「でも正直、正直っすよ!? 特定の彼女作るより遊べる時に遊んどいた方が良いって思いません!?」
「思わん。そもそもそんな暇はないはずだ」
「いやいや、息抜きも大事ですってぇ」
酒が入っていることもあるだろうが、へらへらと軽薄な笑みを浮かべる後輩に、また怖いもの知らずな男が入ってきたなと内心舌を巻いた。
ここはチームの拠点に近い焼き肉屋だ。それなりに良い値段がするが、今日はチーム最年長のキャプテンが奢ってくれるらしいので、若者組にまとめられた俺たちは言葉に甘えて好き勝手に飲み食いをしている。
個室だから他の客を気にする必要がないのはありがたいが、先程から騒いでいるのは今年大学を中退してプロに転向してきたチーム最年少の後輩だ。つい運動部のサガで先輩たちが機嫌を損ねていないか気になってしまうが、絡まれた相手が堅物である赤木だったことが先輩の興味をそそったらしい。新参者の暴挙を止めるものは誰もおらず、かく言う俺もつい同い年にしては老成している赤木の下世話な事情が気になってしまい、まぁまぁと口では止めながらも話の続きを促してしまった。
赤木がもっと年上なら誰かが止めていただろう。ただ残念なことに、赤木と俺はこの新参者に次いで年が若い。先輩たちが興味を持っている以上赤木も怒鳴りつけることは出来ないようで、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「そんな遊んでるの?」
「まぁ、つってもワンナイトとかじゃないっすよ。割り切ったお友達が何人かいるってだけで……俺ギャル好きなんで、相手もギャルっぽい子が多いんすよ。あんまお付き合いって感じじゃねーっつーか」
「相手を外見で判断するのは失礼だ。向こうは本気かもしれんだろう」
「いや~向こうだって俺以外にも遊び相手いますから!」
本当かどうかわからないが、ケラケラと笑う後輩は確かに整った顔をしている。この見た目でバスケの才能があり、コミュニケーションにも長けているとなれば引く手はあまただろう。
比べるのは悪いが、向かいに座る赤木は、お世辞にも女にモテる見た目をしているとは言えない。実直な性格は結婚相手には向きそうだが、都合の良い遊び相手を探すような相手からは見向きもされないだろう。結婚するにしたって、見合いを挟んでからしそうだ。
話題はいつの間にか過去の恋愛遍歴に移っており、先輩たちにも茶々を入れられて楽しそうな後輩がぐいとハイボールを煽った。
「俺だって中学とか高校の入りたてくらいの時はクラスメイトの女子と付き合ったりしたんすよ。でもギャルのコにコクってオッケーもらって浮かれてたら、五人くらいいるキープのうちの一人だったってのが後でわかって……でも別に嫌じゃねーなってか、デートとかは面倒だからこの方がいいやって気付いて、それからずっとこんな感じっすね」
「ある意味清々しいな。まぁ刺されるような真似はするなよ」
「しないっすよぉ、別に女のコ悲しませたい訳じゃねーし」
キラキラとした瞳に曇りはない。百戦錬磨というのは同じ男として少し悔しさも感じたが、きっと赤木の方が経験は少ないだろうと勝手な偏見で自分を慰めた。
俺は後輩のように遊んでいる訳ではないが、元カノは数人いる。赤木はどうだろう。いっそ幼馴染とずっと付き合っていると言われた方が納得できるかもしれない。
バスケがうまいというのはそれなりにステータスになるので、後輩とまではいかずとも皆それなりに遊んだ経験はあるはずだ。下ネタにも恋愛話にも難色を示す赤木のようなタイプは珍しかった。
「そういうタケさんはどうなんすか。経験が無いってことはないでしょ?」
