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    nekononora

    94とFGO。書くのも読むのも雑食でいきます。逆、リバ、R、G、などなど書きたいように書き散らかします。
    設定がわからーん!

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    nekononora

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    パー←バソのパーバソ。前回の続き。オメガバース
    おや? パーさんの様子が?
    自分への矢印は鈍いバソさん。

    #パーバソ

    海は空の異変に気が付かない「ハハハハハハハ!!!!」

     真横で聞くこの声量にももう慣れたなぁ、あ、うそ、慣れてない。耳、きーんてなる。音量絞ってとか不敬になるかなぁやっぱり耳栓かなぁこれも不敬かなぁなんて思いながら、バーソロミューはモグモグとマッシュポテトを食べる。
     そこに食堂にパーシヴァルを含めた数人の円卓が入ってくるのが見え、目線だけで挨拶を送る。
     パーシヴァルは承知した、というように少しだけ頭を前に傾け頷いた。
     なんというかその顔にはまだ心配という文字が張り付いて見える。これは時間を作って説得する必要があるかもしれない。うーん、いつか作れるかなぁ。今は無理かぁと、横に座るファラオを見やる。
     そこに、
    「同席するぞ」
     と、バーソロミューの前に座ったのはカルナだ。
    「カルナか。赦す。余と同じ卓を囲む事を赦そう。お前もファラオなるものなれば」
     因みにカルナはファラオではない。ないのだが、太陽なりし者はファラオ以外にはあり得ないというファラオの言だ。
     カルナは言われた時、なるほどファラオ、と肯定も否定もせず、むしろ某アニメの少女のように、「え? 私がファラオ?」みたいなノリだったので訂正されていない。
     そんなカルナと一緒に食堂に来たドゥリーヨダナとアシュヴァッターマンは離れた位置に座っていた。
     はじめてバーソロミューと共にいるファラオとエンカウントした時は、主にドゥリーヨダナと一触即発な空気で気を揉んだ。
     だがあれ以来、ドゥリーヨダナが近づいてくる事はない。
     カルナに何か頼まれたのか、それともトラブルメーカーの気質を持ちながら人情化で王としての責任感も持つ彼は、空気を読んでないふりをして空気を読んだのかもしれない。
     なにせこのファラオ、一歩も引かない。引くという単語が辞書に載ってない。
     もし引いたとしてもそれは引いたのではなく、外野が手を変え品を変えて横に一歩、動いていただけただけの事。
     なんでこうなったと一種の現実逃避のように食事を進めていれば、カルナの突き刺さるような視線を感じる。
     首筋に。
     真の英雄は目で殺すとか発言する彼に死因である首を見られるのはなんだか落ち着かないものがあるなぁなんて思いつつ、何を見たいかなんて分かっていたので、できるだけ自然にみえる動作でハイネックの襟を下げた。
     そこにまだ首輪はある。
     すぐに手を離したのだが、オジマンディアスは見逃してくれなかった。
     食堂、というかカルデア全体に響き渡るような声量で述べてくれる。
    「うむ! まだであるが、それは勇者の優しさであり気遣いの過程で結果はかわらん! 勇者の番よ!! 勇者に直接! そう直接!! 頼まれたとあってはな! 余の隣にあり余の庇護下に入る事を赦そう!!」
     肺活量どうなってるんだろう。それとも声に魔術的何かをのせているのか。
    『庇護下』の単語にガタリとパーシヴァルが剣呑な雰囲気で立ち上がるのをガウェインがわりと力技で止めるのを視界の端に見つつ、
    「畏れ多すぎます」
     と笑ってみせた。


    ◆◆◆


     なんでこんな面倒な事になった。
     見合い相手のアルファが古代ペルシャの大英雄、アーラシュだったから。
     説明終わり。
     ってなんでだよ!!
     脳内で一人ツッコミしながら、見合いの日の事を思いだす。

     ダ・ヴィンチがマスターの国の流儀にのっとってとかなんとか言って用意したシミュレーター。
     日本庭園が広がる日本家屋。
     カポンなんてししおどしの音が聞こえる和室で対面したアルファは、古代ペルシャの大英雄、アーラシュだった。
     ちょっと予想外の人物だった。
     バーソロミューが望んだのは頸を噛むだけ噛んだら放置してくれるアルファだ。
     アーラシュは気さくで親しみやすく面倒見の良い兄貴肌の頼り甲斐のある人物という、欠点らしい欠点が見つからないサーヴァントだ。
     だからこそ、頼まれれば噛むかもしれないが、“放置”はしないだろう、という見解だ。
     どういう事だとバーソロミューは仲人面で綺麗に正座しているダ・ヴィンチを見やる。
     ダ・ヴィンチはずずっと緑茶をすすった後、「じゃ、後は若い人に任せて」と席を立つ。
    「ハハハ、緊張するからいてくれないか? ダ・ヴィンチ嬢」
     逃すかと少女の行手を阻もうとして、アーラシュに声をかけられる。
    「バーソロミュー、一度話して見たかったんだが……」
     正座は足が痺れるな、と足を崩して大英雄がニッと笑う。

