救えないドルの話じわじわと、腹から溢れ出した赤が静かに降り積もる雪を染めていく。コートはとっくに鉄錆を吸いすぎて受け止めきれない、雪はその熱さに溶かされて不快なぬるさの水に変わっていく。それでもしんしんと静かに降る雪は、きっといつかこの血すらも覆い隠していくんだろう。冷えきって震えるばかりの青い唇から洩れる懺悔とともに、懺悔に滲む傲慢な救済への思い込みとともに。
「…ね、クレスさんってやっぱり可哀想だね」
さくり、雪を踏みしめた靴とともに声が降ってくる。ただでさえ痛みで攪拌されていたのにほとんどの血まで失って、元来出来がいいわけでもない脳はもうすっかりと錆びついてしまったが、ああ確か今日のハンターはフールズ・ゴールドだったかとぼんやりと想起する。
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