雨の日の迎えに傘はいらない ザアザアと降り続ける雨は全く止む気配がない。雨が降るとわかっていたなら傘くらい持ってきたのにと、公園の駐輪スペースで雨宿りをしているクロエは空を見上げていた。
「…どうしよう」
どうにか傘を手に入れるにしても、ここから一番近い雑貨屋までは少し距離がある。走って向かったところでびしょびしょになるのが目に見えているのだから、それなら雨がや止むでここでやり過ごした方がいいと結論づけたのだが、悲しいことに一向に止む気配がない。むしろ雨脚は強くなる一方だ。この後どうすればいいのかわからず困り果てたクロエは、泣きそうな顔をしながら手元のスマートフォンに目を落とした。
「……」
KnockOutと表示された画面は、タップ一つでもうすぐに電話がかけられる状態になっている。だがクロエが電話をかけられないのには訳があった。
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