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    gorogoro_ohuton

    @gorogoro_ohuton

    オタクのたわごと

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    gorogoro_ohuton

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    ※関西弁は家出しました
    ※実在の2000年前後の出来事とは関係ありません。全て捏造です
    ※球場でビール売りをしていたモブとマツリの人たちの話

    【祭林組】球場のビール売り寝屋川さん私がバイトをしている阪神甲子園球場は、ぶっちゃけ、めちゃくちゃ治安が悪い。殊に、読売との試合はファン同士の乱闘が起きることも少なくあらへん。出勤する途中で、球場前でジャビットくんのぬいぐるみをヒモでくくって、地面をずりずりと散歩させている過激なファンもおる。そして、そんなファンに限っていわゆるヤン詩のような刺繍をいれた気合いの入ったユニフォームを身につけてはったりします。本当に文字通り特攻服やと思います。
    自己紹介がまだでしたね。私は法学部3回生の寝屋川沙織といいます。生まれも育ちも兵庫県、両親も祖父母も根っからの阪神ファンですが、私は隠れ巨人ファン。甲子園では焼き討ち対象です。ちなみに、高橋由伸と上原浩治の大ファンです。
    子供の頃から両親にここ甲子園球場に連れられ、私もすっかり野球好きに育ったのはいいものの、やっぱり、子供は強いチームが好きやん?万年下位に低迷する阪神より、桑田真澄や原辰徳、クロマティといったスター選手を擁する常勝軍団読売巨人軍のファンになることは必然やと思います。
    当時、阪神も和田豊、田尾安志や岡田彰布といった要といえる選手も在籍してはりましたが、チームの成績はパッとせんし、中継で流れる試合に野次を飛ばす両親の見苦しい姿がとても印象に残ってはります。家でオレンジ色のもは御法度で、私はプロ野球に興味ありませんという顔をしてました。
    そんな隠れ巨人ファンの私は、大学進学を機に甲子園球場でバイトを始めました。両親は高校野球も好きで、私も両親と一緒に子供の頃から高校野球の応援にも行ってはりました。野球場の花形といえば、ビールの売り子さんやん?可愛い女の子が多くて、男の子のはほとんど見かけませんでした。汗を流しながら、ビールいかがですか?と声を張り上げる姿を見て育ち、私も子供ながらにとても憧れを持ってはりました。
    背中のビール樽は10kg強、その他の装備を含めると小さな子供ひとり分程の重さになります。それを背負ってナイターなら開場後から21時頃まで、デーゲームなら18時頃まで(試合が延長になれば終わるまで)スタンド中を駆け回ります。ビールの売り子は華やかに見えて泥臭く、かなりの重労働なのです。試合が終わる頃には足はパンパン、地面に膝をつくので足はドロドロ、夏は暑いし春先は肌寒い。酔っ払いのおじさんに絡まれることもしばしばあります。阪神が負けていると、下品な野次もたくさん飛び交っていて、より治安は悪なります。
    時給はあるとはいえ歩合制やから、1杯600円のビールは1杯売り上げる事に約80円程。せやから、100杯くらい売れれば1日の売り上げとしては御の字やった。
    ちなみに、私は今年で3年目の売り子になります。一応、銘柄はプレモルで、その中でも売り上げNo.2を背負わせてもろてます。実は、一昨年の新人の中でシーズンを通しての売り上げがNo. 1でした。売り子は健全(?)なキャバクラのようなもんで、熱心なファンの方にはお気に入りの売り子がいて、その子からビールを買うことがほとんどです。一見さんはとりあえず近くを通った売り子に声をかけますが、シーズンシートのお客さんや外野席のお客さんにはお気に入りの女の子がいてはります。そんな常連さんをつけるために、私たちも髪色や髪型を派手にしてみたり、帽子に花のコサージュをつけてお客さんに見つけてもらうように色々と工夫をしてはったりするんです。
    「あ、姉ちゃん、こっちこっち!」
    まだ開場直後のスタンドは静かです。試合開始の2時間程に開場しますが、平日にもかかわらず、入場開始時間前には待機列ができていることがほとんどや。開場直後はまだ選手たちが練習している時間なので、その練習風景を見ながらのんびりするのもひとつの過ごし方やと思います。
    控えめにビールいかがですかと声をかけると、いつもの席にいらしたいつもの方たちから声がかかりました。内野席と外野席の間にある通称アルプススタンド。その前の列の方に、ちょっと普通でない方たちのグループが座ってはりました。みなさんサングラスをかけていて、派手な柄シャツやダボついた服をきて、太い金のネックレスや指輪をたくさんつけてはります。絶対に堅気の人ではあらへんけど(多分やけど、大阪にあるミナミ銀座ゆうちょぉっと治安の悪いところのヤクザな方々やと思う)、とても羽振りのいいお客さんです。私は手をあげて会釈をし、小走りで階段を駆け下ります。
    「こんにちは。今日は会長さんが期待してはる井川が先発ですね」
    「せやねん!やけど、最近ちぃっともパァッとせんわ」
    「そうですね、井川もですけど、打線もイマイチですし」
    「ホンマになぁ。オレの方が打てるんとちゃうか?」
    「桧山の代わりに代打で出てホームラン打ってくださいよ」
    「んなことしてみぃ、神様も形無しになってまうで」
    豪快に笑うこの会長さんというのは、かなり熱心な阪神ファンや。今年の阪神は開幕から10連敗を喫し、最下位に低迷をしていて、久しぶりにお会いした会長さんの雰囲気も多少ピリついてます。それでも、気張りやぁ!くらいの野次は飛ばすものの、声を荒げて選手や監督を罵倒することはありません。どんなに嫌な試合展開でも、明らかに機嫌が悪いとはわかりますが、腕組みをしてムスッとして座ってはるだけのようです。周りの人たち(会長さんは舎弟といってはりました)は野次を飛ばしたり、本業さながらの罵声を浴びせる姿をよく目にします。
