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    dodonpa78

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    dodonpa78

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    苦しめば苦しむほどきっと許されると思いたいからこそ失血死を好むドルの話。
    ※ヤマモオチもスケベもないし短い。
    ※ちょいフル墓。

    救えないドルの話じわじわと、腹から溢れ出した赤が静かに降り積もる雪を染めていく。コートはとっくに鉄錆を吸いすぎて受け止めきれない、雪はその熱さに溶かされて不快なぬるさの水に変わっていく。それでもしんしんと静かに降る雪は、きっといつかこの血すらも覆い隠していくんだろう。冷えきって震えるばかりの青い唇から洩れる懺悔とともに、懺悔に滲む傲慢な救済への思い込みとともに。

    「…ね、クレスさんってやっぱり可哀想だね」

    さくり、雪を踏みしめた靴とともに声が降ってくる。ただでさえ痛みで攪拌されていたのにほとんどの血まで失って、元来出来がいいわけでもない脳はもうすっかりと錆びついてしまったが、ああ確か今日のハンターはフールズ・ゴールドだったかとぼんやりと想起する。
    そうだそうだ、こいつのツルハシで僕の腹は風穴を開けられてしまったのだ。

    「僕は沢山の悪いことをしてきました、許してください神様。さっきからずっとそればっかり」

    なんと僕が気付いていなかっただけで、フールズ・ゴールドはずっと聞いていたらしい。
    こいつ、他のサバイバーを追わなくてもいいのかと訝しんだけど、もうとっくに逃げてる頃合だろうと一拍遅れて自答した。

    「死ねば救われると思ってるの?ね、その先になにがあるの?生きることを放棄して、あるかも分からないものに縋って、どんな理不尽も差別も生きている間は仕方ないって諦めて。僕さぁずっと思ってたよ、クレスさんって愚かだなって」

    フールズ・ゴールド──ノートン・キャンベルとはあまり話したことはない。でもなんとなく、お互いに似ているのに絶対に反りが合わないなとは思っていた。それはきっとこいつだってそうなんだろう。
    ノートンは僕には眩しすぎたのだ、だってよりよい生を求めて足掻けるのだから。こいつのやってきたことがたとえ褒められないやり方だったとしても、僕の目を灼く光でしかなかったのだ。

    「今だってそう、投降すれば楽になれるのにわざわざ死のうとしてる。疑似的な死にすら安寧とやらを見出してるってわけ?」

    ──そうじゃない。
    僕は、塊みたいな血が詰まってる上に冷めきってまともに震えもしない声帯を無理矢理働かせて、初めて反論した。ごぷっ、空気混じりの血が口から吐き出されて、僕の白とは違って綺麗な雪を汚らしくよごしていく。

    「なにが違うの」

    ──疑似的な死そのものに救済を見出しているわけじゃない。どれだけ渇望したって安寧も永遠の眠りも得られず、最後の審判を待つこともできない死なんていらない。

    「じゃあなんで?」

    ──ただ、ただ。そう、きっとこれだけ苦しめば僕がこれまでやってきた悪いことも許してもらえるかもしれないんだ。たくさん重ねた罪も、汚れた手も、苦しめば苦しむだけ清められるかもしれない。罰は罪を洗うためにあるんだろう。なら、これは僕への罰なんだ。沢山苦しんで苦しんで、痛みも耐えたのならきっと、きっと、いつかは──

    「…………やっぱり、僕クレスさんのこと嫌いだな。謙虚に見えて強かで、諦めたフリして醜く縋っちゃってさ。本当に大っ嫌い」



    ハンターは投降しました。
    今回のゲームの脱出者は一人のみです。
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