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    nekononora

    94とFGO。書くのも読むのも雑食でいきます。逆、リバ、R、G、などなど書きたいように書き散らかします。
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    nekononora

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    悪役令嬢パーバソ

    嘘進捗です。

    #パーバソ

     会社自体はホワイト寄りだが、直属の上司と部署の奴等がブラックすぎた会社を辞めてやった。
     コネ入社の上司に右に習えの奴等ばかりで、中卒の私に雑用(と言う名のめんどくさい仕事)を押し付けるのが当然な空気となっていた。
     もっと早目に辞めてもよかった。だが中卒の私を拾ってくれた会社に恩を感じていたのと、なんだかんだと生活できていたので三十六まで、ずるずると続けてしまった。
     直属の上司には辞表を破り捨てられたが、仲の良い人事の後輩に一ヶ月前に受け取ってもらい、溜まりに溜まった有給も受理してもらって、晴れて今日、会社を辞めた。
     明日からどうするかなぁとりあえずハローワークか、いっそ旅に出るかと足取り軽く夜道を歩いていれば、急に足元が光った。
     なんだと驚いて下を見れば、それはアニメで見たような魔法陣で、うん? と思っている間に、下から上がってきた魔法陣に身体が飲み込まれていく。
     逃げなくてはとか考える前に、頭の先まで飲み込まれ、眩しくて目を閉じる。
     すぐに目を開ければ、野外にいたはずが、机や椅子がない、どこかのパーティ会場のような場所にいた。
     バーソロミューの近くには高校か中学かの制服を着た男女数名がおり、バーソロミュー達を取り囲むようにファンタジー世界の神官といえばというような服を着た者達がいた。
     バーソロミューを見て、いやバーソロミュー達を見て「おおぉ! 成功だ!」と喜んでいる。
     オタク文化に造詣が深いバーソロミューは、これはひょっとしてと、周囲を胸の高鳴りと、同時に冷や汗をかく。
     男の子の一人が、「異世界転生?」と呟き、その友達らしき女の子が「転移でしょ」と訂正する。
     どうやら若者達の中にも詳しい者はいるらしい。
     これは勇者召喚や聖女召喚と呼ばれるものだろうか。
     となると、もはや王道の流れの一つである、明らかなハズレ枠であろうオッサンや無能スキルしか持たない誰かが追放されたりして、その後、チートに目覚めたりスローライフを送ったりして、追放した方は没落したり窮地におちいったりするのだろうか。
     先ほど異世界のやりとりをしていた男の子と女の子が、すすすすとバーソロミューの近くに寄る。
     彼等はもし追放されるとしたらオッサン枠であるバーソロミューの可能性が高いと踏んだのだろう。つまりバーソロミューが王道ストーリーの主人公ならば、ついていきたいと。
     推定神官長(一番、衣装に装飾があるから)の初老の男性が前に進み出て、にこやかな笑みを浮かべる。
    「皆様、いきなり知らぬ地に招かれ驚かれたでしょう。申し訳ありません。事前にお知らせできればいいのですが、それはできず、こうして直接のお招きして事情を説明させていただいているのです」
     困惑した表情で続きを待てば、神官長は「皆様にお願いがあります」と腕を広げ、歳をとってもモテそうな良い顔と衰えを感じさせない渋みのある良い声で告げた。

    「皆様には“悪役令嬢”になっていただきたいのです!!」

     なんて?

     バーソロミューと、先ほどの男の子と女の子の声が見事にかぶり、聞き返していた。



    「こちらの世界では悪役令嬢が神事というか祭りになっておりましてな」
     にこやかに話してくれるのは先ほどの神官長だ。
     立ち話は疲れるだろうと、パーティ会場ほどの大きさの場所から会議室のような大きさの部屋に移動した。
     ソファーがコの字に並べられ、ソファーがない場所に神官長が立って説明する。
    「というのも三百年前の建国時に悪役令嬢が召喚され、当時の王子と聖女が悪役令嬢を退ける事で仲を深めたという言い伝えがありましてな。今では実は召喚されたのは聖女の方だっただの、悪役令嬢は仲の悪かった王子と聖女の仲を取り持つ為に悪役をかってでただの、色々派生作品があります」
     派生作品言い切ったよこの神官長。
    「貴方方の世界での桃から生まれた男の子だったり、ガラスの靴の灰かぶり姫みたいなものですな。慣れしたまれ、その後の人々が派生する作品を楽しむような」
     確かに。あの作品も大元は何百年も前で、様々な作家がモチーフにした作品を世にだしているか。
    「それでここからが本題です。そんな悪役令嬢が慣れ親しまれたこの国では、王太子達が学園に通う最後の半年に“悪役令嬢”を召喚し、“悪役令嬢”として学園に通ってもらい、いい感じで王太子達とその婚約者の障害となりつつ、最後倒されるという劇をおこないます。それは大掛かりなもので、半年にわたってリアルタイムで進行します。あ、でも安心してください。プラベートは大切ですので、二十四時間ずっとというわけではなく、演じるのは一日の中でせいぜい四時間程度。休息日もあります。登場人物も見物人となる学園の生徒、先生、町の者も全員が劇である知ってます。とはいえ、信じられない、難しいという者はいるでしょう。なので辞退できます」
    「辞退すればどうなるのですか?」
     聞いたのは女の子だった。
    「この国を観光してくださってもいいですし、帰国を望まれるのならばお返しします。元いた場所の元いた時間に」
    「帰れるの!?」
     男の子が驚く。
     帰れないと思っていたようだ。
    「えぇ。一週間ほど時間はいただきますが、元いた場所に」
     どうする? どうするよ? と囁き合う声が聞こえる。
    「私からも質問いいですか?」
     とバーソロミューは手を挙げた。
    「もちろんです」
    「悪役“令嬢”なんですよね? 男の場合どうなるんです? 悪役“令息”になり、意地悪する相手はまさか王太子に?」
    「いいえ。名称としては悪役令嬢のままで、意地悪をする対象も変わらずです。我が国では同性でも異性でも結婚できますから」
     なるほど。
     と、バーソロミューは手を下ろし、ニパッと笑顔で答えをだした。

    「辞退して観光します」

     思えばこの時、悪役令嬢を選んでいたらどうなっていたのか。後になって考える時がある。
     そうすれば護衛に銀髪の騎士をつけられる事なく、何事もなく国に帰っていたかもしれない。なんて考え、いや“悪役令嬢”だったとしてもあの騎士は逃しはしないかと諦観するのだった。
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