夜に行く列車に乗って 収録を終えて、スタジオ近くの駅のコインロッカーに預けていた荷物を回収すると、狗丸トウマは御堂虎於の手を取って改札を抜け、寝台特急の乗り換え駅行きの電車に飛び乗った。
時刻は夜になり、電車の窓から見える景色には鮮やかな照明が灯っている。車内ではまだ人の数が多い。周囲を気にせずに話してしまえば、きっと自分たちがアイドル――ŹOOĻの狗丸トウマと御堂虎於である事がバレてしまう。そのため、二人の間には会話はなく、話したいことはラビチャを使用して会話をした。
『眠い?』
『眠くはない。それより水を買い忘れた』
『特急乗る前になんか買っておくか。長旅になるみたいだし』
『そうだな』
スマートフォンを介して会話をする二人の間には静寂が漂い、二人がかの有名なアイドルだと気付く乗客は誰もいない。直接会話をしなくて正解のようだった。
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