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    gorogoro_ohuton

    @gorogoro_ohuton

    オタクのたわごと

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    モブ視点。聡ミくんの通う大学の職員の話
    【狂聡】学生課の裳部田萌歩子さん

    【狂聡】学生課の裳部田萌歩子さん4月の大学は、1年間で3本の指にはいる繁忙期といえる。入試シーズンとはまた違った忙しさだ。
    今年も私こと裳部田萌歩子は提出された書類の不備の多さに頭を抱えていた。ええい!お前ら!ガイダンスでの話をきいてたか!?配布した資料は読んだか!?と書類に書かれた名前を睨みつけながら、チッと本日何回目かの舌打ちをする。斜向かいの同僚も、本日何回目かの盛大なため息をついた。
    大学の仕事というものは、ほとんどがルーティン業務の繰り返しだ。春は卒業式と入学式、夏は定期テストとオープンキャンパス、秋は文化祭、冬は定期テストと入試。私たちのような学生課や教務課は春が一番忙しいが、四半期に一度大きな行事がやってくる、そんなイメージだ。
    四半期に一度といいながらも、秋の文化祭に向けてはもうすでに部活動関係の人が動いていて、文化祭実行委員の団体とスケジュールやゲストなどの打ち合わせをしている。今年は最近売れ売れの若手俳優を呼びたいらしい。私も知っている人だ。近くであの整った顔面を拝むことができるのだろうか。
    「すみません」
    控えめにかけられた声に私は顔をあげる。私の席はカウンターから少し遠く、いつもは手前に座っている嘱託のお姉様が対応してくれることが多い。鳴り止まない電話に出たり、ガイダンスなどで職員が出払っており、私は重い腰をあげて小走りで駆け寄った。
    「こんにちは。お待たせしました」
    「…こんにちは」
    愛想よく作り笑いをすると(塩対対応だと、時折、保護者から高い学費を払ってるんだから愛想よくしろと電話でクレームがくるのだ)、男子学生はペコリと小さく頭をさげる。雰囲気からして新入生だろう。大学生活に慣れた上級生は態度でわかる。あいつらは態度もでかけりゃ口も悪い。そもそも、学生課や教務課なんて素行の良い子たちは学割証を取りにきたり、教務課に提出と指定された課題を提出しにきたりするだけで、窓口に問い合わせなんてほとんどしない。窓口にやってくるやつは大概なにかがヤバい子たちなのだ。例えば、単位とか単位とか単位とか。もしくは、奨学金など、定期的な手続きや申請が必要な子たちだ。
    「あの、入学金返金の申請の書類を提出にきたんですけど、ここでよかったですか?」
    「大丈夫ですよ。では、書類確認しますね。それと、本人確認のために学生証見せてもらえますか?」
    東京の大学には全国から大勢の学生がやってくる。このイントネーションは大阪や京都の方だろうか。メガネをかけて、チェックのシャツをきて、大学デビューをまだしていない少し芋くさい男子学生。真面目で大人しい雰囲気の彼も、あと数ヶ月したら髪の毛にパーマをかけたり染めたり、耳が穴だらけになってしまうのだろうか。
    提示された学生証の写真はどこの高校でも採用されているようなブレザーを着ている彼だった。学生証の写真は願書の写真をそのまま流用しているので、高校生のあどけない彼ら彼女らが映っている。だから、高校生の顔写真のまま大学4年間を過ごすことになり、学生証を提示してもらっても、様変わりし過ぎててあんた誰よ?となることは少なくない。
    彼ーー岡聡実さんが提出してきた書類は、父兄が本学の卒業生・在校生だった場合に適用される、入学金返金の書類だ。どうやら彼にはお兄さんがいるらしく、お兄さんも彼と同じ法学部のようだ。
    「…書類に不備はなさそうなのでこちらで受理しますね。返金のご案内は保証人の方のご住所に届きますので、お伝えください」
    「わかりました。ありがとうございます…あの、すみません、もうひとつききたいことがあるんですけど」
    「はい、なんですか?」
    「あの、法学部研究室ってどこにあるか教えてもらってもいいですか?広くてようわからんくなってしまって…」
    「図書館の右隣の建物の5階ですよ。あ、もしかして、1年生ガイダンスかしら? もうそろそろ時間だから少し急いだ方がいいかもしれませんね」
    「え、ホンマですか!? あ、もう時間や…すみません、ありがとうございました」
    岡さんはペコペコと頭を下げながら小走りで出ていく。毎年毎年大勢の学生の対応をするが、この4月はピヨピヨの1年生の初々しさに破顔することも多いが、ふと書類に目を落とすと、生年月日に2005年と書かれていてクラクラと目眩がした。
    そうしてあっという間に4月が過ぎ去っていった。4月を乗り切ってしまえば平穏な毎日を取り戻すが、GWの祝日でも通常授業日だったりするので、課内で話し合って出勤者を決め、祝日に出勤したら別の日に代休をとることになる。私は会議などの後始末や書類提出期限が差し迫っていたので、致し方なく普通に出勤した。
    仕事を全て片付けて定時退勤を決め、友達と合流して焼肉屋に直行した。4月はクソ忙しかったし、世間が休みの間でも私は粛々と仕事をしていたで、ご褒美でずっと気になっていたちょっとお高めの焼肉屋だ。店内は休日だからか、早い時間だというのにかなり混んでいた。
    いらっしゃいませーという店員さんの声にふっと顔をあげる。店の出入り口には、一目見てその筋の人とわかるような出たちの黒スーツの男と、なんだか、見たことあるような素朴な顔をした男の子が立っていた。ふたりは私たちが座る席より奥の個室に通された。
    「聡実くん、飲み物どないする?オレンジジュースでええ?」
    「…なんでもいいです」
    「じゃあ、オレンジジュースと…何が食べたい?好きなの頼みぃ」
    聡実くん、と黒スーツの男は男の子の名前を呼んだ。私は分厚い牛タンを咥えながらそっと個室に視線を送る。男の子の顔にはやはり見覚えはある。常用漢字を組み合わせた読めない名前やわけのわからないキラキラネームや(私も読めなくて本当に困っている)、彼のようなサトミという男の子なのか女の子かぱっと見ではわからない中性的な名前の子供も多い昨今、サトミという古風な響きには聞き覚えがあった。
    サトミ、メガネ、ちょっと芋くさい男の子。もしかして、オリエンテーション期間に私が対応した男子学生ではないだろうか。毎日毎日多くの学生の顔を見ているせいであやふやだが、関西弁のメガネをかけたちょっと芋くさいサトミという男子学生は、彼しかいないような気がする。
    「聡実くん、学校どない?」
    「普通です」
    「普通ってなんやねん。友達できた?」
    「まぁ、友達いうかわかりませんけど、一緒にご飯食べたり、話す人はおりますよ」
    「ええなぁ、聡実くんと毎日おしゃべりできて飯一緒に食えるなんて羨ましいわぁ…ええなぁ…」
    黒服の男は、多分、40代くらいではないだろうか。聡実くんとの関係がよくわからないが、心底聡実くんのことが大好きらしい。どんなに塩対応されても、ポジティブな解釈に繋げられるのはちょっと引くけれど。
    「…狂児さんは暇なんですか?」
    「んー?聡実くんと飯食えることよりも優先することなんてないやろ」
    「あるやろ」
    「ないない」
    黒服の男はデレデレと相好を崩していて、整った男前の顔が台無しだ。私は厚切り牛タンを飲みこみながら、微笑ましいと思いながらも、ボソリと無意識のうちにつぶやいていた。
    「…もしかしてパパ活?」
    「え、萌歩、なんか言った?」
    「え…ううん、なんでもない。お肉美味しいねぇ」
    最近、援助交際、もとい、パパ活や男女関係、金銭的なトラブルに巻き込まれる学生も多く、警察から電話がかかってくることもある。私は何も問題起こさないでくれよと思いつつも、なんだか楽しそうなふたりの食事風景に涙が出そうになった。
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    gorogoro_ohuton