恐らくこの場にいる全員が気になっていたことを易々と後輩が聞く。ピリ、と場に緊張感が走った。赤木もそれを感じたのか、深い溜息を吐く。
「……経験は、今の恋人だけだ。それで充分だがな」
「え、え~~~! うわぁ~~~!!」
後輩が喜色満面の笑みを浮かべ、先輩たちも浮足立つ。マジか赤木、お前恋人いるのかよ。
他人の恋愛事情なんざ基本興味はないが、赤木の話とあれば別だ。さりげなく追加の酒を頼み、赤木のグラスを交換して口の滑りを足してやる。赤木も酒に弱いわけではないが、今日は後輩にかなり飲まされていたので、いつもよりガードが緩んでいるらしい。
「え、え、詳しく聞かせてくださいよ、俺人の恋バナ聞くのめっちゃ好きなんで」
「そんなもの聞いて何が面白いんだ」
「俺も気になるなぁ赤木、先輩たちも気になりますよね?」
逃がさねぇぞ、というつもりで先輩を煽ると、案の定全部ゲロっちまえと先輩からのお達しが来た。こうなれば断る術はない。赤木も覚悟したようで、並々と注がれたグラスを一気に煽った。
「年下っすか?」
「なんでそう言い切る。……まぁ、そうだが」
「やっぱり! なんかそんな気がしたんすよ。タケさん包容力あるから! えっと~待って、当てさせてください、付き合った時期は~~中学!」
「高校だ」
後輩の軽快な話術に感心しつつ、赤木が高校生の青春を満喫していたことが意外でニヤニヤと口角が上がってしまった。手を繋いで一緒に下校したりしたのだろうか。この赤木が?
「高校かー。なんか委員長タイプみたいな人と付き合ってそう」
「それは外れだな。試験は赤点ばかりで、素行も良かったとは言えん」
「あー逆に? タケさんの方が委員長タイプっすもんね。不良少女を更生させてそのまま惚れられちゃったパターンとか!?」
なるほど。てっきり大和撫子のような女と付き合っているのかと思ったが、この堅物と付き合うには相手にも積極性が必要だろう。そう考えると、スケバンのような女に惚れられて押しの強さに負けて付き合い始めるパターンも似合う気がした。
どうなんだと赤木を見ると、この話題になってから初めて赤木が笑っていた。
「まぁ、そんなようなものだ」
「うわぁ、気になるー! ちょ、今呼べないんすか、俺挨拶したいんすけど」
「何でオレの恋人にお前が挨拶する必要がある」
「いーじゃないすかぁ、ほら、チームメイトも知ってるしなぁってなったら、もし大喧嘩して別れそうになった時も踏み止まる理由になるし」
「……そもそも、別れるようなことにはならん」
そう言いつつも、思うところがあったのか赤木の手がスマホに伸びる。さすがに机を挟んで画面を覗き込むのは憚られたが、少し目を見開いた赤木を見て、すかさず声を掛けた。
「なんか連絡来てたか?」
「いや、……近くにいるから、迎えが必要なくらい飲んだなら呼べと言われただけだ」
「えー! めっちゃ良い彼女サンすね! タケさん今日結構飲んでるし来てもらいましょうよ、俺たちじゃタケさんのこと支えられないし!」
彼女が来たところで赤木を支えられないのは同じじゃないのかと思ったが、思考が鈍っている赤木はそこまで考えられなかったらしい。むすりと黙ってメッセージを見つめてしまい、その一瞬の隙に先輩たちからの彼女を呼べコールが始まってしまった。
「なぜオレが……」
「ま、俺も挨拶しときたかったしさ、彼女さんが良いなら呼んでくれよ」
ぽんぽんと宥めるように肩を叩くと、諦めたように赤木が画面に指を滑らす。正直、挨拶など口実でしかない。下世話な好奇心は、幸い赤木には伝わらなかったらしい。
めちゃくちゃ可愛かったら悔しいな、と栓無きことを考えながら、彼女の到着を待った。
