骨 顔に当たる髪の擽ったさに目が覚めた。
──あぁそうか、あのまま寝ちまったのか。
俺を散散ぱら抱き潰した後、寒い、と言うドラルクをこれでいいかよと背中から抱きしめた。
んふふ、君は本当に温かいねぇと満足そうに笑うドラルクが珍しく俺よりも早く寝息を立て始めた。
ゆるく上下する肩を何の気もなしに見ていたはずだったが、そのまま眠ってしまったらしい。
──ホントに、細っせぇなぁ。
触れ合う肌に伝わるのは骨の感触。
起こさないようにそっと腕に触れる。
皮膚の下はすぐ骨だ。
少し力を入れれば骨の上をつるりと皮膚が滑る。
こんな細腕が自分をあんな風に抱いてるなどど、とても信じられなかった。
数時間前の事を思い出しそうになり慌てて雑念を払う。
──落ち着け、落ち着け。
音を立てないように深呼吸する。
鼻に届くドラルクの匂い。
いつもの古臭い線香みたいな匂い。でも、少し甘い匂い。
いつもなら不思議と落ち着くその匂いも、今はむしろ逆効果だった。
匂いは記憶と結びついて、より鮮明に行為を思い出させる。
──俺のバカ!なんかこう、色気のないものとかないか!
ふと、指先に触れたドラルクの骨に意識が移る。
──そうだ、骨なら色気もクソもねぇな。
そっと鎖骨に触れてみる。
その凹んだ内側に、風呂入ったらここ、水溜まりそうだなーなんて考えながら次に肋骨に触れる。
規則的に並んだゆるいカーブ。
骨と骨の間に五指を置き、ゆっくりと骨に添わせる。
しっくりと馴染む骨のくぼみ。
次いで自分の肋骨辺りに触れてみるが、そこにあるのは筋肉で、骨に指は届かない。
──全く別物だな。
再びドラルクの肋骨に触れる。
その一番下。
その下は大きく抉れている。
大して筋肉もないので肋骨の裏側にまで指が入り込める。
──いや、内臓どこ行った?
抉れた肋骨の内側を指でなぞり、そのまま下へ。
張り出した骨盤。
くっきりと分かる骨の形。
その内側もやはり大きく抉れている。
──だから、内臓どこだよ!
出っ張った腸骨。
深く深く繋がる時は、この骨が当たって──。
─────!!
骨の感触そのものが、ドラルクの感触なのだ。
それを気味悪いと思うこともなく、むしろ、なんて考えてしまう自分に頭を抱える。
──骨がエロいって何なんだよ!
「…もう満足かね?」
「うぁっ!?ドドドドドラ公起きてたのかよ!?」
「あれだけ触られれば誰だって起きるだろう。それで?触り心地はいかがだったかね?」
「……骨だった。」
「もうちょっと言い方はないのかね。」
まぁ、実際骨だけどねぇ。
ドラルクはそう言いながら俺の腕の中でもぞもぞと体の向きを変えた。
「背骨は?」
くすくすと笑いながら細い手で俺の頬を撫で、柔らかくキスをする。
「性癖、歪んじゃったねえ?」
「誰のせいだよ…。」
「んっふふ。」
背骨を指でなぞれば、擽ったくて死ぬ、とドラルクが笑う。
その身の捩り方さえエロく見えてしまった。
「俺もうダメだな…お前がエロく見える…。」
「何を言うのかね。当然だろう。私だぞ?」
「何言ってんだよクソ雑魚のくせに。」
「そのクソ雑魚に抱かれてるのはどこのどいつだ。」
「…………。」
ばぁか、愛してるよ。
指が絡み、唇が触れる。
俺も。
と言葉を返したら、若造のくせに、と舌が絡んだ。
楽しげに細められた目は優しく、触れる指先は温かい。
……ね?
その一言にゴクリと唾を飲む。
夜明けまではあと少し。
もう少しだけこの骨に触れていられる。
そう、この骨に──ドラルクに。