    MOURNINGモブ目線※捏造
    【狂聡】紳士服売り場の多部田くん
    【狂聡】紳士服売り場の多部田くんお客様のお出迎えために駐車場で待機して早10分。僕はソワソワと遅々として進まない腕時計を眺めていた。僕と一緒にお客様をお出迎えするのは、外商部チーフの茂田さんだ。茂田さんはここ阪京百貨店勤続20年のベテランで、物腰柔らかなな50間際の男性だ。すらっとした痩せ型の体でスーツをビシッと着こなし、営業トークもとても上手い。外商部で1番の売り上げを誇っている稼ぎ頭だ。
    不景気ということもあり、全国の百貨店に共通していえることだが、外商部はどちらかといえば縮小傾向にある。一昔前はお客様のご自宅にカタログや商品をお持ちした時代もあったときいているが、それは僕が生まれるよりも昔の話だ。もちろん、長年のお客様の中にはご自宅にお伺いし、商談を進めることもあるらしいが、そのようなお客様もほんの一握りだ。近年は、カタログをお送りしてからご自宅にお電話をし、こちらにお越しいただくことが多い。僕が働くスーツ売り場でも、茂田さんや外商部の方たちがお連れしたお客様を対応することがある。そのほとんどが僕のような新卒2年目のペーペーではなく、ベテランの先輩たちが対応していた。
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