空は繋がっている(火弓リョ)「おれも出られたらよかったな、ワールドユース」
「前の大会のときはどうしてたんだ」
「さあ、覚えてねぇな。代表には選ばれてない。どっちにしろアジア予選を勝ち抜けるチームでは……いやいや、そういうことじゃなくてさ、リョーマと一緒に――」
「……おれと?」
「……悪ィ。今の聞かなかったことにして。忘れて」
「……オウ」
「いや、無理だろ、忘れろって」
「ですよねー」
「……弓倉」
「……なに」
「ありがとな」
「……ン」
「おれは忘れないよ」
「……」
「忘れないと思う」
「何でそこ弱気なんだよ」
「……えー。あー。その、忘れたくないっていう気持ちは嘘じゃないから」
「おれは早く忘れたい」
「……」
「忘れて楽になりたい」
「……」
「……な、んで」
「ん?」
「……なんっで、一年も早く生まれてんだよ!協調性なさすぎだろ!合わせろよ!」
「はァ?地球の反対側で生まれたヤツがそれ言う?おまえこそ合わせろよ、空気読めっつーの!」
「……」
「……」
「……やめようぜ」
「言い出しておいて」
「ははっ」
「……弓倉」
「なんだよ」
「天気いいな」
「……そうだな」
「……」
「なぁ、ウルグアイってどっちの方向だ?」
「うーん……こっち?」
「そっち!?……分かった、じゃあおれ、何かあったら下向いて呼ぶから」
「……」
「そのときはちゃんと返事しろよ?」
「オウ、なるべくデカイ声で頼む」
他愛もない会話で、吹き込む寂しさをまぎらわせるように笑って。「忘れない」も、「忘れたい」も、きっと今ここにあるおれたちを形作る感情には違いないもので。
だから、早く慣れてしまおう、この痛みに。いつかこの青を思い出して、ひとりで泣くことのないように。
ひとりで泣かないで、済むように。
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