「どーもぉ……すんません、ダンナの回収に来たんスけど」
赤木が連絡をしてから二十分ほどが経ち、そろそろ来るかと皆がソワソワとしているなかで、個室の襖を開けたのは深くキャップを被った男だった。
練習終わりでジャージ姿のチームメイトがひしめくなか、黒のタンクトップに派手な蛍光カラーのパーカーを羽織った姿はひどく浮く。背丈は小柄だが、ぱっと見ただけでも鍛え上げられた身体の持ち主だということは分かった。
さすがにこの人数で力負けするとは思わないが、いきなり現れたストリートファッションの男に場がシンと静まり返る。キャップと黒いマスクのせいで顔はほとんど見えないが、こちらを見下ろす目は鋭く背中に冷や汗が垂れた。
なんでこういう時に限って襖に近い位置に座ってしまったんだと後悔する。こんなことなら、下座だからとこの席を後輩に押し付ければよかった。
仕方なく男を見上げ、相手を刺激しないように引き攣った笑みを浮かべる。
「えーっと……部屋、間違えてない?」
「……あー、いや」
「宮城、こっちだ」
「あ、ダンナ」
どうしよう、と思ったところで、赤木が立ち上がる。その途端、冷ややかにこちらを見下ろしていた男がほっと頬を緩ませ、靴を脱ぐといそいそと座敷に上がってきた。キャップとマスクを外し、ぺこりと頭を下げた姿に驚く。
「あれ、……もしかして、宮城選手?」
「ウス、すんません、他チームなのにお邪魔しちゃって」
「な……なんだよ赤木、びっくりさせんなよ! お前の後輩じゃねぇか!」
その見知った顔に、こちらもようやく張り詰めていた空気が緩む。
宮城リョータ。赤木と同じ湘北高校出身で、アメリカの大学に在籍していた選手だ。来季からは県内のライバルチームでプレイすることが決まっていて、もう練習には参加していると噂では聞いていたが、実際に会うのは初めてだ。高校時代から何かと有名な選手ではあったので、これがあの湘北の元キャプテンかと物珍しい気持ちになる。アメリカの地で随分と揉まれたようで、記憶よりも数段ゴツい身体をしていた。
「ねぇ、そんな酔ってないじゃん、オレ来る必要なかったっしょ。邪魔しちゃ悪いし帰るよ」
「いやいや、折角なら宮城くんも飲んでいきなよ。まだシーズン前なんだしさ」
促されるままに赤木の隣りに座った宮城選手が、くいくいと赤木の袖を引っ張る。見た目はイカついあんちゃんだが、こうして見ると可愛げがあった。
宮城選手に会えたことは嬉しいが、こっちは彼女を見れると思って心待ちにしていたのだ。後輩で場を濁すとは、赤木にしては珍しいことをする。先輩たちも彼女はどうしたとブーイングしていて、何も知らない宮城選手だけがきょとんとしていた。
「なに、彼女って」
「今タケさんの恋バナ聞いてたんスよ! 恋人がいるって言うから挨拶させてくれって頼んで、さっき呼んでもらったんです」
「……はは、なるほどねぇ」
にこにこと人懐こい笑みを浮かべた後輩がざっくりと説明をし、それを聞いた宮城選手がうっそりと笑う。赤木の隣りに座ると余計に小柄に見えるな、と考えたところで、赤木に近寄った宮城選手がぎゅうと赤木の腕を抱きしめ、その頭を赤木の肩に乗せた。
「オレのダンナ、格好良いでしょ?」
一瞬時が止まり、次の瞬間どっと先輩たちが笑いだす。先輩たちも宮城選手のことを知っていたようで、思ったより面白い奴だなとか、来季当たるの楽しみにしてるからなとか、次々と声を掛けるとまぁゆっくりしてけよと興味を失ったように自分たちの席に戻っていった。
どうやら、今のは冗談だと受け取られたらしい。
ただ正面からその様子を見ていた俺と後輩だけは、しなだれかかる宮城選手に妙な色気を感じて、それが冗談だと思えずにごくりと唾を飲んだ。