    「円卓第二席パーシヴァルって、かっこいいよな」

    「!? あ、貴方もそう思うかい!!!?」

     バーソロミューはアーラシュの前の席に座る。
     バーソロミューはパーシヴァルの素晴らしさを語る機会に飢えていた。
     カルナは聞いてはくれるが、反応が微笑ましいものを見るようなもので、正直、ちょっと物足りなかった。
     海賊連中はちゃちゃを入れるからよろしくない。
     ならばと小出しにマスターや色んなサーヴァントに語って発散していたが、それができたのもパーシヴァルにふられる前までだ。
     ふられてからは友の座に座って虎視眈々と機会をうかがっていた為に、彼の素晴らしさを声高らかに語れなかった。
     それが、相手から。
     しかもペルシャの大英雄から。
     そうなるともうバーソロミューは止まらなかった。
     ドバイでの出来事を事細かに話し、カルデアでのやり取りも説明し、ふられた時もそりゃもういかにこちらを気遣いつつキッパリとふってくれたかを語った。
     友の座におさまってからも、パーシヴァルのかっこよさは鰻登りで、それでいていかに可愛いかを伝える。
     時間を忘れる程に。
     本当に時間を忘れていた程に。
     気がつけば早朝の時間となっていた。
     正直、語りたりない。またまだ引き出しはあるのだ。だが流石に徹夜はと名残惜しそうにアーラシュを見やれば、ニカッと笑って「やっぱりパーシヴァルはカッコいいな。武勇伝に事欠かない。また聞かせてくれるか?」と言ってくれた。
     バーソロミューは「もちろんだとも!」と胸を叩き、「次は是非私の船で。大歓迎するよ」と誘う。
     これから早朝の周回があるというアーラシュと別れ、シミュレーターを後にした。

     いやぁパーシヴァル語りは健康にいいなぁ。きっと疲労回復、滋養強壮、いろんなモノに効くぞぉ。
     と、ニコニコ廊下を歩いていれば、部屋の前に彼がいた。
     え? 本物。朝からラッキー。
     と、軽く身だしなみを整えて歩きだせば、こちらに気がついたパーシヴァルが駆け寄ってくる。
    「バーソロミューッ!」
    「パーシヴァルじゃないか。どうしたんだいこんな朝早く。何か海賊の手を借りたい事でも?」
     何やら焦った様子に笑顔で返せば、「あの」と、パーシヴァルの勢いが急激に萎む。何やらしゅんと垂れ下がる耳が見えそうだ。
    「パーシヴァル?」
    「……み」
    「み?」
    「見合いは、どうなったのですか?」
    「………あぁ!」
     しまった。忘れていた。パーシヴァル語りに夢中だった。
    「朝方まで、その方と……?」
    「気の良い御仁でつい話し込んでしまってね、」
     あくまで友達。君の事を話していたなんてボロは出さない。
     しかし楽しかった。噛んで放置がいいと思ったが、定期的にパーシヴァル語りができるというのなら、
    「彼となら番になってもいいと思えたよ」
    「っ!! バーソロミューっ、私は、」
     パーシヴァルが何か言う前に、二人の間に小さな影が三頭、割り込む。
     それは蒼い身体に金色の兜を被ったような獅子の子で、スフィンクスアウラードという名だったか? と思いだす。
     この子達の飼い主はと周囲を探る前に、

    「ハハハハハハハ!!」

     と唯一無二の鼓膜を震わす笑い声が聞こえる。
     すぐ横で。
    「良い! 赦す!! 勇者の番になるまでオメガの貴様に我が庇護をくれてやろう!!」
    「……」
     えーとと困惑する表情を浮かべながらも、なんとなく状況を察しられた自分がいっそ恨めしい。
     オジマンディアスはアーラシュを勇者と呼び、一目置いている。普段なら神殿から出ない状況でも、アラーシュが声をかけたから乗り出したりするほどだ。
     そのアーラシュが何かをオジマンディアスに言うか頼んだのだろう。
     番に迎える人がいるのだが、オメガは狙われやすいだとか心配だとか気にかけてくれないかとか。
    「疾く! 我が神殿に居を移すがよい!!」
     え。待って。オジマンディアスが嫌というわけではなく、そんな24時間気が休まらそうな事、全力でお断りしたい。
     どうするか困っていると、パーシヴァルが腕を掴んで引き寄せ、彼の背に隠してくれる。
     やだカッコ良い。
    「お待ちくださいファラオよ。彼は確かにオメガですが、まだ誰の番になるか決まってはおらず、また貴方の庇護が必要なほど弱くもない」
    「ほぅ。では貴様がその者の番になると? 友であるのに? 友と望んだのは貴様だというのに? 貴様と勇者の番の恋物語ははじまりから終わりまで語られているぞ?」
    「それはっ!」
     パーシヴァルの旗色が悪いな、助けに入るかと思っていれば、「朝から乱痴気騒ぎか?」と聞き慣れた声が。
     カルナがドゥリーヨダナとアシュヴァッターマンと共に近づいてきていた。
     あ、待って。なんかドゥリーヨダナとオジマンディアスって相性悪そうと止める間もなく、一言二言話しただけで一触即発の雰囲気になった。アシュヴァッターマンもなんだかやる気だ。
     しかもドゥリーヨダナが、オメガなら貢物として献上されてやってもいいぞ、囲うならカルナの部屋でもいいだろうなんて言うものだから、場はさらに混乱した。
     友思いのパーシヴァルが貢物、献上、囲うなんて単語に我慢できるわけがなく、ドゥリーヨダナにも警戒を強めた。
     ファラオ、インド、円卓第二席が取り合っているようにも見える状況に、居た堪れなくなったのはバーソロミューだ。
     なんだなんだと集まってきた見物客の目にこれ以上、パーシヴァルを晒したくない。
     そんな中、周回から帰ってきたアーラシュを見物人の後ろに見つけ、救いの船とばかりに駆け寄って腕を絡めた。

