    「名前は」
    「え、え?」
     ふーと同じ匂いの煙を吐くと夕陽を背にふと吊り上がった目が細くなる。
    「俺、八木。三年一組。お前は」
    「え、あ、田中です、」
    「田中なに?」
    「あ、……たなか、しずま、」
    「志津摩な」
     じりじり。八木は煙草の火を消し携帯灰皿に片付けた。
    「お前またここ来る?」
     志津摩はドキドキしながら頷いた。何故ドキドキしているのかはよくわからない。
    「いつ?」
    「いや、それはわからんですけど……」
    「ふうん。じゃあまたな、志津摩」
     はい、と返事をする頃には錆びたドアがバタンと閉まった。
     なんだあの人。いっそ蜃気楼のような。淡い夕陽を背負って幻影みたいな人だった。









     



























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