「あ、エイヒレあるじゃん。ちょーだい」
「酒も頼むか?」
「んー」
ぴたりと赤木にくっついたまま、甘えるように口を開いた宮城選手に赤木が手ずからエイヒレを与えている。抱き着かれた腕も振り解かず、赤木は注文用のタブレットを手にすると日本酒のページを開いた。
「お前の好きな銘柄があるなと思っていた」
「うわ、ほんとだ。ありがと」
てきぱきと自分の酒を注文した宮城選手が、流れるように赤木の頬にキスをする。速すぎて、目の前の自分達以外は気付いていないだろう。呆気にとられる俺たちを前に、宮城選手はイタズラが成功したような顔で笑った。
「この人の恋バナって、どんなこと言ってました?」
「ええっと、付き合ったのは高校からとか、あんまり素行はよくない相手だったとか……」
話題を振られ、馬鹿正直に答えてしまう。宮城選手はちらりと赤木を見上げた。
「相手が男だって言わなかったの?」
「来たら分かることだ」
これってやっぱり、そういうことだよな。
さっきまで騒々しくしていた後輩も、居心地が悪そうに視線を二人から逸らしていた。座る時にはだけたのか、宮城選手のパーカーは片方が肩からずり落ちており、色黒の素肌が覗いている。男にしては分厚い唇も、パンプアップされた身体とは裏腹に幼い顔立ちも、赤木の横にいると余計に見てはいけないもののように思えた。
「そもそも何でそんな話になったの」
「コイツに、そろそろ女遊びは控えろと言ったら経験を聞かれたから、今の恋人の一人だけだと答えたらやたらと食いつかれただけだ」
「あ、……その、すみません、つい気になっちゃって……」
すっかり勢いを失くした後輩がぺこぺこと頭を下げる。宮城選手は運ばれてきた日本酒を一口舐め、機嫌が良さそうに目を細めた。
「別にいーですよ。確かに、よそで浮気してなけりゃダンナの経験人数は一人だろうね」
「オレは浮気などせん!」
「そうでしょうよ。あんだけオレのこと抱き潰しておいて他でもやってたら驚き」
呆れたように宮城選手が溜息を吐く。
目の前の二人の生々しい話に耐え切れず、沈黙を誤魔化すように酒を煽る。一方の後輩は好奇心の方が勝ったようで、先程までのおどおどとした態度から一転、内緒話をするように声をひそめて話し出した。
「その、答えなくてもいーんすけど、やっぱタケさんのってデカいんすか」
「お前は何を聞いてる!」
「ダンナ、うるさい。……そりゃ、デカいっすよ。毎回腹の奥突き破られそうになるし、入れられた翌朝は立てなくなるんで、全部入れるのはオフシーズンだけにしてます」
同じく声をひそめた宮城選手が、ぼそぼそと猥談に乗ってくる。赤木は案外尻に敷かれているようで、口を挟むこともできずむっつりと黙っていた。
「うわー……え、痛くないんすか?」
「最初は痛かったけどね」
繋いだ手をうっとりと眺める彼に、今は? と聞くのは野暮だろう。経験人数だけ見れば俺の方が多いが、長年一人の相手に愛されている赤木の方が人間としては勝っているような気がして敗北を感じた。心なしか、黙ったままの赤木からもうっすらと自慢げな空気を感じる。そりゃ、バスケがうまくて顔もよくて色気もあって女からもモテているだろう男が、一途に自分を好きなら文句は無いだろう。
「そろそろ帰るぞ」
「ヤダ、まだ飲みたい銘柄あんの」
「……どれだ」
言葉はぶっきらぼうだが、普段と比べると赤木の態度が随分と甘い。いつも厳しく扱かれている後輩が目を丸くした。
「タケさんも恋人には甘いんすねぇ……」
「酔ってるからっすよ。高校の時は散々怒鳴られたし喧嘩したし、今も全然好きとか言ってくんねーし。デートもセックスも誘うのオレばっか」
