看守日と囚人狛 ドン、ガッシャァン。
木造の重い扉を開けた途端、大きな音が廊下に響いた。
日向はそれを聞き、小さくため息を吐くと特に慌てる様子もなく歩を進めた。
音が霧散した廊下は酷く静かで、規則正しい革靴の音だけが鳴る。点々と設置された明かりは弱々しく、不規則に明滅を繰り返していた。そろそろ交換しないとなぁ、とぼんやり考えながら少し歩き、一番奥の牢屋の前で足を止める。
鉄格子の向こうでは炎を思わせる白い癖毛の男が一人、額のあたりを抑えてその背を丸めている。思っていた通りの光景に日向は苦笑いを浮かべた。
「来たぞ、狛枝。今日はどうしたんだ、また頭をぶつけたのか?」
「んうぅ、日向クン……」
狛枝は小さな声でそう言うと、それきり黙ってしまった。相当痛かったのだろう。さっきは音凄かったな、と適当に言葉を投げかけてやりながらその周辺を観察する。鉄格子に、ベッド。奥にある小さな窓。頭の中で項目をなぞりながら牢屋の中を一通り確認していく。
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