    「これから! 番関係を前提に仲を深めていこうという大事な時期なんだ! 外野は見守っておいてくれたまえよ!!」
     
     場を納める為、ファラオほどではないがそれなりの肺活量とよく通る声で宣言すれば、オジマンディアスは満足そうに笑い、カルナは「愚かな」とつぶやき、パーシヴァルはなぜか苦悩の表情を浮かべた。
     

    ◆◆◆


     第三回パーシヴァルを語る会

     アーラシュを自室に招いたバーソロミューは、今回も朗々とパーシヴァルのかっこよさを語る。
    「で、これがその時当たったパーシヴァルが作ったボタンのゴムだ。使えずにずっと飾ってあるんだ」
     子供達とパーシヴァルがくるみボタンのゴムを一緒に作っていた場面に出くわし、バーソロミューも誘われて一緒に作った。
     じゃあみんなで交換! と紙袋に入れてシャッフルして、直後に子供達がマスターに呼ばれて解散となった。
     開けた紙袋にはパーシヴァルが作ったボタンが入っており、天に腕を突き上げたのを覚えている。
     因みにバーソロミューが作った物は、後日、子供達の髪で揺れているのを見た。
     子供達にも好かれるパーシヴァル。
     パーシヴァルがいかにスマートにカッコよく、そして最近、オジマンディアスから守ろうとしてくれた出来事を語り、ハッと気がつく。
    「ひよっとしてなのだが……」
    「なんだい?」
    「彼があれほど私を守ろうとするのに少し疑問をもっていたんだ。ひょっとして……」
    「うん」
    「円卓の時代はオメガに価値があったのでは? 所有しているだけで箔がつくとかなんとかで、オメガを巡る争いを見てきた。悲しくも虚しい諍いを起こさぬように孤軍奮闘しているとか! さすがパーシヴァル!! どこまでもカッコいい!!」
    「うーん」
     アーラシュが苦笑し、その千里眼の瞳をバーソロミューに向けるが、友のオメガに心を痛めるも奮闘するパーシヴァルのストーリーを脳内で構築しているバーソロミューの目に入ってこない。
    「放置してたら諍い側だったんだがなぁ」
     とアラーシュが呟いたのも。
    「決まったぞ! アーラシュ!! 彼の心労を減らす為にもサクッと噛んでくれ! 番がいるとなれば彼の心労も少しは減る!!」
    「そこは箔がつくならと迫るのではなく?」
    「まさか! 箔がつくからオメガを侍らすという価値観は、オメガを価値ある宝、意思を持つ物とみる。宝は王へ献上されるものだ。友だからと心を痛める彼を見るなんて——あ、ちょっといいな」
     ニコニコ笑っていて欲しいが、それはそれとして苦悩の表情も特殊演出っぽくて写真に収めたくなる。
     アーラシュはバーソロミューがいれた紅茶を飲んでから、「部下が侍らしても価値があったら?」と問うた。
    「うん?」
    「貴重で幸福を呼ぶとされるオメガを番にもつ部下。それを御す王は箔がつくんじゃないかい?」
    「…………なるほど」
     バーソロミューはストンと落ち着き、思考を巡らす。
     そしてやがて、うん、と言った。
    「確かめよう」
    「どうやってだい?」
    「本人に直接」
    「あ〜」
    「もちろん、『箔がつくなら頸をひと噛みどうだい?』なんて聞かないさ」
     バーソロミューはドアに向かい歩きだし、アーラシュも後をついてくる。
    「『最近、私を気にかけてくれているようだが、ひょっとして君の時代、オメガは希少で争奪がおこり守るべきものだったのかな?』と遠回しに聞いて、その後、話を誘導してみせるさ!」
     任せてくれ! とウィンクすると、アーラシュは、あ〜〜と唸り、「うーんまぁいいか」とその瞳をバーソロミューに向けながら言った。
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