しかたない。ねこはかわいい。「は?」
リオセスリは、アビスの魔術師の足元を見て、目を逸らし、そして二度見した。
「……猫、だ」
猫がいた。それも、北地ショートヘアが。
『そう、ヌヴィレットが』
フリーナの声が蘇る。まさか。いやまさか。そんなことはあるはずがない。とは言い切れないのがこの状況。
「にゃ……」
ずんぐり、もっちり、ふわふわ。銀色の毛玉から発せられたのは、少々大きめの図体からは考えられないような、珠を転がすような可愛らしい鳴き声だった。
「カワッ………………!!!!!」
思わず漏れた声を抑える。距離があったためか、アビスの魔術師には聞こえなかったのが不幸中の幸いである。動悸が激しい。鼓動がうるさい。どっちも同じ意味だ。わなわなと震えながら、岩にもたれかかる。
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