    和やかに会話をしていますけど、ビールをカップに注ぐ時は細心の注意を払ってます。ビールの泡が衣類や持ち物に跳ねないようにとか、カップを渡すときに落とさないようにとか。未だに緊張します。私が新人No. 1とか全体の売り上げNo.2になれたのは、この神様仏様会長様のグループががたくさんこうてくれるからなので、ご機嫌を損ねないよう、愛想を振り撒くことを忘れません。
    ふと、あまり見ない顔の方が会長さんの隣に座ってはりました。他の方よりも随分若く、私と同じくらいの年齢の若い男性の方です。その方の分も注ごうとすると、会長さんはこいつは下戸やからごめんなと私の手を制しました。
    「飲めへんの?未成年やからじゃなくて?」
    「せやねん、下戸下戸で一滴も飲まれへんのや」
    「今日は気持ちええお天気なのにもったいないですね。はい、6杯で3600円です」
    「ほんまそうやな。5000円な。お釣りはとっとき」
    「会長さん、アカンですよ。ここはキャバクラちゃいますから。何回言うたらわかってくれるんです?1400円のお返しです。チップはええんで、また頼んでくださいね」
    「ほな、また30分後な」
    「ありがとうございます。ゆっくりしていってくださいね。あ、ソフトドリンクの売り子きはりましたけど、呼びましょうか?」
    「悪いな、頼むわ」
    私は通路を歩いていたソフトドリンクの売り子を手招きして呼ぶと、彼女は手を挙げて私に応えてくれはりました。階段ですれ違いざまに下のお客さんと目配せすると、明らかに緊張した面持ちになります。わかる、私も初めて呼び止められたときはそうやったから。
    それは丁度2年前、開幕戦直後のことやった。その前の年、3年ぶりに最下位を脱出し、打撃陣の強化をして臨んだ吉田義男監督体制の2シーズン目。横浜との開幕戦で3連敗を喫し、最悪のスタートダッシュをきった阪神は、お葬式状態の空気の中で本拠地甲子園に帰ってきはりました。
    私はまったりとしたオープン戦で何回かバイトにはいったものの、売り上げは本当に微々たるものでしたが、売り子はお客さんに覚えてもらってナンボという先輩の教えを守り、私はオープン戦期間中たくさん声を張り上げて、お客さんにアピールをしたつもりです。
    迎えた本拠地での開幕戦、開場直後から続々とお客さんが入ってきて、練習をしている選手にしっかりやれよと野次を飛ばしてはりました。私は一向に重さが減らない樽を抱え、階段の上り下りをし、ビールいかがですかと声をあげました。丁度アルプススタンドに差し掛かり、下まで駆け下りて一礼してビールいかがですかと周囲を見回すと、姉ちゃんこっち!と威勢のいい声がきこえてきはりました。その声を方を向くと、明らかの堅気でない方々の集団が座ってはりました。私がおっかなびっくり近づくと、その中で1番年上そうな男性が6つなと注文をいれます。
    「姉ちゃん、見ない顔やけど、新人さん?」
    「そうです。オープン戦何回かはいりましたけど、今日で5回目くらいですね」
    「樽、まだまだ重いやろ?」
    「でも、野球好きなんで楽しいですよ」
    「そうなん?誰が好き?」
    「あー、そうですねぇ、阪神やと新庄ですかねぇ」
    本当は阪神のグッズを持つのは嫌やったけど、お客さんのほとんどは阪神ファン。カモフラージュの新庄のタオルを見せると、イケメンやから女子ウケええもんなぁと男性は笑った。
    「お兄さんは応援してはる選手おるんですか?」
    「せやなぁ、川尻と今岡には期待しとるで」
    両親が阪神ファンなので、必然的に阪神の選手の成績や名前は頭にはいってはりました。これから調子よぉなるとええですねと相槌をうつと、せやなぁと男性と周りの方は深く頷きはります。
    「お待たせしました。6杯で3600円です」
    「ほな、5000円。釣りはええよ、とっとき」
    「え…?」
    ごそごそとウエストポーチからおつりを取り出そうとしていると、お兄さんは受けっとっとき受け取っとき5000円札を押し付けはります。先輩に、たまにチップをくれるお客さんがおるとはきいてましたけど、そんなことあるわけないやんと思ってました。
    「ち、チップはええですから、また買うてくださいね」
    「ほな、また30分後にきて。ちょぉ暑いやん?喉乾いてまうから」
    「わ、わかりました。30分後にまたきますね。ありがとうございました」
    私はペコリをお辞儀をすると、足早にお兄さんたちから距離をとります。強面のお客さんはたくさんいますけど、アレは多分ガチやと思いました。30分後っていうのは社交辞令なのか、冗談なのかあの時の私にはわかりませんでした。30分後に行かなかったらあとで何かされるんとちゃうかとビクビクしながらスタンドを周り、丁度30分後に何食わぬ顔をしてあのお兄さんたちの近くに行くと、姉ちゃんこっち!とあのお兄さんが声をかけてくれはったんです。
    それから、次は試合開始後、次は3回が終わる頃、というように、いつきてくれと指定されるようになりました。試合も大詰めに差し掛かった9回、その日は辛うじて阪神がリードし、赤ら顔になって機嫌のいいお兄さんたちは、また明日くるからバイトはいってたらよろしくなと言っていい気分で帰っていかれました。
    その次の日もバイトにはいっていた私は、半信半疑で昨日お兄さんたちが座っていた場所に行くと、姉ちゃん待っとったで!とお兄さんたちに呼ばれたのです。その日から、ちょっとヤクザなにおいのする人たちが、私の初めての常連さんになりはりました。その人たちのおかげで私は新人No. 1、翌年には売り上げNo.2になれたというても過言ではありません。
    そんなこんなで私は大学を卒業するまで売り子を続け、3回生の時に売り上げNo. 1になり、バイトを辞めました。そう、私の夢は弁護士。必死で勉強しなくてはならない時期になってしまったんです。




