聞いてませんっ!! 僕は今、紆余曲折を乗り越えカルデアのサーヴァント達の助けもあり尊敬する師である松蔭先生とお付き合いをしている。買い物に、とか昼食に付き合ってるとかそんなベタな勘違いじゃなく、正真正銘の恋人になったのだ。
もちろん僕は喜んだ。赤飯を炊き、三味線を弾き、歌い踊って喜んだ。正直その喜びの表現をオジマンディアス王の部屋でしたのは流石の僕も申し訳なく思ったので後日菓子折りを持って行ったしそのままお茶して帰った。寛大だったな王様。
まあ、それは終わった話だからいいのだ。僕が今悩んでいるのはそこじゃない。
なんだか、思っていたのと違うのだ。
付き合う前から先生の部屋に行ったり先生が僕の部屋に来たり、シミュレーターに行ってデートのような事もしていた。なんなら岡田くんに
「おんしらまだ付き合うちょらんかったんか…」
なんて信じられないものを見る目で見られたんだが、僕は君に何度も「先生と付き合うにはどうしたらいいか」相談してたと思うんだが。
まぁつまり、あまり変わらないと思っていた訳だ。
元々恋人のような事を(一方的に)していたわけだし、そもそも相手は先生だし、これ以上恋人らしい事といえば先生がしなさそうなことばっかりだし。
だから、あんな顔をする先生なんて知らなくて、あんなに余裕のない先生なんて知らなくて、あんなに、あんなに僕の事を呼ぶ先生なんて知らなくて。
抱きしめられた体温も、すぐそばに聞こえた息遣いも、焼かれるような視線も忘れられなくて。
シーツを頭まで被って、きっと真っ赤になっているであろう自分の顔をもにもにと手で覆う。ついさっきまで隣に居た先生の匂いがしてさらに顔が熱くなる。
「先生は、こういうことしないと思ってた……」
「しますよ。僕も男ですからね」
ぽつりと呟いた独り言に返ってきた返事に、反射的に起き上がる。いつの間に戻ってきていたのか、先生は手に持っている布やお水をサイドテーブルに置く。
「無理をさせましたね。いくら君が煽ってこようとも、次はきちんと抑制します」
煽ったつもりは無い。そう訴えようと先生を見るが、先生はそのまま言葉を続けた。
「御付き合いを始める前からべたべたと、僕は理性を試されているのかと思いましたよ」
べたべたとした覚えはある。先生と付き合えるだなんて思って無かったし、なんならそんな欲があるだなんて全然思ってもみなかった。
先生が、僕にそんな欲を向けていたなんて知らない。我慢してたなんて知らない。
温かくした布で僕の髪や頬を拭う先生に向かって叫んでやる。
「だってそんなの、」