きっと多分はっぴーえんど(仮) じわじわと、額や背中が汗ばむような暑い夜、晋作は洗面台の前に立っていた。
風呂から上がったばかりで髪はぼとぼと、服は着たけれど水滴を拭き取りきれずに肌に布が引っ付いて気持ちが悪い。
しかし何より晋作は、今の自身の気分の方が気持ち悪かった。
――最近、先生が素っ気ない。
先生…晋作の唯一無二の師であり恋人でもある吉田松陰が、このところ晋作に対してやけによそよそしいのである。
普段の晋作であれば「今の先生はきっと忙しいのだろう」とか「後で差し入れでも持って行こう」などそれなりに前向きに考えることも出来たのだが、今の晋作にはそれが出来なかった。
正面の鏡を見ながら(顔白いな…)と他人事のように思う。それはここ数日の不調で顔が青白がったのだが、元々肌の白い晋作にはあまり違いがわからなかった。
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