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    ししとう

    @44toshishi

    支部にあげるほどきちんと書いてなくてTwitterにあげるには文字数が多い書きたいところだけ書いたものを投げる供養場。

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    ししとう

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    「…ほら、いつものやんなさいよ、わたしに、痛いの飛ばしてよ。」

     ベッドの上の手を握る。
     細い点滴で命を繋ぐその手は、白く、青く、冷たい。

    「そうすれば、私が死んで、蘇って、それで万事解決だろう?」

     いつものように軽口を叩いているつもりなのに、声は小さく、そして震える。

    「何で、君は。」

     ジョンが高いところから転がり落ちようものなら、世界一硬い○だぞ?大丈夫に決まってるのに、「ワーーーッ!大丈夫かいたいのいたいのドラ公に飛んでけ〜!」なんて甘やかして、飛んでけの仕草の風圧で私を殺しておいて、「ぐぇー!風圧で殺すな!」と非難をしても、「は?お前は死んでも大丈夫だろ?」なんて悪びれもなく言うくせに。
     自分のことになると、どうして。

    「君は、人間なんだぞ。」

     自分の口から出た言葉に、握った手にぎゅっと力がこもった。

     そう、人間なのだ。
     怪我をしてもすぐに治らない。
     ──死んでも蘇らない。

     人間とは。
     なんと。
     弱く、脆く、儚い。

    「……もう唐揚げ仕込んであるんだぞ。君が食べなけりゃ誰が食べるのかね。ジョンが丸まれなくなってしまうだろう。」

     ジョンのついでとはいえ、美味しそうに食べる君を見るのは嫌いじゃない。

    「観ていないクソ映画だってまだまだたくさんあるんだ。付き合ってくれるんだろう?」

     楽しいことしかしたくないこの私が、飽きることなく過ごせるこの日常が。

    「……君には、沈黙など似合わない。」

     こんなにもあっけなく終わる可能性があるだなんて、微塵も思っていなかった。

    「……唐揚げは食う……仕込んであるやつ冷凍とか出来ねぇのかよ……。」
    「ロナルド君!」

     小さな声。
     うっすらと覗く青。
     手の力は弱々しいけれど、しっかりと私の手を握り返している。

    「死の縁から戻ってくるとはさすがゴリラと言ったところか。それとも三途の川のそばにセロリの花でも咲いていたのかね?」

     できるだけ平静を装い、努めて明るい声をだした。
     つもりだった。

    「……お前の方が死にそうな顔してんじゃねーか。」

     だがしかし私の声は震え、ボタボタと音を立てて涙がこぼれ落ちた。

    「……ドラ公…?」

     恐れたのだ。私は。
     ロナルド君の、死を。

    「……その痛み、私に寄越せ。」
    「無理言うな。」
    「お祖父様を呼ぶぞ。」
    「やめろって。」
    「何故だね。その痛みを引き受けたところで、私が死んで生き返るだけだ。何の問題がある?」

     グイグイと涙を拭い、出来もしない提案をしてみる。

     ──ああ、そうか。私は。

     見たくないのだな、私は。
     ロナルド君のこんな姿を。
     いつだって賑やかで、うるさくて、暑苦しくあって欲しいのだ。
     私が作った料理を口いっぱいに頬張って、そうして臓腑が温まれば頬を真っ赤にして。

    「ほら、ジョンにやるみたいに、痛いの飛んでけーってやってみろ。」

     こんな、青白い顔をして弱々しく笑う姿など、私は見たくないのだ。

     ──だって、私は。

    「……飛ばさねぇよ。お前には、やらねぇ。」

     握る手のひらに力がこもる。

    「痛いのは、俺だけでいい。」

     その言葉に、何かがぷちん、と切れる音がした。

    「ジョンの痛みも引き受けるのに?」
    「は?いや、あれはただのおまじないっていうか……。」
    「君は、人の痛みも引き受けておいて、なおかつ自分の痛みを一人で抱え込むというのかね?」
    「いや、怪我してんのは俺だし。」
    「私は君の相棒だろう!」
    「……ドラ公…?」
    「君だけが背負う事などないのだ。違うかね?」
    「……。」
    「何故、私を庇った。」

     いつもは盾にするくせに。
     何故、あの時だけ。

    「……。」
    「言え若造。返答いかんによっては……」
    「復活、しねぇかもしれねぇじゃん。」
    「……は?そんな事がある訳……。」

     そこまで言ってハッとする。

    「君……もしかしてパーティグッズの時の事を?」
    「……。」

     ちょっとからかうつもりで仕掛けたあのイタズラを、君はもしかして引きずっていたのか?

     え?私のせいじゃないか。

     復活しないかもしれないという可能性への恐怖を、まさか私がロナルド君に植え付けていたなんて。

    「……私は真祖にして無敵の吸血鬼ドラルクだぞ。復活しないなんてありえん。今後はこんな真似するな。」
    「ミミズ以下の吸血鬼の間違いじゃねぇのか。」
    「うるさい。……だが反省はしている。だから早くその痛みを私に寄越せ。それでチャラだ。」
    「嫌だ。」
    「何故だね!」
    「お前が痛いのは、俺のここが、ぎゅって、なるから。嫌だ。」

     そう言って、ロナルド君は胸元に手を当てる。

    「ロナルド君……?」
    「あ、いや、べべべべ別にお前だけじゃないぞ、ジョンが痛がるのも嫌だし、あと、えーと」

     ほら、アイツとか……とロナルド君は慌てたように名前を連ねようとする。
     そんな風に視線を逸らして上目遣いになる時は、嘘をつく時か誤魔化したい時。

     ──なぁんだ。君も。

    「よし分かった。結婚しよルド君。」
    「は?!」
    「そうすれば、分かち合うんだろう?痛みも、悲しみも、喜びも。
    上等ではないか!」
    「待て待て待て、何でそうなる??」
    「私だって、君が痛いのは、ここが、ぎゅって、なるんだよ。」

     そう言って私も胸元に手を当てる。

    「……へ……?」
    「分かち合うなら、いいだろう?」

     そう尋ねれば、

    「そ、そういうもんか……?」

     とチョロい反応。

    「そうとも。では婚姻届を準備してくる。印鑑はいつもの所にあるな?寝て待っておけ。」
    「え?あ?お、おう……?」

     ナースコールを押し、ロナルド君が目覚めた事を伝え、着替えとかも持ってきてやる、と部屋を出ようとした私に、ロナルド君が尋ねた。

    「な、なぁ、俺たちつきあってたか……?」
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