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    takoyakki1

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    takoyakki1

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    途中で制限きた

    俺とちとせとオムライス『私、あなたの作ったオムライスがまた食べたいな』
    ─これはいつの記憶だったか。彼女の顔は逆光でよく見えない。
    『うん!絶対作るよ』
    ─ただ、月の光に照らされた細くて長い金髪が、美しかったことを憶えている。

    次は〜新宿〜新宿〜。お降りの際は……。
    間延びした電車独特のアナウンスで俺はハッと目が覚める。
    いけない…。一週間ぶりに終電で帰れたっていうのに、これを逃したら今日は家に帰れない。
    俺はガンガンとうるさい頭を叩き起こすようにして降り、乗り換えの電車を待つ。
    はぁ……。今日も上司に叱られた。アレは絶対、俺は悪くないだろ。
    スマホの画面に反射した俺の目にはクマがあり、髪の毛もワックスが取れかけてボサボサだ。
    ハゲ上司からの毎日のパワハラに、俺は身も心もボロボロだった。
    電車のアナウンスが聞こえる。もうすぐ終電がやって来る。電車に乗って家に帰って、朝の六時にはまた起きて仕事。そう思うと俺の足は自然と一歩を踏み出していた。まだ、電車は来ていない。
    このまま電車に乗らず、終わらせてしまおうか…。
    ガタンゴトン…ガタンゴトン…。
    電車の音が大きくなる。俺の足は一歩、また一歩と線路に近づく。
    あと一歩で楽になれる……──そんなときだった。
    「あなた……死んじゃうの? まだ私との契約は終わっていないでしょう?」
    透き通るような声が俺の耳に届く。
    「ねぇ、私との契約忘れちゃった? 死んだら叶えられないでしょう?こっちに……来て」
    止まるつもりなんかなかった。
    でも、俺の頭は自然と声のする方に向いてしまう。踏み出した一歩を引き下げて、『彼女』の方に向かってしまう。
    「き、君は……」
    何で今まで忘れてたんだろう。顔も、声も、名前も、俺に見せてくれた全てを……。
    「ふふっ。契約を果たしにきたよ♪……私のシェフになってくれるって約束♪」
    「黒埼……ちとせ……」