そう言いつつも、すっかり体重を預けて甘えている様子を見ると、宮城選手も赤木の口下手さは分かっているのだろう。痛い所を突かれたと思っているのか、赤木が誤魔化すようにせわしなく枝豆を口に放り込んでいる。
「まぁ赤木らしいっちゃらしいけどなぁ」
「むしろ恋人がいたことすらビックリっすよね」
「……驚いたっしょ、こんなのが恋人で」
飄々として不遜な態度を崩さなかった宮城選手が、ふと視線を落としてぽつりと呟く。自虐的な響きは哀れさを含んでいて、成人した男相手に庇護欲を煽られた。どうフォローすべきかと息を飲んだところで、隣りの後輩があっけからんと答える。
「そりゃー驚きましたよ! タケさん俺に対しては遊ぶなとかチャラチャラすんなとか言う癖に、自分は高校時代から黒ギャルの彼氏がいるとか説得力ガン消えっつーか」
「え、黒ギャルってオレ?」
「そのパーカー、最近出た新作っすよね。俺の友達のギャルもオーバーサイズで着たいっつって買ってました」
毒気のない後輩の言葉に、どこかしっとりとした空気を纏っていた宮城選手が吹き出す。耐え切れないといった様子でバシバシと赤木の背中を叩くと、腹を抱えて笑い出した。こうして見ると、年下の選手だったことを思い出す。
「あっはは、ダンナ、ギャルと付き合ってんの!? 面白すぎ」
「お前のことだろうが!」
「あーやば、ヒョウ柄とか着ようかな」
「似合いそうっすね」
「あんまヤカラっぽいの着ると変なのに絡まれるから普段は抑えてるんすけどね~」
今のままでも十分ヤカラっぽいぞと内心思いつつ、追加注文した日本酒を美味そうに舐める姿を眺める。酒には強いのか、全く酔った様子はない。赤木の方はすっかり酔いが回ったようで、熱い息を吐きながら繋がれた手をほどき、そのまま宮城選手の腰を引き寄せるように掴んだ。
「わ、なに、帰る?」
「あぁ」
「まだ先輩たちいるけど、帰っちゃっていいの?」
「ウチ、先輩に酒豪が多くて帰りたい奴は勝手に帰って良いことになってるから気にしなくて大丈夫。どうせ先輩たちはまだまだ飲むと思うし、俺らも適当なところで帰るから」
こんな見た目の割にと言うのは失礼かもしれないが、意外と礼節は重んじるタイプらしい。ちらりと先輩たちが騒ぐ席を伺うと、腰を掴む赤木の手を剥がして挨拶をしに行ってしまった。
横の体温が消えた赤木は閉じかけていた瞼を開き、おぼつかない手付きで財布を開けると五千円札を机に置いた。
「赤木、今日はキャプテンの奢りだからいらないよ」
「これは……宮城の、分だ。あいつはチームメイトじゃないから、キャプテンに甘える訳にはいかん」
キャプテンは日本酒二杯程度気にしないとは思うが、今の赤木にそれを主張したところで通じないだろう。仕方なく受け取ると、挨拶を終えた宮城選手が戻ってきた。
「お代は?」
「もう払った」
「ありがと。じゃぁ、急にお邪魔しちゃってすんませんっした。また試合の時はよろしくお願いします」
思わぬ力強さで赤木を立たせた宮城選手が、にこりと笑って頭を下げてくる。そういえば、先程落ちたパーカーから覗いた肩は丸く盛り上がっていた。
「おう、赤木も気を付けて」
「また宮城さんも飲みましょうねー!」
嵐のように去って行った宮城選手と赤木を見送り、後輩と目を合わせて追加の酒を頼む。飲まなきゃやってられない気持ちだった。
「……ちゃんと一人に絞ろうかなぁ、俺も」
「そうだな……」
明日から、赤木を見る目が変わりそうだ。
とりあえず、変な気を起こさないように、家にある黒ギャルのAVを捨てよう。
ろくでもない誓いを胸に、赤木が残していった枝豆に手を伸ばした。