    「寝屋川先生、お客さんきはりましたよ」
    「すぐに行きますから、お茶出してあげてくださいね」
    「もうだしてますよ」
    「ありがとう」
    私は手元の履歴書から顔をあげ、クリアファイルにまとめて席を立つ。事務所の奥の応接室のドアをノックして入ると、中には緊張した面持ちで男の子が座ってはった。
    「お待たせしました」
    「よ、よろしくお願いします」
    「本日面接を担当します寝屋川です。どうぞよろしく」
    おかけくださいと促すと、男の子はガチガチに緊張しているようで一々動きが硬く、思わず笑みをこぼしそうになる。初々しい大学4年生。ざっと履歴書を見た限り、うちの事務所とはなんの関係もなさそうな普通の男の子。でも、マツリからの紹介だから、きっと、マツリと関わりがあるのでしょう。ただ、なんとなく履歴書の名前に見覚えだけはありました。
    「では、自己紹介をお願いします」
    「お、岡聡実です。今回は祭林組の組長さんのご紹介でうかがいました。弁護士を目指していて、来年の4月からは法科大学院に進学予定です」
    岡聡実、おかさとみ…辿々しく自己紹介をする少年の名前を顔を何度も見やる。正直、岡くんの話はほとんどきいてなかった。
    「…ああ、あなたが成田さんの〝聡実くん〟なんやね」
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    💴💴💴💴💴💴💴💴❤
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    gorogoro_ohuton

    MOURNINGモブ目線※捏造
    【狂聡】紳士服売り場の多部田くん
    【狂聡】紳士服売り場の多部田くんお客様のお出迎えために駐車場で待機して早10分。僕はソワソワと遅々として進まない腕時計を眺めていた。僕と一緒にお客様をお出迎えするのは、外商部チーフの茂田さんだ。茂田さんはここ阪京百貨店勤続20年のベテランで、物腰柔らかなな50間際の男性だ。すらっとした痩せ型の体でスーツをビシッと着こなし、営業トークもとても上手い。外商部で1番の売り上げを誇っている稼ぎ頭だ。
    不景気ということもあり、全国の百貨店に共通していえることだが、外商部はどちらかといえば縮小傾向にある。一昔前はお客様のご自宅にカタログや商品をお持ちした時代もあったときいているが、それは僕が生まれるよりも昔の話だ。もちろん、長年のお客様の中にはご自宅にお伺いし、商談を進めることもあるらしいが、そのようなお客様もほんの一握りだ。近年は、カタログをお送りしてからご自宅にお電話をし、こちらにお越しいただくことが多い。僕が働くスーツ売り場でも、茂田さんや外商部の方たちがお連れしたお客様を対応することがある。そのほとんどが僕のような新卒2年目のペーペーではなく、ベテランの先輩たちが対応していた。
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