    一週間後、俺はちとせの専属シェフになっていた。
    「ちとせ!いつまで寝てるんだ……!」
    「はぁ……私って夜型なんだよね。朝は私に…向いてない」
    「向いてないってなんだ!冷めた料理が嫌って言ったのはちとせだろ!?」
    「うるさいなぁ、もう……。もう少しだけ、おやすみしたいな♪」
    くっ……。大きい真紅の瞳でそうお願いされれば、俺はどうしても反論できなくなってしまう。
    ちとせ曰く「昔から、お願いを断られたことがないの。不思議でしょ」とのことだが、本当のことなんだろう。
    「しょうがないな…三十分だけだぞ。それ以上は俺も仕事があるから」「わーい、やったね♪」
    こうして、ちとせがうちに住み始めてもう一週間になる。
    その間、ずっとこの調子である。
    吸血鬼だから日光はダメだと聞いたのだが、昼間でも平気なようだ。むしろ、俺より元気なくらい。
    「ほら、早く。ご飯作ってくれないと、血を吸っちゃうよ?」
    「分かったから引っ張らないでくれ、服が伸びる」
    俺は、ちとせに言われるまま、食事を作る。
    まあ、献立は大体決まっているんだけど。
    「はい、召し上がれ」
    「いただきます。ん〜美味しい♪」
    「そりゃ良かった」
    「あなたは食べないの? 一緒に食べた方が楽しいと思うけど」
    「いいよ。俺は味見だけで充分」
    「そっかぁ、残念。あなたがいれば毎日が楽しくなりそうなのに」
    「はぁ……俺はただのサラリーマンだよ? そんな人間を雇っても仕方ないだろ?」
    「えぇ、つまらないのぉ。もっと面白い人じゃないとね。そうだ、あなたの会社に行ってみようかな」
    「は? おい、待て。何を言ってる」
    ちとせは、さも当然のように言い放った。
    「だって、私が死んじゃったあと、誰がお屋敷の管理をするの? 私が死んだら、あの家には誰も住まないよ。空き家にしておくなんて勿体無いでしょ。
    それに、私も一人じゃ寂しいし。
    どう、悪い話じゃないでしょ?」
    「……。
    でも、俺なんかが行っても何もできないし、迷惑をかけることになる」「それは大丈夫。私のマネージャー兼執事として働いてもらうから。あ、安心して。ちゃんとお給料も出すし、休みもあげるから」
    「吸血鬼の従者か。悪くないかもな」
    「うんうん。それじゃあ決まり。今から迎えに行くから準備しておいてね♪」
    こうして俺は、ちとせの執事になったのだった。
    ○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○ 翌日、ちとせに連れられて事務所へ来た俺は、簡単な面接を受けた。
    そして、その翌日には採用が決まった。
    ちとせは、本当に俺をスカウトしてきたらしい。
    こうして、俺は黒埼家の使用人として雇われることになった。
    しかし、ちとせの専属執事というのは初めて聞く役職
    「今日からお前は黒埼家の使用人だ。
    だが、これは極秘の任務。誰にも知られてはならない。黒埼ちとせ様の身辺警護が主な任務となる。
    黒埼家の秘密を知っている者は限られている。
    お前が知っていることは、黒埼家とヴァンパイアハンターだけ。秘密を知ったからには生かしておけない。
    だが、ちとせ様に気に入られているようだから特別に見逃す。
    ちとせ様を裏切らず、忠誠を誓い、一生仕えよ」
    「はい、分かりました」
    「いい返事だ。
    では、これを飲め。
    血だ。
    お前は選ばれた。
    これからは、我々と共に生き、我々の仲間を増やすのだ」
    「はい、飲みます」
    「よろしい。
    これで、貴殿は我らの仲間となった。
    名は何と言う」
    「はい、私は……」
    俺は自分の名前を言おうとしたが、口が動かない。
    「答えられないのか?」
    「いえ……申し訳ありません。名前を忘れてしまいまして」
    「そうか。まぁ良いだろう。今夜から貴君は我々の同志になるのだからな」
    そう言うと男は去っていった。
    俺は、その時のやりとりをぼんやりと思い出した。
    ○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○ 黒埼家の使用人の服は燕尾服を着ることになっている。スーツのジャケットの背中側を少し長くしたようなデザインだ。
    これを着て、ちとせの部屋の前で待機する。
    ドアの向こうからは微かにピアノの音が流れてくる。
    しばらくするとノックの音が聞こえた。
    中に入ると、ちとせが椅子に座っていた。
    「やっほー♪待ってたよ」
    「おはようございます」
    「ふむふむ、なかなか似合ってるじゃない♪」
    「ありがとうございます」
    「うん。素敵だよ」
    「恐縮です」
    「さて、早速だけど本題に入ろうか」
    「はい」
    「君にお願いしたいのは、私の護衛と身の回りのお世話。
    つまり、私の執事になってほしいんだよね♪」
    「はい、分かりました」
    「あ、でも、いきなりだと大変かな? そうだ。まずは、私の家に泊まってみようか。
    それで、慣れてきた頃に、本格的に執事として雇うかどうか考えるからね。
    それじゃあ、よろしく頼むわね♪」
    こうして、俺は黒埼家の使用人になったのだった。
    ○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○ 黒埼家の屋敷は広大で、部屋数は百以上あるらしい。
    俺は使用人として、ちとせの部屋に出入りできる立場となった。
    ちとせは夜になると、窓を開けて月光浴をする。
    俺はその護衛も兼ねている。
    ちとせは俺を気に入ってくれたらしく、いつも楽しそうにしている。
    ちとせは本当に可愛い女の子だと思う。
    ちとせはお嬢様育ちで世間知らずなので、常識的なことも知らないことが多い。
    俺はそんなちとせをサポートするために色々と勉強をした。
    ちとせは病弱だが、とても前向きな性格をしている。
    ちとせは吸血鬼を自称しているが、血を吸うことは無い。
    ちとせは、自分がいつ死んでもいいように、周りの人間に遺産を残したがっている。
    「えへへっ、今日は何の日でしょう?」
    「クリスマスイブですね」
    「正解! ということでプレゼントをあげるね」
    「ありがとうございます」
    「はい、これ」
    「これは……ネックレスですか」
    「うん。綺麗な石
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